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2023ー2024年の予算案が5月29日の期限を前に、国会を通過するかが焦点となっていたが、24日、徹夜の議論の後の早朝、採択がとられ、賛成64、反対55で可決となった。もし否決になれば、解散総選挙になるところであったが、少なくとも次の予算審議まで、現政権は存続が可能になったということである。
超正統派補助金問題
この予算案では、特にユダヤ教政党が、超正統派市民やユダヤ教神学校への支援金を大きく増額することを要求し、これが受け入れられない場合は政権を離脱すると強硬姿勢に出ていたことが問題となっていた。
これには、野党は言うまでもなく、与党リクード内部からも反発が出た。さらには、宗教シオニスト党、極右政党からもそれぞれの要求が出され、受け入れらない場合は、連立を離脱すると言い出したことから、波乱続きであった強硬右派連立政権が、解散に追い込まれるのではないかとも言われていた。
しかし、ネタニヤフ首相が、粘り強く各党との交渉を行い、結果、予算案が無事、国会を通過したことで、現政権は、少なくとも1年半は存続が可能になったということである。
しかし、Times of Israelによると、特別出資として計上される137億シェケルのうち、37億シェケルは、兵役につかないイシバ(ユダヤ教神学校)奨学金になる。12億シェケルは、いわゆる普通の義務教育を実施していないユダヤ教児童教育機関に回されるという。
スモトリッツ財務相(宗教シオニスト党)は、これを奨励しているだけでなく、予算が余剰に出た場合は、それも超正統派支援に回す動きに出ているとのことである。
これで、超正統派たちは、兵役が続けて免除なるだけでなく、数十億にのぼる補助金を得ることになる。税金を治める普通の市民が物価高で苦しむ中、税金を収めない超正統派たちが、さらなる補助を受ける形になったということである。
しかし、超正統派たちは、その人口が増加の一途にある。イスラエルが独立したころの超正統派人口は全体の3%であった。しかし今は18%にのぼっている。
加えて超正統派家庭は多産で、一般家庭では少子化が進んでいる。近年生まれてくる新生児ではその25%が超正統派だという。
つまり、労働力にならず、政府の予算に頼る層が、急速に増大しているということである。超正統派にも、そろそろ働いて自立することを学んでもらわなければ、やがて国家を食い尽くしてしまうと懸念されている。
www.timesofisrael.com/knesset-approves-2023-2024-budget-in-all-night-vote-patching-coalition-rift/
www.timesofisrael.com/the-new-state-budget-favors-haredim-and-hurts-them/
この日、国会前では、数百人がこれに反対するデモを行っていた。
*西壁増強予算も
さすが強硬右派政権というか。。超正統派補助を強化するとともに、西壁の考古学や施設整備などの諸費用に、6000万シェケルも計上されることが決まっていた。西壁では、第一、第二神殿時代に遡る考古学の発掘が続けられており、ダビデの町ですすめられているシロアムの池から西壁方面に続く発掘が続けられている。
この他、西壁のエリアとにしエルサレムをつなぐケーブルの建設も行われており、その予算になるとみられる。これについては、景観を壊すとして反対する意見も少なくない。
司法制度改革はどうなった?:反政府デモ20週(5ヶ月)突入
政府は、国会で予算を通過させることに集中し、司法制度改革に関しては、今の所、棚上げ状態にある。しかし、予算問題が解決した今、これからまた動きだすとみられる。
これに反対する市民たちのデモは、ガザとの戦闘が起こっていた時も行われていたが、停戦直後の先週末には、テルアビブだけで、20万人がデモに参加していた。国を二分する深刻なデモは、20週(5ヶ月)休みなく続けられている。
www.i24news.tv/en/news/israel/politics/1684603820-israeli-protests-against-overhaul-into-20th-week