ラピード財務相が、300億シェケルの財政赤字を抱えて厳しい削減予算にとりくむ中、イスラエル銀行総裁のスタンレー・フィッシャー氏が、2012年度のイスラエル経済白書を提出、経済状況についての解説とアドバイスを出した。
1.イスラエル経済は成長している
フィッシャー総裁によると、2012年のイスラエル経済の成長率は3.6%、失業率も過去30年では最低の6.2%と、財政危機にある世界に比べれば、むしろ良好だという。
成長率3.6%のうち、1%は、新しく稼働し始めたタマル天然ガス効果である。
2.赤字の原因は税収の不足ではなく歳出が多すぎることにある
ではなぜイスラエル政府は赤字になるのか。赤字の原因は、税収が少ないのではなく、政府の歳出が予想外に大きいからである。つまり、使いすぎが原因。最大の歳出は、防衛費である。
防衛費については、当然、想定外支出が設定されているが、それを毎年大きく超えているのが問題。昨年はガザとの戦争があり、迎撃ミサイル導入で予想をはるかに超える歳出が発生した。
フィッシャー氏は、「300億シェケルの財政赤字を解決するためには、まずは歳出のカット、特に防衛費の削減が必要だ。」と語った。
<フィッシャー総裁の警告>
1.天然ガスの収入対策を早急に
タマル天然ガスの効果で、すでにシェケルが強くなり始めている。このまま放っておくと、シェケルが強くなりすぎて輸出業に影響が出、景気が後退する。来年度の財政赤字は今の倍近く、6%になる可能性もあると警告。
天然ガスを慎重に使い、浮いてくる支出(海外からの天然ガス購入で支払っていた年間20-30億シェケル)については、早急に海外に投資、プールするシステムを構築し、将来の世代にも収益を残すことを考えるべきだと語った。
2.社会全体の保護が必要
フィッシャー氏はラピード財務相に何度か会い、彼は真剣に取り組んでいると高い評価を示した。その上で、ラピード氏が提唱する「ミドルクラス保護」について、貧困者への保護を忘れてはならないと伝えた。
なお、前回報告したように、ラピード財務相の「ミドルクラス」の認識が現実離れしているとして問題になっている。
*フィッシャー氏は、イスラエル銀行総裁としてたくみに経済を切り盛りしてきた優秀な経済人だが、6月に退任が決まっている。