先月25日に始まった国連総会。日本も尖閣諸島をめぐる問題で注目されたが、今回は、アメリカのオバマ大統領、イランのアフマディネジャド大統領、イスラエルのネタニヤフ首相なども注目の演説を終えた。
1.アメリカ:オバマ大統領
アメリカのオバマ大統領は、ネタニヤフ首相の「イラン攻撃に踏み切る限界線」の設定要求に手を焼き、「アメリカは、あくまでもアメリカ国民の利益になることだけと行う。外からのどんな”ノイズ(ネタニヤフ首相の要求)”にも応じない。」と語り、イスラエルとの関係の冷えを露呈した。
しかし総会演説の中では、イランの核化はなんとしても防ぐべきだとの方針を示し、イスラエルとの基本的な協調路線を語った。
2.イスラエル:ネタニヤフ首相
www.mfa.gov.il/MFA/Government/Speeches+by+Israeli+leaders/2012/PM-Netanyahu-addresses-UN-27-Sep-2012.htm
イスラエルのネタニヤフ首相は、演説の中でイランへの経済制裁が大きな効果をあげていないと指摘。イランの核兵器への道のりを図で解説し、IAEA(国際原子力機関)のデータによれば、イランは核爆弾への第二段階の70%程度にまで至っていると語った。
第二段階とは、爆弾に必要な高濃度のウランを備えた段階のことで、ネタニヤフ首相は、この時点を超えた時が、軍事攻撃に踏み切る赤線にすべきだと提示。もしイランがこの警告を無視して開発を続けるなら、来年春頃、少なくとも夏までにはこの赤線を越えるだろうとの見込みも語った。
ネタニヤフ首相は、この赤線は、軍事行動に踏み切る事を目的として設定するのではなく、むしろ、イランの核開発自制に導くことが目的であると説明した。
これに対し、イランの革命軍総司令官は「イランは強い。イスラエルのいかなる攻撃にも対処できる。」と語った。
3.イラン:アフマディネジャド大統領
アフマディネジャド大統領は、国連本部到着時に「シオニスト国家(イスラエル)はパレスチナに何の根もない。」と豪語していたが、総会演説の内容は、昨年に比べ、意外におとなしめだったとBBC。同大統領は2013年には任期が切れて、大統領を退く見込み。
<イラン国内の様子:経済制裁でイランのリアル最安値を記録>
イランでは、相次ぐ厳しい経済制裁で原油輸出が通常の半分にまで落ち込んでいる。さらに今週、イランの通貨リアルがアメリカドルに対し急に18%も下がり、過去最安値となった。
イランでは、ダムの作りすぎで、世界有数だった塩の湖ウルミエ湖が干上がっている。2年以内湖は消失する見込み。蒸発した塩分で、すでに周辺地域に塩害が広がっているが、完全に干上がれば、からテヘランにいたるほどの広範囲で農業に深刻な塩害になると懸念されている。
Yネットニュースによると、こうした厳しい状況下で、イランはこれまでにシリアのアサド政権に対し、100億ドル(8000億円)の軍事支援を行ったもよう。
<イランでも反政府デモの気配?>
リラの急落をうけて、イランでは労働階級の人々が労働省に、抗議の手紙を提出。水面下で集められた署名の数は10000程になっているという(ハアレツ紙)
4.エジプトのムルシ大統領
ムルシ大統領はシリアのアサド大統領は退くべきとの考えを明らかにし、アサド大統領を支援するイランとは別路線であることを明らかにした。同時にパレスチナ問題を優先的に取り組む方針を明らかにした。
5.パレスチナ自治政府のアッバス議長
昨年国連加盟要請で注目をあびたアッバス議長。総会で国としてのオブザーバーの地位を要請するのではないかといわれていたが、実現しなかった。経済が危機的であるためか、影のうすい演説だった。