10日以内にオミクロン株の津波を予測:ワクチン4回めを論議中 2021.12.23

コロナ閣議後の記者会見Kobi Gideon (GPO)

世界で感染拡大するオミクロン株

世界でオミクロン株が、あっという間に拡大している。アメリカでは、毎日23万人以上がコロナに感染しているが、すでに73%(州によっては90%以上)がオミクロン株に入れ替わっている。中国は人口13億の西安のロックダウンを決めた。日本でも、大阪に続いて、京都でもオミクロン株が発見されたとのことである。

イスラエルでも先週後半から、感染者が急増し始め、保健省データによると、19日に、1日の感染者が1000人を超えた。10月以来の多さである。実行再生算数は、1.22で感染拡大を表す1以上となっている。

しかし、すべてがオミクロン株というわけではない。これまでに確認されたオミクロン感染者は、341人。オミクロンが懸念され、検査待ちは、807人である。

入院は、81人で増える様子はない。このうち、重傷者は51人で、1人オミクロンによる死者が出たと発表されたが、基礎疾患が多数あり、オミクロンが原因かどうかは不明とされた。さらには、のちにデルタ株であったと訂正されている。今のところ、重傷者や死者が増える様子はない。

しかし、政府は、海外の例からすると、今後、10日以内に第5波になる可能性が高く、その際は、“津波”のようになる。重症者も増えてくる可能性があるとして、21日のコロナ閣議の後、様々な対策を発表した。

チャンネル12によると、ベネット首相は、側近たちに「これまで様々な水際対策で時間を稼いできたが、その時が来た。次の波はこれまで以上と思われるが、これまでより短いかもしれない。とにかく、これまでとは違うと思わなければならない。」とその緊張を語ったという。

イスラエルのオミクロン対策

1)未知への挑戦:4回目ワクチンで開始か

ホロビッツ保健相は、21日の専門家会議の推奨を受けて、医療従事者、60歳以上の市民、または、ハイリスクの患者は26日から、4回目のワクチン接種を受けられるようにすると発表した。4回目接種は世界で最初である。しかし、まだ決定ではない。保健省コロナ担当のアシュ博士の決定がまだなのである。

www.timesofisrael.com/health-minister-israelis-over-60-can-get-4th-covid-shot-from-sunday/

オミクロン株が実際にはどれぐらい危険なのかは、まだ確定したわけではない。しかし、もしこれまで以上に危険であった場合、この感染スピードでは、大変な災害になると予想される。万が一に備えてワクチン4回目をするのかどうか。保健省の意見はまだ一致していないようである。

保健省専門家会議のタル・ブロシュ博士は、今ワクチンを進めておかないと、後で大きなツケを払うことになるかもしれない。十分なデータはないが、時間がない。まるで列車のようなもので、乗り遅れたら取り返しがつかない可能性もあると、見通しだけで、決断に時間をかけられないことの難しさを語った。

一方、リーバーマン経済相が、「オミクロンはただの風邪。ワクチンには賛成。経済を止めることは断じて受け入れられない。」と言い、国会で大ブーイングだったそうである。リーバーマン経済相が正しいのかも知れない。しかし、間違っていたという可能性も否定できない。

おそらくは、26日から、4回目接種がスタートするとは思われるが、まだ反転する可能性は残っているようである。

www.timesofisrael.com/israel-scrambles-to-avoid-paralyzing-economy-ahead-of-omicron-tsunami/

2)水際対策強化

政府は、22日より、新たに10カ国を赤信号国に指定すると発表した。その中にはアメリカも含まれている。アメリカとの往来に制限をかけるのはこれが初めてである。その他は、イタリア、ドイツ、ベルギー、ハンガリー、カナダ、モロッコ、ポルトガル、スイス、トルコである。

すでに、イギリス、デンマーク、フランス、スペイン、UAE、アイルランド、ノルウェー、フィンランド、スェーデンは赤信号国になっているので、欧米諸国のほとんどの国との往来ができなくなったということになる。これらの国への渡航を希望するイスラエル人(外国人の往来は停止中)は、政府からの特別許可を取る必要がある。

www.timesofisrael.com/israel-puts-us-on-no-fly-list-for-1st-time-as-daily-virus-cases-top-1000/

これらの国から帰国したイスラエル人は、ワクチンの接種状況に関わらず、PCR陰性が確認できるまで、隔離ホテルに入る。その後は自宅で7日間隔離する。

3)市中の制限強化

モールへの出入りなど、様々な新しい規制が発表された。しかし、ベネット首相は、あくまでもロックダウンはせず、経済を回し続ける意向を表明している。

学校については、グリーンレベルに置かれている町は、通常通りだが、オレンジのところでは、クラスの中で、70%以上がワクチン接種を終えていることを条件に登校を許可するが、70%以下のところはオンラインとした。

www.timesofisrael.com/full-text-new-covid-rules-at-schools-and-malls-approved-by-ministers/

石のひとりごと:楽観か最悪に備えるか

オミクロン株はいったい何者か。楽観視にかけるか、最悪論でもって、やりすぎでも、予防策を講じるか。

最終的に危険ではなかったという結果になったとしても、それはそれで無駄をしたわけでないと、イスラエル市民は理解するだろう。逆に予防策を講じなかった方が政府の責任として後で追及されることの方が可能性は高い。だから、イスラエルの場合、おそらくは大胆な制限も辞さないのではないかと思う。しかし、イスラエルでも、最後まで論議は続けられるようである。

こうした中、日本を含め多くの国は、イスラエルほど危機管理に直面したことがないので、結果オーライにはなりにくいだろう。国民を前に、首脳たちは、かなりのストレスを抱えていることと思う。ベネット首相だけでなく、また岸田首相の決断が、主によるものであるよう、今は特に主の導きを祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。