1月27日は、国際ホロコースト記念日とされる日である。1945年のこの日、ソ連軍によって、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所が解放されたことを記念する。それから78年が経過した。
恐ろしいことに、世界では、反ユダヤ主義暴力、反イスラエル感情が高まっている。しかし、一方で、アラブ諸国ではホロコースト教育を取り入れるといった新しい動きも出始めている。
国連やヨーロッパ各国では、今年もホロコーストに関係する施設などで、二度とこのようなことが起こさないよう、覚えるための様々なイベントを行った。
1月27日の国際ホロコースト記念日は、どちらかといえば、イスラエル以外の異邦人諸国がこれを覚える日だが、イスラエルでもこの日、外交関係者を集めて、今年80周年を迎えたワルシャワゲットー蜂起に関するシンポジウムが行われた。
イスラエルでは、このほかに、独立記念日の前に、独自に定めているヨム・ハショア(ホロコーストのヘブライ語)があり、独自に主要な記念式典を行っている。(今年は4月17日から18日)
イスラエルに関する、今年の国際ホロコースト記念日での主なイベントは以下の通り。
1)ヘルツォグ大統領がEUの記念式典に出席
26日、ヘルツォグ大統領は、EU議会を訪問。記念イベントで演説した。
ここでは、ヤド・ヴァシェムにも展示されている有名な「難民(フェリックス・ヌセンバーム氏)」の絵が掲げられることになっている。
この絵は、ナチスから追い出されようとするのに、ユダヤ人を受け入れる国はなく、行くところがないという状況を表している絵である。ヌセンバウム氏は、妻と共にアウシュビッツに送られ、二人はそこで殺された。
これに先立ち、ヘルツォグ大統領は、ブリュッセルのシナゴーグを訪問した。
2)国連に犠牲者480万人の名前展示
今年、イスラエル国立ホロコースト記念館、ヤド・ヴァシェムは、ニューヨークの国連本部に、ホロコーストで命を奪われた480万人の名前、生年月日、出生地と死亡した場所などを記録したページを展示する。
除幕式には、グテーレス国連総長と、ヤド・ヴァシェム館長のダニー・ダヤン氏が出席する。展示は2月17日まで。その後は、エルサレムに持ち帰って、ヤド・ヴァシェムに展示する。
www.timesofisrael.com/un-chief-exhibit-of-book-of-names-of-nazi-victims-is-call-to-fight-cruelty/
*600万人それぞれの名前とその人生を覚える使命について(ヤド・ヴァシェム)
ホロコーストで死亡したユダヤ人は600万人と言われているが、ヤド・ヴァシェムでは、家族友人知人などからあらゆる証言を集め、死亡した600万人がだれであって、どんな人生を送っていた人かを回復させる作業を1950年から継続して行っている。
その記録は、ヤド・ヴァシェムの名前のホールのファイルに記録されている。世界からここにやってくるユダヤ人たちが、なんでも知っている情報を提出し、それを分析する中で、死んでしまった人々の人生がよみがえってくるのである。戦後離れてしまっていた兄弟が再会するケースもあった。
ユダヤ教では、人は神が創造したのであり、それぞれの人にそれぞれの世界があると考えている。途中で殺されてしまい、したがって名前を覚えてくれる子孫もいなくなり、だれも知らないまま消え去った、その人の世界を回復することを第一の使命としているのが、ヤド・ヴァシェムなのである。
ヤド・ヴァシェムとは、聖書のイザヤ書56:5「わたしの家、わたしの城壁のうちで、息子、娘たちにもまさる分け前と名を与え、絶えることのない永遠の名を与える」の中に出てくるヘブライ語である。
今回展示されるのは、これまでに明らかになったのが480万人分の名前とその人生、またまだ発見されていない120万人分のページである。書かれている時は、小さく、ぎっしりと書いてあるのだが、さすがに600万人分ともなると、全部あわせるて8メートルにもなっている。
まだ120万人が不明であるままなので、この作業が続けられているのだが、サバイバーが高齢になり死亡していく中、捜索は難しくなりつつある。
3)ベルリンに16の遺品展示
ドイツ連邦議会では、今年、ドイツの州それぞれに関係するユダヤ人犠牲者の16の遺品を展示する。遺品は、ヤド・ヴァシェムからダヤン館長によって運び込まれた。24日に、連邦議長とともに除幕式が行われた。
www.yadvashem.org/blog/16-artifacts.html
4)チェコのテレジン収容所に、政治家、外交官ら集まる
テレジンにあったゲットーは、ナチスの宣伝用として高齢者や子供たちが多く収容されていた。最大14万人が収容され、餓死や病死した人が3万3000人以上で、それ以外のほとんどは、アウシュビッツなどへ移送され、殺された。
テレジンゲットーは、今もその姿を残している。ここに政治家や、外交官、ユダヤ人など120人が集まり、24日、追悼式典が行われた。
5)日本のホロコースト記念館に、在日イスラエル大使ら外交官たち集まる
在日イスラエル大使館のFBの投稿によると、ホロコースト記念日に、在日イスラエル大使のコーヘン氏はじめ、リトアニア、アメリカ、ポーランド、ドイツのそれぞれの大使と広島県知事とともに、広島県福山市のホロコースト記念館を訪問した。
www3.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/20230127/4000021097.html
またホロコースト教育資料館(石岡史子氏代表)は、ナチス関係者らが、ユダヤ人1100万人の虐殺の具体策を論じたワンゼー会議に関するセミナーをオンラインで開催。230名以上が参加した。