1月27日国際ホロコースト記念日:国連に犠牲者480万人氏名展示 2023.1.27

Gilad Erdan, Permanent Representative of Israel to the United Nations, Antonio Guterres, United Nations Secretary General, and Dani Dayan, Chairman of Yad Vashem, browse the Yad Vashem Book of Names of Holocaust Victims Exhibit, Thursday, Jan. 26, 2023, at United Nations headquarters. (AP Photo/John Minchillo)

1月27日は、国際ホロコースト記念日とされる日である。1945年のこの日、ソ連軍によって、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所が解放されたことを記念する。それから78年が経過した。

恐ろしいことに、世界では、反ユダヤ主義暴力、反イスラエル感情が高まっている。しかし、一方で、アラブ諸国ではホロコースト教育を取り入れるといった新しい動きも出始めている。

国連やヨーロッパ各国では、今年もホロコーストに関係する施設などで、二度とこのようなことが起こさないよう、覚えるための様々なイベントを行った。

1月27日の国際ホロコースト記念日は、どちらかといえば、イスラエル以外の異邦人諸国がこれを覚える日だが、イスラエルでもこの日、外交関係者を集めて、今年80周年を迎えたワルシャワゲットー蜂起に関するシンポジウムが行われた。

イスラエルでは、このほかに、独立記念日の前に、独自に定めているヨム・ハショア(ホロコーストのヘブライ語)があり、独自に主要な記念式典を行っている。(今年は4月17日から18日)

イスラエルに関する、今年の国際ホロコースト記念日での主なイベントは以下の通り。

1)ヘルツォグ大統領がEUの記念式典に出席

GPO

26日、ヘルツォグ大統領は、EU議会を訪問。記念イベントで演説した。

ここでは、ヤド・ヴァシェムにも展示されている有名な「難民(フェリックス・ヌセンバーム氏)」の絵が掲げられることになっている。

この絵は、ナチスから追い出されようとするのに、ユダヤ人を受け入れる国はなく、行くところがないという状況を表している絵である。ヌセンバウム氏は、妻と共にアウシュビッツに送られ、二人はそこで殺された。

www.timesofisrael.com/herzog-says-israel-committed-to-equality-as-eu-parliament-leader-sounds-warning/

これに先立ち、ヘルツォグ大統領は、ブリュッセルのシナゴーグを訪問した。

2)国連に犠牲者480万人の名前展示

今年、イスラエル国立ホロコースト記念館、ヤド・ヴァシェムは、ニューヨークの国連本部に、ホロコーストで命を奪われた480万人の名前、生年月日、出生地と死亡した場所などを記録したページを展示する。

除幕式には、グテーレス国連総長と、ヤド・ヴァシェム館長のダニー・ダヤン氏が出席する。展示は2月17日まで。その後は、エルサレムに持ち帰って、ヤド・ヴァシェムに展示する。

www.timesofisrael.com/un-chief-exhibit-of-book-of-names-of-nazi-victims-is-call-to-fight-cruelty/

*600万人それぞれの名前とその人生を覚える使命について(ヤド・ヴァシェム)

ホロコーストで死亡したユダヤ人は600万人と言われているが、ヤド・ヴァシェムでは、家族友人知人などからあらゆる証言を集め、死亡した600万人がだれであって、どんな人生を送っていた人かを回復させる作業を1950年から継続して行っている。

その記録は、ヤド・ヴァシェムの名前のホールのファイルに記録されている。世界からここにやってくるユダヤ人たちが、なんでも知っている情報を提出し、それを分析する中で、死んでしまった人々の人生がよみがえってくるのである。戦後離れてしまっていた兄弟が再会するケースもあった。

ユダヤ教では、人は神が創造したのであり、それぞれの人にそれぞれの世界があると考えている。途中で殺されてしまい、したがって名前を覚えてくれる子孫もいなくなり、だれも知らないまま消え去った、その人の世界を回復することを第一の使命としているのが、ヤド・ヴァシェムなのである。

ヤド・ヴァシェムとは、聖書のイザヤ書56:5「わたしの家、わたしの城壁のうちで、息子、娘たちにもまさる分け前と名を与え、絶えることのない永遠の名を与える」の中に出てくるヘブライ語である。

今回展示されるのは、これまでに明らかになったのが480万人分の名前とその人生、またまだ発見されていない120万人分のページである。書かれている時は、小さく、ぎっしりと書いてあるのだが、さすがに600万人分ともなると、全部あわせるて8メートルにもなっている。

まだ120万人が不明であるままなので、この作業が続けられているのだが、サバイバーが高齢になり死亡していく中、捜索は難しくなりつつある。

3)ベルリンに16の遺品展示

ドイツ連邦議会では、今年、ドイツの州それぞれに関係するユダヤ人犠牲者の16の遺品を展示する。遺品は、ヤド・ヴァシェムからダヤン館長によって運び込まれた。24日に、連邦議長とともに除幕式が行われた。

www.yadvashem.org/blog/16-artifacts.html

4)チェコのテレジン収容所に、政治家、外交官ら集まる

テレジンにあったゲットーは、ナチスの宣伝用として高齢者や子供たちが多く収容されていた。最大14万人が収容され、餓死や病死した人が3万3000人以上で、それ以外のほとんどは、アウシュビッツなどへ移送され、殺された。

テレジンゲットーは、今もその姿を残している。ここに政治家や、外交官、ユダヤ人など120人が集まり、24日、追悼式典が行われた。

www.timesofisrael.com/at-concentration-camp-once-used-for-nazi-propaganda-european-jews-fight-fake-news/

5)日本のホロコースト記念館に、在日イスラエル大使ら外交官たち集まる

在日イスラエル大使館のFBの投稿によると、ホロコースト記念日に、在日イスラエル大使のコーヘン氏はじめ、リトアニア、アメリカ、ポーランド、ドイツのそれぞれの大使と広島県知事とともに、広島県福山市のホロコースト記念館を訪問した。

www3.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/20230127/4000021097.html

またホロコースト教育資料館(石岡史子氏代表)は、ナチス関係者らが、ユダヤ人1100万人の虐殺の具体策を論じたワンゼー会議に関するセミナーをオンラインで開催。230名以上が参加した。

www.npokokoro.com

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。