先週末、オバマ大統領は、化学兵器を使用しているシリアのアサド政権への軍事攻撃を決意したが、議会の承認を求めると発表した事について。ワシントンでは、来週の議会での採択にむけて、オバマ政権の上院議員たちへの、根回しと説得が行われている。
ケリー国務長官は、「今、シリアを攻撃しなければ、化学兵器使用を容認しないとする国際社会とアメリカの威信が失われ、もっと悪い状況になる。これはシリアの問題だけなく、他のアメリカに敵対する国々(イラン、北朝鮮など)へのメッセージとなる。」と篤く承認を訴えた。
今のところ、上院の外交委員会は、攻撃するなら、確実で素早く60日以内(最大90日まで延長)、”こぎれいに終わり”地上軍の派遣はないということで承認。しかし下院ではまだ反対、またはまだ決めていないとする議員が多く、先行きは不明のままである。
<ダマスカスでは人間の楯>
アメリカの攻撃が近づいたため、親アサド派の市民が、ダマスカスの政府、シリア軍施設周囲に立ち並び、人間の楯になる決意を表明している。女性や子どもたちの姿もみられる。
<G20:サンクトペテルブルグ>
5日、ロシアのサンクトペテルブルグで始まったG20の国際経済会議。オバマ大統領はプーチン大統領はじめ、世界の先進国首脳と顔合わせしている。議長のプーチン大統領は、この会議は本来、経済について話し合われる会議だが、火急なシリア問題も話し合うとした。
参加国は、欧米、オーストラリア、ニュージーランドの他、中東からはサウジアラビア、トルコ、アジアでは中国、韓国、日本、インド、インドネシア、南アメリカからは、ブラジル、アルゼンチン、メキシコなど。世界人口の3分の2を占める国々が集まっている。
現時点では、ロシア、中国を筆頭に、フランス以外のEUを含む多くの国々がオバマ大統領の軍事介入に反対。理由は、攻撃の結果どうなるのか、見通しが全くないからである。逆に、反政府勢力アルカイダの助長、イスラエルを巻き込む戦争や、石油高騰など”副作用”の方が見えているのである。
バチカンのフランシス法王も、軍事介入に反対。世界12億のカトリックと、その他の宗教者に対して、7日土曜に断食してシリア問題の解決を祈るよう呼びかけた。
世界が反対している以上、もしオバマ大統領が軍事介入に踏み切るなら、まさに失敗はありえない状況となってしまった。議会の承認をあえて求めて攻撃を先延ばしにし、G20で国際社会の理解を求めようとしたオバマ大統領。時間をかけた分、逆に自分で自分の首をしめた形になったようである。
<舞台から降りたイギリスは・・・?>
今回、世界の及び腰に拍車がかかったのは、イギリスの議会が軍事介入を承認しなかったことも大きく影響している。
イギリスのキャメロン首相は、G20において、シリアがサリンを使った新たな証拠が出そろい始めているとして、イギリスは舞台から降りたのではなく、必要であれば議会での再決議もあり得るとし、政治的解決にむけてリーダーシップを発揮すると発言している。
<日本の安倍首相は・・・?>
朝日新聞によると、安倍首相は、G20に先立ち、オバマ大統領と会談。シリア問題が北朝鮮問題にも波及する可能性があるとして、オバマ大統領の計画、また国際社会の理解を得ようとしていることに対し、一定の理解を示したと伝えられている。