4回目総選挙への足音:予算で合意できず閣議キャンセル 2020.8.10

ネタニヤフ首相とガンツ氏 出展:Knesset HP

イスラエル国内では、左派が中心の反ネタニヤフ首相デモが続く中、統一政権が、予算案で合意できず、決裂しはじめている。もし8月25日までに、2020年の予算案を決定できない場合、今年11月に4回目の総選挙が行われるという流れである。

イスラエルは今、コロナ危機に加え、北部情勢、南部情勢ともに緊張を増している。4回目総選挙など、ありえない話である。なぜそうなっているのか、総選挙は避けられるのか。状況は以下の通り。

<8/25までに予算決定ない場合は総選挙か>

こうした中、統一政権がたった今直面している問題は、予算である。2020年ももう8月なので、イスラエルの1年はもう終わりかかっているところだが、まだ2020年の予算について、政府内で合意に至っていないのである。

ネタニヤフ首相は、青白党(中道左派)と統一政権への交渉の中で、2020年、2021年と2年にわたる予算を作ることで合意していた。しかし、コロナ危機が発生したことから、予測不能な事態に臨機応変に対応するためとして、この合意を破棄し、とりあえず2020年内の短期予算でいくよう提案したのであった。

この予算案には、カッツ経財相の85億シェケル(2600億円)にのぼる新型コロナ追加経済対策案が含まれている。これは1万人の雇用を実現することを目標とするもので、この中には、貧しい家族を支える7億シェケル(250億円)、高齢者で職を失った人への支援6億シェケル(200億円)が含まれる。

しかし、2020年までの予算の場合、あと4ヶ月ほどで終了してしまう。青白党ガンツ氏は、短期予算の場合、将来の見通しが立たないことから、失業改善にはつながらないとして、これに同意せず、あくまでも2021年分を含む2年ごし計画でと主張した。

このため、ネタニヤフ首相は、9日日曜の閣議をキャンセルした。コロナ対策に待ったなしだとリクードの案に早く合意するよう、促した形である。しかし、閣議をキャンセンルするという事態になったことで、ネタニヤフ首相は、総選挙を望んでいるのではとの予測が広がり、4回目総選挙への足音が現実味を帯びてきた形である。

しかし、現在のイスラエルのGDPはマイナス6%、失業率は21%以上(88万2000人)である。今、膨大な出費を要する総選挙をするべきではないというのが、右派はじめ、世論の考えである。

www.timesofisrael.com/elections-loom-as-gantz-insists-on-2-year-budget-likud-to-present-1-year-plan/

<経済界150人は青白党2年ごし予算を支持>

イスラエルの主要な経済界の指導者150人は、9日、政府と国会に対し、2021年までの2年ごし予算を成立させるようにとの要請を正式に政府の提出した。青白党の主張を支持した形である。

www.timesofisrael.com/150-business-leaders-urge-government-to-pass-2-year-budget/

余談になるが、統一政権には、ユダヤ教政党と、ガンツ氏率いる世俗派青白党が同居する形になっている。しかし、たとえば、ユダヤ教政党が押しだした反同性愛関連の法案を、世俗派の支持を受けている青白党がそのまま受け入れることはできない。

統一政権など、宗教観があまりにも多様でその信仰や信念が、それぞれ強力であるイスラエルではあえりないことといえたかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。