イスラエルは、30日、3回目となるパレスチナ囚人釈放が実施された。釈放された26人は18~28年の刑で服役していた凶悪犯ばかりである。1人はイスラエル人16人を殺害した超・凶悪犯。
26人のうち、18人は西岸地区ラマラへ釈放され、アッバス議長らに迎えられた。3人はガザへ、5人は東エルサレムへと釈放された。つまり、この5人はイスラエル国内へ釈放されたことになる。
30日夜、囚人の釈放に反対するグループが、エルサレムの旧市街にある1人の釈放囚人の自宅付近にまで歩いて、反対デモを行ったという。
<明暗くっきりの囚人釈放>
ネタニヤフ首相とイスラエル国民が、苦渋と断腸の思い、テロ犠牲者家族の涙と怒りを踏みつけて囚人を釈放するのに対し、20年以上もの別離のはてに息子たちを迎えるパレスチナ人家族にとっては、これほどうれしい瞬間はない。
カランディアの難民キャンプ出身のアフマド・シャハダは現在51才。22才の時に殺人の罪で服役してから実に29年ぶりに帰宅する。
アフマドの母親は現在75才。「私は人生を刑務所にいる息子の訪問に明け暮れた。」と語る。高齢となり歩くことができなくなったため、最後の2年間は、息子を訪問できなかったという。この家族にとってアフマドの帰宅がどれほどの喜びかは想像にあまりある。
アッバス議長は、囚人の歓迎式典において、「イスラエルにいるパレスチナ人の囚人が全員釈放されるまで、(和平交渉の)最終合意はありえない。」と語った。
<イスラエルの逆襲・入植地1400件の建設へ>
国民の大反対を押し切っての囚人釈放だが、イスラエルは、今回も入植地に1400件のユダヤ人家屋の建設を行うことを表明している。
また、ヨルダン渓谷をイスラエルの領地として併合する法案が出されており、近く採択が予定されている。
ヨルダン渓谷をイスラエルが併合した場合、パレスチナの国ができても、イスラエルに挟みこまれる形となるため、当然、パレスチナ側は強く反発している。
<ケリー国務長官・正月から稼働>
ケリー国務長官は、正月1日にニューヨークを出発し、イスラエルを訪問予定となっている。ケリー氏は、ネタニヤフ首相、アッバス議長と、国境線策定などを含むすべての議題についての合意事項を両者に提案するとみられる。
アメリカからの相当な圧力だが、実際には両者の信頼関係は、以前より悪化しているのは明らかで、これぞ「ごり押し」という印象だ。