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ガンツ氏が国会議長に就任:新型コロナがイスラエルの政治に介入!?
25日、前エデルステイン国会議長が、辞任を表明したことを受けて、26日、国会では、新しい国会議長を選出することとなった。ここで、誰も予想しなかったことが起こる。青白党のガンツ氏が次期国会議長に立候補を表明したのである。
青白党の党としての方針は、「国が危機にある今、ネタニヤフ首相があと6ヶ月首相を継続する事は認める。しかし青白党は、その下には入らず、外からこれに協力する。」というものであった。
そこへ、ガンツ氏が国会議長のポジションに立候補するということは、青白党の旗頭として外から協力するのではなく、ネタニヤフ首相の下に入るということを意味する。実際、青白党は、党としてメイール・コーヘン氏を国会議長に擁立することが決まっていたのである。
これは、青白党をともに立ち上げてきたヤイル・ラピード氏(未来がある党)と、モシェ・ヤアロン氏(元国防相でテレム党首)にはまったくの寝耳に水であった。ラピード氏は、未来がある党議員に、この選挙を棄権するよう指示した。
しかし、ガンツ氏は、ネタニヤフ首相の右派陣営議員の支持を受け、国会議長に就任することが決まったのであった。
www.ynetnews.com/article/Sk95FL5UI
これと並行して、ネタニヤフ首相が、先に首相として国を導き、その後、ガンツ氏が首相となること、また、連立政権での首相交代など交渉が完了した際には、エデルステイン氏が国会議長に戻るとの合意内容も明らかとなった。
新しい統一政権において、ガンツ氏は青白党への合併前の独自の党、回復党党首としてと政権に加わる。その際、回復党には、外相、防衛相、法務相、文化・コミュニケーション相のポジションとともに、国会の外務、防衛関係委員会のポジションも割り当てられるとみられている。
かなり重要なポジションはほぼガンツ氏に割り当てられている。ガンツ氏をこの作戦に入れるために、ネタニヤフ首相も必死であったとみえる。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/277888
しかし、思えば、エデルステイン氏の議長辞任の際に、ネタニヤフ首相が、エデルステイン氏をまったく援護しなかったのはおかしかった。おそらく、ネタニヤフ首相、ガンツ氏の間で、国会議長のポジションを使っての取引が行われ、エデルステイン氏が協力したということであろう。
ガンツ氏は、今国家が緊急事態にあり、4回目の総選挙は絶対に避けなければならないとして、この判断に至ったと述べた。また、青白党の元同志たちに、これまでともに歩めたことに感謝を述べ、「新型コロナとの戦いは政治問題よりも大きい。」と理解を求めた。
しかし・・・これはどうみても、青白党への裏切りとしかいいようがない。いやはや、イスラエルの政治は、まったくもって予想外が起こるものである。エルサレムポストは、「ガンツ氏はネタニヤフ首相への信頼を失っているが、コロナウイルスが、ガンツ氏を妥協させた」と書いた。
www.jpost.com/Israel-News/Gantz-lost-trust-in-Netanyahu-but-coronavirus-made-him-compromise-622529
青白党崩壊:ガンツ氏は我々の票を盗んでネタニヤフに与えた:ラピード氏
ガンツ氏の突然の寝返りを受けて、これまでともに青白党をたちあげ、戦ってきたラピード氏は、激怒。「ガンツ氏は我々の票を奪ってネタニヤフ首相に与えた。まったく理解できない。彼を信頼していたのに裏切られた。これは、青白党に投票した人々への裏切りだ。」と厳しいコメントを出した。
また、ネタニヤフ首相とガンツ氏が今後立ち上げていく統一政権について、「これは緊急の統一政権ではない。ガンツ氏がネタニヤフ首相に降伏したというだけのことだ。」と述べた。
www.ynetnews.com/article/rylCEdcLL
青白党を立ち上げたのは、ガンツ氏と、元ニュースアナウンサーのラピード氏、前国防軍参謀総長のモシェ・ヤアロン氏と、ガビ・アシュケナジ氏4人であった。
このうち、ラピード氏とヤアロン氏は、ガンツ氏に反発しているが、アシュケナジー氏は、以前からガンツ氏と同様、もはやネタニヤフ首相に下でもいたしかたなしとの考えを明らかにしていた。
今、青白党は、ガンツ氏+アシュケナジー氏(15議席)と、ラピード氏+ヤアロン氏(18議席)に空中分解したということである。青白党は正式に解散を届け出た。
ラピード氏の未来がある党は、決して小さな党ではない(13議席)。国民の中でも中道左派には大きな支持基盤がある。今後筆頭野党として、立ち上がっていくとみられている。
ガンツ氏を迎える右派陣営は?
ガンツ氏を迎え入れるために、ネタニヤフ首相は、外相、防衛相、司法省という大きなポジションを回復党に割り当てたということは、元からネタニヤフとともにいた右派陣営政党には、複雑なところであろう。
右派陣営には、経財相、運輸相、内務相、国内治安相、保健相、経済委員会のポジションと、エデルステイン氏が、国会議長に返り咲くというものである。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/277888
ここで問題は、ガンツ氏が右派陣営に入ったとすると、ネタニヤフ首相にとっては、右派党の存在がそれほど必要ではなくなってくるという点である。これだけの重要な大臣席をガンツ氏に約束したとしたら、右派党(ヤミーナ)はどうなるのか?
現在、防衛相のナフタリ・ベネット氏は、ネタニヤフ首相とは不仲と言われる。しかし、リクードが危機にあった際、ともかくも議席を増やすために、ネタニヤフ首相はベネット氏に彼が念願としていた防衛相のポジションを与えた。しかし今、そういう配慮は不要になっている。
右派党のメンバーたちは、今後、どうなるのか、微妙な思いで、ガンツ氏の寝返りを受け取っているようである。
www.ynetnews.com/article/ryPkko5LU
石のひとりごと
ガンツ氏は、打倒ネタニヤフを貫く覚悟であったと思う。犯罪者として法廷に立つ者が、首相になるべきではないというガンツ氏の主張はもっともであろう。
しかし、そのガンツ氏も、コロナ危機が深刻になり始めたころから、今は、政治に固執せず、ネタニヤフ首相に国の指導をまかせるしかないとの動きになりはじめていた。実際のところ、この非常事態の真っ只中で、首相を任されても、おそらく引継ぎだけで時間のロスも生じてしまう。その間に市民の犠牲は広がっていく。
しかし、これまでともに歩んできたラピード氏や、ヤアロン氏は絶対に、ネタニヤフ首相との妥協を受け入れない様相であった。そこでガンツ氏は、彼らには相談せず、ネタニヤフ首相との契約に踏み切ったということである。
結果的に、左派すぎるラピード氏を排斥した形での統一政権になったということである。また、興味ふかいことに、左派だけでなく、強行右派の右派党も、重要なポジションからは外される流れになっている。
これにより、ネタニヤフ首相が、政権生き残りのために、右派議席を確保しようとして、かなりの強行右派路線になっていたことにもブレーキがかかると思われる。
。。。とはいえ、イスラエルのことである。まだどうなるかは、わからないといっておこう。。いずれにしても、イスラエルの神が支配している。最終的には、最善になるということである。
天が地よりも高いように、わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、わたしの思いは、あなたがたの思いよりも高い。(イザヤ書55:9)