www.bbc.com/news/world-middle-east-34408120
30日、ロシアがシリアのホムス周辺へ空爆を開始した。ホムス周辺などでの空爆はこれまでに20回。ホムスでは、少なくとも17人が死亡したと報じられている。
プーチン大統領は、今回の空爆について、「アサド大統領の依頼によるものであり、ロシアの国益を守るための一時的な介入だ。攻撃は、空爆に限局し、地上軍は派遣しない。」と言っている。
ロシアの国益とは、すなわち、ロシアがシリアを介して持っている地中海へのアクセスを守ること、ISISがこのまま拡大し、ロシア国内でもテロを起こすようになるのを防ぐことである。ロシアはこのためにはアサド政権を維持させることが必要だと主張している。
もしアサド政権を援護し、シリアでのその存在を守るということなら、攻撃対象は、ISISに限らず、すべての反政府勢力ということになる。もし、ロシアが攻撃したのが反政府勢力であったとしたら、これは少々ややこしいことになる。
まだ確定した情報ではないが、ロシアが攻撃したエリアはISISではなく反政府勢力がいる地域である。
<米露の不一致>
アメリカは、ロシアと違い、シリアをここまで崩壊させ、国民を殺害したアサド政権は終わらせるべきだと考えている。またロシアが敵視する反政府勢力(アルカイダなどではないシリア人反政府勢力)の訓練を行い、彼らにアサド政権を打倒するよう援護してきたのである。
アメリカもロシアもISISを攻撃するという点では一致する。しかし、アサド大統領を維持するか否かで意見が分かれている。そのため、ロシアは、アサド大統領のシリア軍を援護し、アメリカは、そのシリア軍と戦う反政府勢力を援護しているということである。
今回、ロシアはシリア領内を空爆するにあたり、1時間前にアメリカに通報している。その前には、アメリカ軍に対し、シリア領空から撤退するように伝えた。
これに対し、アメリカは、撤退せず、これまで通りISISへの攻撃は続けると主張している。今後、シリア領空でロシア軍戦闘機とアメリカ軍戦闘機が飛び交うという微妙な状況になるということである。
<シリアを挟んだチーム対抗戦>
ロシアはシリアを攻撃するにあたり、イラン、ヒズボラに加え、イラクもチームに加えている。これでロシアはシリア領内だけでなく、イラク領内にも空港を持つ事になった。
これに対し、アメリカのチームには、イギリスと、数日前にイラクで空爆を始めたフランス、サウジアラビアにトルコ(微妙に不一致)である。
こちらのチームは、最近になってやっとトルコのシリア国境付近の空港を使えるようになったばかりで、無論シリア領内に飛行場はない。今後ロシアの出方では、中東での主導権がアメリカからロシアへ移行する可能性もある。
<国連でのバトル> http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/.premium-1.677935
プーチン大統領は昨日、国連総会において10年ぶりに登場し、前回は5分だったのに比べ今回は20分も演説。ISISに対処するには、アサド大統領と協力しないことは大きな間違いだと主張した。
これまでのシリアでのアメリカ主導の空爆に大きな成果が見えていないだけに、ロシアの主張には力がある。
オバマ大統領の出番も昨日だった。オバマ大統領は、諸国が一致してISISに対処すべきだと訴えながらも、アサド大統領は、退任しなければならないと強調した。
両首脳は、国連総会出席を機に会談したが、上記のように不一致があるため、予想通り、大きな成果はなかった。
<イスラエルとの関連>
今回、シリア領内を攻撃するにあたり、ロシアは、イスラエルにも予告していた。
先週、ネタニヤフ首相はプーチン大統領を訪問し、イスラエルは今後も防衛のために、必要時はシリア領内を攻撃する方針を変えないと伝えた。その後、両国の間には、なんらかの連絡経路と、協調があるとみられる。
現在、ゴラン高原では、ISISと反政府勢力、アサド大統領のシリア軍が三つどもえで混乱した戦闘を繰り広げている。
今週もゴラン高原のシリア側からの流れ弾がイスラエルに着弾するという事件が2件発生。イスラエルは方針通り、ゴラン高原内へ反撃を行っている。
*シリア内戦
すでに4年近くになるシリア内戦では、これまでに25万人が死亡。シリア人800万人が国内で、400万人が国外で難民となっている。これはシリア国民の半分が難民になったことを意味する。
難民はまずは隣国ヨルダンやレバノンへ逃れた。ヨルダンでは国民の10%、レバノンでは25%がシリア難民という異常事態である。最近になってヨーロッパへ難民が逃れはじめているが、これまでにすでに50万人がヨーロッパ入りしたといわれる。この波はまだまだ続いている。当然、国連総会の中心議題である。