現実と違う!?アッバス議長・国連演説 2015.10.1

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4705703,00.html

水曜、アッバス議長も演説した。これに先立ち、アッバス議長は近々爆弾宣言をすると言っていたのだが、アメリカから圧力がかかったとみられる。

懸念されていた”爆弾”は、一方的にオスロ合意を破棄し、独自に安保理に国家設立への手続きを再開することだった。しかし、演説では、これまでと同様のイスラエルの”占領”を非難する内容だった。

<神殿の丘問題>

アッバス議長は、イスラエル政府は神殿の丘を分割しようとしている。イスラム教徒が神殿の丘へ入ることを妨害している。合意した紛争を政治から宗教の問題に変えようとしていると訴えた。

第三神殿を求めるユダヤ人教急進派たちが、無理にでも神殿の丘に入る回数は増えている。しかし、イスラエル政府はこれに反対する立場である。

イスラエルは、最近神殿の丘で紛争が続いていることについて、神殿の丘の管理者であるヨルダンのワクフ(イスラム団体)と治安維持の方策についての話し合いを試みていた。約束を守りイスラムを尊重する立場である。

しかし、それもワクフとの話し合いで成果を得られないまま、神殿の丘では、仮庵の祭り直前早朝(26日)、パレスチナ人が早朝に治安部隊に向かって激しく投石を始め、治安部隊と衝突した。

イスラエル警察によるビデオ(27日朝) https://www.dropbox.com/s/d85lh3s01tz4yoy/%D7%94%D7%A4%D7%A8%D7%95%D7%AA%20%D7%A1%D7%93%D7%A8%20%D7%91%D7%94%D7%A8%20%D7%94%D7%91%D7%99%D7%AA%20%D7%A2%D7%A8%D7%91%20%D7%A1%D7%95%D7%9B%D7%95%D7%AA.mp4?dl=0

今回は、イスラエルの国境警備隊が、アル・アクサモスク内に入るという事態になっている。通常は絶対に中へは入らないため、アッバス議長は、”イスラエルが”現状維持”の約束を破っていると訴えるのである。

また、イスラエルは、いつものことだが、一時的に、凶暴になりがちな若年層のパレスチナ人の神殿の丘への入場を制限した。アッバス議長はこれを、「イスラエルはイスラムの礼拝を妨害する。」と言っている。

世界のニュースではとりあげられないが、旧市街では、嘆きの壁へ向かう途中のユダヤ人に投石したり、女性たちも、ユダヤ人に罵倒を浴びせて脅かす事件が相次いでいる。

パレスチナ人の方でも立派にユダヤ教徒の祈りを妨害している。イスラエルが、パレスチナ人を逮捕したり、様々な制限をするのには理由があるということである。

しかし、アッバス議長としては、そもそも、イスラエルがここにいること、エルサレムを”占領”していることが原因だと言っているのである。

<ユダヤ人による暴力>

アッバス議長は、ユダヤ人過激派の放火によって一家4人のうち3人が死亡したこと、またデイル・ヤシン村での虐殺(1947年)にまで遡ってユダヤ人の暴力を訴えた。

こうしたユダヤ人の暴力に対して、イスラエルは取り締まりを強化することを最近になってやっと取り決めた。しかし、実際には、その場で射殺されるパレスチナ人テロリストに対し、ユダヤ人テロリストの場合は、未成年である場合もあり、逮捕にすら至っていない場合多い。パレスチナ人が怒るのには理由があるのは否めない事実である。

しかし、アッバス議長の演説の中に、パレスチナ人の暴力は全くもりこまれていないのも片手落ちと言える。パレスチナ人の投石で、ユダヤ人が死亡しているのである。

また、30日、ガザからロケット弾が発射され、アシュドド上空で迎撃ミサイルが撃ち落とした。このため、被害はなかったが、仮庵で休暇ムードのアシュドド住民には、大きな恐怖となった。この直後、イスラエル軍は、ガザ地区内部、ハマス関連施設4カ所へ空爆を行っている。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4705352,00.html

アッバス議長はハマスとは敵対しており、ガザからのロケット弾には関与できないと思われるが、パレスチナ人もユダヤ人に対して暴力を働いていることは否めないはずである。

しかし、これもまた、そもそも、イスラエルが存在していることが原因だというのがアッバス議長のいい分なのである。

相変わらずの「鶏が先か、卵が先か」の論議である。シリア問題で忙しいオバマ大統領は、今回の演説の中に、パレスチナ問題を含めなかった。アッバス議長はこれにも反発している。

アッバス議長の演説の後、ニューヨークの国連本部では、加盟国の万国旗に並んでパレスチナの旗も掲げられた。これが可決された時には、大きなニュースとなったが、こちらも、現在のシリア問題の重大さの中では、ニュースにすらならなかった。

<ネタニヤフ首相の反応>

イスラエルのネタニヤフ首相は、明日の出番を控えてニューヨーク入りしている。

アッバス議長の演説について、ネタニヤフ首相は、「演説は欺瞞に満ちている。イスラエルとパレスチナ、ワクフとの合意に基づいて”現状維持”に努めているのはイスラエルの方だ。」とコメントした。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Netanyahu-Abbass-speech-filled-with-lies-direct-talks-best-way-forward-419532

ネタニヤフ首相は、国連総会に先立ち、アッバス議長に和平交渉再開を申し入れている。アッバス議長は、「イスラエルが占領を続けている以上、平和はない。」とこれを拒否している。

<エジプト・シーシ大統領のポジティブ演説> www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/201146#.VgyF_KUWnA8

アッバス議長に先立ち、エジプトのシーシ大統領が国連で演説した。その中でシーシ大統領は、エジプトがイスラエルと締結している和平条約を、他のアラブ諸国にも拡大すべきだと述べた。

ネタニヤフ首相はこれを絶賛している。

シーシ大統領は、パレスチナ問題について、2民族2国家ができれば、平和は可能だと楽観的な見方を語った。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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