開く?イスラエルの空:20カ国を”グリーン国”指定 2020.8.17

ベングリオン空港に、旅行者(イスラエル人)の姿が戻り始めた。

保健省は、世界20カ国をグリーン国として指定し、イスラエル人が、それらの国から帰国した場合は、2週間の隔離を免除すると発表。16日から実施となった。グリーン国とは以下の国々である。

カナダ、オーストリア、エストニア、イタリア、ブルガリア、イギリス、グルジア、ドイツ、デンマーク、香港、ハンガリー、ヨルダン、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、ニュージーランド、スロバニア、フェインランド、キプロス、クロアチア

逆に、イスラエル人の入国を認めているのは、感染予防にゆるいブラジル、アメリカ、メキシコ、ケニア(入国前検査を義務付ける国もあり)だが、それ以外の国々は、まだイスラエル人の入国を認めていない。

しかし、先週、ギリシャ、ブルガリア、クロアチアの3国が、イスラエル人の入国を条件つきで認めると発表した。クロアチアは、入国時に過去48時間以内の新型コロナ陰性証明があれば、2週間の隔離を免除する。ブルガリアは、72時間以内としている。

ギリシャは、1週間に受け入れるイスラエル人観光客を600人までとし、訪問できる都市を、アテネ、クレタ、テサロニキ、コルフのみとした。ギリシャ到着からこれらの町に到着するまでの間に検査を受け、結果が出るまではホテルに自粛する。

ギリシャはイスラエルに近い上、まだ夏休みが終わる前なので、多くのイスラエル人観光客が訪問する可能性がある。

イスラエルの航空会社はまだ発着していないが、海外エアラインで、ブルガリア行きの飛行機は15日、ギリシャ行きは16日に再開されるとのこと。

以上は、イスラエル人に関する取り決めである。外国人については、まだ一般観光客の入国は認められていない。

しかし、この秋、後期の開始に際し、大学生2000人、イシバ学生1万2000人、ユダヤ機関の移住プログラムで5000人、同じくユダヤ機関プログラムの高校生500人、私立校で特別に認められた1500人の入国は例外として許可されている。

www.timesofisrael.com/arrivals-to-israel-from-20-countries-no-longer-need-to-quarantine/

ベングリオン空港に、スーツケースを引く人々の姿が、少しもどってきている。しかし、世界の感染拡大はまだ続いており、イスラエルもまだ収束とは言えない状況が続いている。

<世界の感染状況:エピセンターはアメリカ、ブラジル、インド>

世界の新型コロナの被害はまだ拡大が続いており、新型コロナの犠牲になったとされる人は、77万3000人を超えた。

コロナ感染者の累計は2183万人をこえたが、現時点の罹患者(陽性で有症の人)は、世界に約650万人となっている。この3分の1以上にあたる約250万人はアメリカ人。次にブラジル人80万人、インド人68万人で、世界の罹患者の60%近くはこの3国にいるということになる。したがって、感染拡大も被害もこの3国が、最も大きくなっている。

特にアメリカでは、今も1日3万から5万人以上の陽性が確認され、毎日、500−1000人以上が死んでいる。死者の累計は17万3000人を超えた。全世界の累計死者が、77万3000人であることから、全世界の中で、コロナで死亡する約5人に1人はアメリカ人ということである。

アメリカに続くブラジルは、1日に2万人から3万人以上の陽性が確認され、毎日600人から700人以上が死亡。インドでの陽性者は、1日に5−6万人以上、毎日1000人近くが死亡となっている。

www.worldometers.info/coronavirus/

<イスラエルの感染状況:新規陽性者は減少傾向も陽性率は高く8.7%・1日の死者10人前後>

イスラエルでの、新たな陽性者は、検査数(1日に1−2万件)によってむらがあるが、少ない日は500人程度。多い日は1000人を超える。陽性率は8.7%である。現時点での罹患者は、2万3000人以上で、重症者は、396人。死者は毎日10人前後で、新型コロナによるとされる死者の累計は、685人である。

<アラブ人居住地・ユダヤ教正統派地域での感染深刻:ガムズ教授>

イスラエルで感染が特に深刻なのは、アラブ人居住地で、保健省の調べによると、西ガリラヤ地方ドルーズの村ヤルカでは、人口1万人あたり感染者が197人と非常に高くなっていた。これに続くのが、ユダヤ教正統派地域で、モデイーン・イリットでは、1万人あたり144人だった。保健省はこの週末、これらの地域への訪問を控えるよう国民に呼びかけていた。

コロナ長官のガムズ教授は、アラブ人たちは感染予防をせず、コロナ・テロだと述べたため、アラブ政党議員からクレイムが出た。実際、イスラエル国内では多くのアラブ人医師、アラブ人看護師他、様々な分野でアラブ人スタッフが活躍、貢献しているのである。

ガムズ教授は、誤解を招く発言を謝罪するとともに、アラブ人指導者に、感染予防を徹底するよう指導して欲しいと要請した。

www.timesofisrael.com/virus-czar-compares-arab-israeli-infection-rates-to-a-terror-attack/

一方、ユダヤ教超正統派も、先々週、エルサレムで、ラビ・イサカル・ドブ・ロケーチが、保健省の要請を無視して、その孫の結婚式に、数千人を招いて結婚式を執り行った。招待客のほとんどはマスクをしておらず、屋内でおしくらまんじゅう状態であった。

この様子にガムズ教授は怒りを表明していたが、11日後、ラビ・ロケーチの感染が確認され、病院に搬送されたとのこと。

www.ynetnews.com/article/HkuZd0UMw

このように感染者の動向を調べながら、閉じるところは閉じ、閉じなくてもよいところは広げていくというのが、今のイスラエルの作戦である。しかし、イスラエル人の友人などによると、マスクをしていない人もあり、制限を出すわりに、外国人学生を受け入れたりと、どうにも納得がいかないことが多いと言っていた。

どの国も初めての状況なので、試行錯誤をしているということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。