イスラエルとパレスチナの和平交渉の期限が近づき、メディア上も様々な論議が日々さかんに行われている。ケリー国務長官は先週、「イスラエルにもパレスチナにも、世界にも和平交渉に賛成しない人がいる。しかし、私はひるまない。」と語った。
<入植者1万5000人のデモ行進>
その言葉通り、先週イスラエルでは、西岸地区入植者を中心に、15000人が、マアレイ・アドミムから問題のエルサレム郊外E1地域にむけて、デモ行進し、「和平交渉反対。2国家解決ではなく1国家解決を支持する。」と訴えた。
1国家解決とは、すなわち、西岸地区もイスラエルが治めるべきだという考えである。このデモ行進には超右派の国会議員も参加していた。
<パレスチナ人のデモ>
パレスチナ側も、「和平交渉反対」を訴えて、デモ隊がヨルダン渓谷の空き家などに居座りを構えていたが、イスラエルの治安部隊が彼らを解散させた。
15日、ガザ地区では和平交渉反対ラリーが行われた。ハマスは、アッバス議長が「ヨルダン渓谷の監視役にNATO軍なら受け入れても良い。」と発言したことに強く反発している。
なお、ここ数日の間、ガザ地区からアシュケロンなどへ飛んでくるミサイルの数が再び増え始めている。幸い、被害は今のところなし。しかし、イスラエル空軍がガザへ報復攻撃しており、パレスチナ人の負傷者は先週だけで17人に上っている。
<ヨルダンでもイスラム主義勢力がデモ>
イスラエルとパレスチナの和平交渉が、他人事でないのがイスラエルの隣国ヨルダンだ。
ヨルダンは1994年にイスラエルと和平条約を締結し、今に至るまで、両国の間の平和は維持されてきた。
しかし、ヨルダンの国民の60-80%はパレスチナ人。つまり、少数派のヨルダン王室が多数派を治めているということで、ヨルダンの政権は、実はかなり不安定なのである。
国内には、イスラエルと締結した和平条約に不満を持つものも少なくない。したがって、ヨルダン王室は、イスラエルとパレスチナの和平交渉に関しても、どのような態度をとるべきなのか、常に綱渡りをしてきた。
アメリカはこうしたヨルダン王室を助けるため、14日、ヨルダンへの追加経済支援を発表した。
しかし、その同じ14日、ムスリム同胞団を中心とするイスラム主義勢力が、ヨルダン王室に対して、ここ数ヶ月では最大となる1200人規模の「和平交渉反対」のラリーを行った。ヨルダンの安定を祈るばかりである。
*ヨルダン王室の本音
ヨルダン王室は、ケリー国務長官の進めている和平交渉については、両手を上げて賛成するわけにはいかないようである。
まずは、もし和平交渉が成立して、イスラエル軍がヨルダン渓谷から撤退させられた場合、どこの軍が国境の治安を守るのか。パレスチナの過激派がヨルダン渓谷からヨルダンへ出入りしないと保証できるのか。
また非常に複雑なことだが、東エルサレムや西岸地区に住むパレスチナ人の中には、ヨルダンの市民権を維持している者が多い。これらの地域が1967年までヨルダン領だったからである。
王室は、これらの”ややこしいパレスチナ系の国民”がイスラエルへ”帰還”してくれることを望んでいる。しかし、今回の和平交渉にパレスチナ難民の帰還が含まれていないのはほぼ確実である。