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退陣前コハビ参謀総長のインタビューから
司法制度改革で、右派政権のブレーキが効かなくなることに加えて、もう一つの大きな懸念は、西岸地区入植地の治安維持に関する命令系統の変化である。
まもなく交代して退陣するコハビ参謀総長が、メディアへのインタビューの中で、この変化への懸念を表明した。
1)西岸地区防衛体制の変化への懸念
ネタニヤフ首相は、西岸地区入植地の治安維持にあたる国境警備隊(警察傘下)の総責任を、警察を傘下に置く、極右オズマ・ヤフディ党のベングビール氏に委ねた。
また、その入植地の治安維持は、現在、国境警備隊と、イスラエル軍も関わっているが、ネタニヤフ首相は、イスラエル軍の中のその部署を、西岸地区治安担当という独立した部署とし、強硬右派・宗教シオニスト党のスモルトリッチ氏に委ねる形とした。
同じイスラエル軍として、西岸地区に配備されるのに、一部は、軍の指揮下で、一部はスモルトリッチ氏の命令に従う形で、軍の命令系統に混乱が生じかねない形である。コハビ参謀総長は特にこの点への強い懸念を表明した。
たとえば、これまでのイスラエル軍の動きを見ると、たとえばヘブロンで、過激右派ユダヤ人たちを取り締まり、パレスチナ人との大きな衝突にならないように努めてきたのは、イスラエル軍だった。
しかし、これからは、入植地拡大を目標とするスモルトリッチ氏と、ユダヤ・サマリア地区(西岸地区)からパレスチナ人を追放とまで考えるベングビール氏が、西岸地区入植地の治安維持をも含む、政策全般を任される形になったということである。ヘブロンの強硬右派たちを取り締まる勢力がまったくないということになる。
西岸地区では、パレスチナ人との衝突が深刻になっていることから、これが、パレスチナ人や世界にどうみられるのかを考えれば、新政権のこの政策が、イスラエルにとって果たして良いものなのかどうか懸念しかないということである。
テルアビブでは、今週末にもまた大規模な反政府デモが計画されているとの報道がある。
2)イラン、ヒズボラとの戦闘に関して
こうした国内の分裂の中、コハビ参謀総長は、イスラエルの最大の懸念はイランと、その配下にいるヒズボラだと改めて強調する。これまで続けられてきた、アメリカ率いる国際社会とイランとの核合意はほぼ失敗に終わっており、イランはすでに、かなり短時間で核兵器を作ることが可能になっている。
イラン傘下にあるヒズボラの攻撃も懸念される。これについて、コハビ参謀総長は、イスラエルには、倍返し以上の用意が完了しており、もしヒズボラとの戦闘になった場合、レバノンの被害は膨大なものになるだろうと語った。
www.timesofisrael.com/idf-chief-denounces-governments-west-bank-plans-in-farewell-interviews/
イスラエルの防衛環境が、危機的な状況にあることに変わりはない。しかし、イスラエルの歴史をみれば、危機が、本当の危機になったのは、外敵が強い時よりも、国内で同胞どうしが分裂している時であった。そう思えば今の激しい論議が、国内の分裂にならなければよいが・・とも思わされる。
石のひとりごと
新政権になってから、さまざまな論議が噴き出しているが、結局のところ、本質は、右派と左派の対峙という要素が見え隠れする。
イスラエルは常に先を見て動く国なので、まだ何も起こっていないうちにその準備をする国である。
防衛が厳しい時には、強い指導力とともに右派的な思想が強くなければ、勝ち残っていくことができないのだが、今、強硬右派ネタニヤフ政権の登場したということは、近い将来、イスラエルが大戦争にまきこまれる可能性もありうるのではないかとの懸念にもつながってくる。
実際、世界をみれば、ロシアのウクライナ侵攻にはじまり、アメリカと中国の対立が軍事方面にまで発展している。日本でも台湾有事に備えて、軍事費を増やし、沖縄方面のさまざまな防衛に変化が進められている。第三次世界大戦といった声も出始めている。
しかし、まだ起こっていない危機に備えるという政策は、その厳しい状況がまだ起こっていないうちは、過激にみえてしまうものである。また実際どうなのかは、神のみが知るところで、私たちにはわからないことでもある。
私たち人間には、将来、歴史を振り返ったときに、今のネタニヤフ政権の主張が正しかったのか、そうではなかったのかがわかるということである。
ニュースを追いかけていると、いよいよ終末の気配と緊張させられるが、これはまた同時に、すべてを支配しておられる天地創造の神と、その神からのイエスによる救いが、ますますリアルになってくる思いとも重なっている。
イエスキリストの十字架と復活によるこの神との和解をまだ得ていない人は、早く早くとあせる思いである。