苦境に立つネタニヤフ首相:息子のスキャンダル 2018.1.15

治安情勢がかなり緊張しているが、ネタニヤフ首相の国内での立場は、微妙な状況になりつつある。様々な汚職問題が明るみに出て、テルアビブでは、毎週土曜夜、数万人の大群衆が、辞職を要求するデモを続けているのである。

その上、先週、ネタニヤフ首相の2人の息子のうち長男ヤイール(26)が、2年前に、友人とともにテルアビブのストリップ劇場を訪れた際、車内で交わされた卑猥であるだけでなく、国にとっても重大と思われる会話の録音が、チャンネル2のプライムタイムニュースで流された。

その友人とは、天然ガス田にもかかわるイスラエルの石油王、コビ・マイモン氏の息子オーリーである。会話の中で、ヤイールは、オーリーに、「俺の父親はおまえの父親に、200億ドル(2億円以上)の道をつけてやったのに、おまえは、俺に400シェケルの女も紹介できないのか」と笑って言っていた。2人は泥酔していたようである。

泥酔していたとはいえ、これは、ヤイールたちが売春を認めているだけでなく、ネタニヤフ首相が、ガス油田の権利について、マイモン氏に便宜をはかったともとれる内容である。

これについて、ネタニヤフ首相は、会話は酔った若者の意味のない会話だと一蹴し、「どこの親が夜に外出する子供達を完全に管理できるというのか。酔っているときの会話を録音される若者の身にもなってもらいたい。

メディアは、2年前の泥酔した若者の会話を記事にする暇はあるのに、パレスチナ自治政府が350万ドルもテロリストに給与として払っていることは報じていない。」と、いわば逆ギレ状態であった。

ヤイールは、この会話は酔っていたときのもので、本来の自分ではない。だれかを傷つけたなら謝罪するとのコメントを出した。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5068118,00.html

現在、会話内容が捜査されると同時に、こうしたプライベートな会話を録音することの違法性が捜査されている。録音したのは、ヤイールのボディガードであった。

今日になり、そのボディガードの雇用主である警備会社が、首相家族の警備を任されるという信頼を失ったとしてこの警備員に対する訴訟を起こしている。

なんとも、みにくい話である。が、そこはイスラエル社会。こうしたことはすぐに忘れるので、ネタニヤフ首相もヤイールも人生が終わったわけではないと思う。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5070985,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。