憎しみの連鎖続く西岸地区 2018.1.15

西岸地区の入植者とパレスチナ人の間で憎しみと衝突が繰り返されている。先週火曜、西岸地区の前哨地(まだ認可されていない開拓地)ハバッド・ギラッドで、ラビ・ラジエル・シャバック(32)が銃撃された。

ラビ・シャバックは、自ら警察と家族に連絡し、病院に搬送されたが、その後、死亡した。妻と6人の子供たち(最年少は8ヶ月)が父を失った。

ハバッド・ギラッドは、入植地として政府に認可されていない前哨地の一つ。電気も水道もない開拓地であったという。

ラビ・シャバックは、そのような場所に住みながら、マーゲン・ダビッド・アドン(イスラエルの救命救急隊)のボランティアを務め、ラビの資格をとり、若者たちの教育にあたっていた。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240462

テロの翌日行われた葬儀は、故人の要望により、ハバッド・ギラッドで行われた。無認可の前哨地であるためか、政府からの出席は、スファラディのチーフラビと、ナフタリ・ベネット教育相だけであった。

ベネット氏は、葬儀にて、ハバッド・ギラッドを新しい入植地として認可すること、パレスチナ自治政府のテロリストへの支払いをやめさせるよう、ネタニヤフ首相に訴えた。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Rabbi-Raizel-Shevach-buried-near-Havat-Gilad-outpost-533358

リーバーマン外相は14日、ハバッド・ギラッド住民のために新しいイスラエル人居住区を西岸地区に設立するよう、政府に要請を出した。もし許可された場合、昨年から新しく認可されるユダヤ人入植地は、アモナ住民のための地域に続いて2つ目となる。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240655

<パレスチナ自治政府のテロ給与:350万ドル/2017>

イスラエルの防衛相が火曜、国会に提出した資料によると、パレスチナ自治政府が、イスラエルの刑務所に入っているテロリストに支払われた報酬の総額は、2017年だけで、3億4700万ドル(約385億円)にものぼっていたことがあきらかとなった。

イスラエル人を殺傷して、イスラエルの刑務所に入ったテロリストは、その犯行や収監期間によって報酬が決められ、給与として、パレスチナ自治政府から家族に支払われている。子供の数に応じて手当まであるという。

中には月2900ドル(30万円以上)も受け取っている者もあり、貧しいパレスチナ人にとって、イスラエル人を殺傷するほどよい収入源はない。

イスラエルにとっては赦しえない犯罪でも、パレスチナ人の視点では、イスラエルと戦った戦士へのいわば「遺族年金」なので、容易には止められない。海外からの支援金が、この悪循環を助長させているといえる。

現在、アメリカが、UNRWA(国連パレスチナ難民支援機関)への拠出金を見直す動きにでているところである。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240598

<復讐する極右ユダヤ人入植者>

西岸地区では、イスラエル政府の対応に満足しなくなってきた極右の入植者たちのパレスチナ人への暴力が、イスラエルのメディアでも時々報じられるようになっている。(パレスチナメデイアは、以前より逐一報じている)

ラビ・シャバックが殺害されて以降、極右入植者50人が、付近のパレスチナ人のオリーブの木100本以上を破壊している様子が報じられた。付近にいるイスラエル軍も上から眺めているだけで、止めようとしていない様子も撮影されている。撮影したのは、パレスチナ人の権利を法的に守ろうとするユダヤ人法律家組織イエシュ・ディン。

極右ラビに導かれた100人ほどが、イスラエル軍にパレスチナ人地域に恒久的な検問所を再建するよう訴え、ナブルスへの道路を一時閉鎖するなども行った。

www.timesofisrael.com/settlers-filmed-destroying-100-palestinian-olive-trees-as-idf-appears-to-look-on/

<パレスチナ人とイスラエル軍の衝突で若者2人死亡>

西岸地区では11日、複数の地域で投石するパレスチナ人とイスラエル軍との衝突が発生した。これにより、パレスチナ人の少年(16)2人が死亡。1人は、上記ラビ殺害犯を捜索中のイスラエル軍との衝突で死亡していた。

この付近では、1週間前にも同様の衝突で17歳のフィラス・タミミ(17)が死亡。その葬儀にあった英雄視されているタミミの写真にイスラエル兵が、イタヅラ書きし、ヘブル語で、のろいの言葉を書いていた。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5069843,00.html

<石のひとりごと>

西岸地区(ユダヤ・サマリア地区)の暴力の応酬は、まさに終わりのない怒りと憎しみで、徐々に恐ろしいことになりつつある。この上、アメリカの支援が止まったらどうなるのだろうか。。

トランプ大統領の言うことは最もではあるが、あまりにも単純で、それをそのまま実施することへの結果を、どこまで考慮しているのだろうかと考えさせられることがある。ビジネスの世界と政治、特に国際関係とは全く違うのである。

とはいえ、あまり考えすぎると何も動かず、結局、次世代にもっと悪い状況を引き継ぐけである。今、普通ならとうてい考えられないような人物が大統領に立てられたということは、いよいよ時代が動く時に来ているということなのだろう。

世の終わりには恐ろしい時代が来ると聖書は預言しているが、その入り口に立っているような気配もするところである。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。