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ギルボア刑務所からの脱獄で緊張続く
6日、北部ギルボア刑務所からパレスチナ人6人が脱獄した件。5日たった今、大規模な捜査が続けられる中、脱獄犯の家族など8人が拘束、逮捕されたが、6人の足取りは、まだつかめていない。今もイスラエル領内にいる可能性があり、テロを起こす可能性がある。
こうした中、他の刑務所では所内での放火や、ガザ、東エルサレム、西岸地区在住のパレスチナ人の中からも、脱獄囚を支持すると表明し、暴動に発展する地域も出ている。
また、この脱獄の成功は、パレスチナ人にとっては、イスラエルに勝利したと祝勝と受け止められている。アフガニスタンからのアメリカ撤退もあいまって、西岸地区や、ガザの過激派の動きが加速する可能性も懸念されている。
www.timesofisrael.com/manhunt-for-escaped-prisoners-enters-4th-day-as-west-bank-tensions-rise/
www.timesofisrael.com/tensions-ready-to-explode-palestinian-jailbreak-sparks-fears-of-escalation/
*脱獄したパレスチナ人
脱獄した6人のうち1人は、ファタハ(アッバス議長所属)のアルアクサ殉教団の指導者ザカリア・ズベイデイ(46)で、殺人未遂を含む約20件の事件で裁判中の凶悪犯である。ズベイディはまた、第二インティファーダでも指導者の立場であった。
4人はイスラム聖戦メンバーで、複数のイスラエル人を殺害した事件で終身刑を言い渡されている。1人は、イスラム聖戦メンバーだが、治安上の拘束で、まだ犯罪の確定はない人物。
南部刑務所内で放火:ガザ過激グループからも脅迫
イスラエル史上最悪の脱獄を許してしまった当局は、他の刑務所にいるイスラム聖戦メンバーをさらに警備が強固な刑務所に分散させようとした。また、家族の面会を9月14日まで停止するとして国際赤十字にも報告を入れたとのこと。
これに対し、8日、南部ケツィオット刑務所では、対象者らが移送に反発し、7つの独房に放火する事態となった。続いて同じく南部のラモン刑務所でも同様の暴動が発生。エルサレムに近いオフィル刑務所でも発生した。負傷者の報告はない。
パレスチナ自治政府刑務所委員会は、パレスチナ人収監者への新しい規制に反対していくと表明。特に、その対象者となるイスラム聖戦メンバーの受刑者らは、規制強化をやめないなら、期限なしでのハンバーストライクに入ると宣言した。
ガザのハマスは、イスラエルがパレスチナ人受刑者への圧迫をやめないなら、「復習」もありうると発表した。しかし、ハマスは、今すでに、イスラエルへの火炎風船による攻撃を継続しており、イスラエルの反撃空爆を受けている中にある。
ガザのPFLP(パレスチナ解放人民戦線)、DFLPも同様の脅迫を発表した。
西岸地区・東エルサレムで暴動・衝突
各地刑務所で放火が発生した8日、夜になると、脱獄囚たちを支持すると主張するパレスチナ人たちが、西岸地区内部や東エルサレムの計8箇所で、イスラエルの治安部隊に投石したり、タイヤを燃やして投げつけるなどの暴動に出た。治安部隊が実弾で応じたところもあり、パレスチナ人に負傷者が出ている。
イスラエルでは、6日の新年祭から西岸地区からの出入りを閉鎖していたが、これを週末が終わるまでに延長すると発表した。
www.jpost.com/breaking-news/cancellation-of-leave-imposed-on-idf-soldiers-in-west-bank-679087
今日、金曜日は、「怒りの日」として、大きなデモ活動が計画されている。
www.jpost.com/breaking-news/fires-reported-in-south-incendiary-balloon-suspected-679041
映画の如くの脱獄:ずさんな刑務所警備指摘
このイスラエル史上最悪と言われる脱獄を受けて、ギルボア刑務所の警備体制が調査される中、様々なずさんな運営が明らかになってきた。
ギルボア刑務所では、2014年に、トイレの下に穴を掘って脱獄する試みが行われたことがあり、トイレ周辺の補強は行われたが、シャワー周辺の補強は行っていなかった。今回脱獄した6人は、トイレ・シャワーの下の排水溝を通って、刑務所を出たところの開口口から脱出したとみられている。
この穴は、刑務所の壁を出てすぐの場所であり、高い見張り台からは僅か数メートルしか離れていなかった。ここから出てくる6人もの人間を見過ごすことはありえない。調べによると、ここひと月以上、この見張り台には、だれも立っていなかったことが判明した。
刑務所のシトリット司令官が、人手不足のためにとった措置であったとハアレツ紙が伝えたとのこと。チャンネル13は、予算削減の結果とも伝えている。さらにTimes of Israelによると、その近くの見張り台にいた警備員は、居眠りしていて脱獄を見逃していた可能性がある。
www.timesofisrael.com/guard-tower-overlooking-tunnel-used-in-prison-break-was-unmanned-reports/
ちょうど、ハリウッド映画に「ショーシャンクの空に」という映画に出てくる脱獄によく似ていることから、SNSではそれとこの事件をかけ合わせて揶揄するものも出ている。治安、警備は世界一を誇るイスラエルにあるまじき失態であり、世界のイスラエルの認識への影響も懸念されている。
脱獄の背景とこれから
脱獄やその後の衝突で、今困った立場に立たされているのが、パレスチナ自治政府のアッバス議長である。
事項に述べるが、パレスチナ自治政府は、今、経済崩壊の危機に立たされている。もし崩壊したら、ハマスやその背後にいるイランなど、なお危険な過激派たちが、進出してくる可能性がある。今、イスラエルと、近隣のエジプト、ヨルダンが、アッバス議長を支えようとする動きにで始めている。アッバス議長も、ガンツ国防相に会うなど、これを受け入れる様子をみせていたところであった。
この動きに水をさしているのがハマスである。ハマスは、ガザ国境での暴動を続けて、パレスチナ人がイスラエルと手を結ぶことへの反発をみせているところである。こうした中で発生したのがこの“栄光ある”脱獄である。
イスラエルとの戦いで刑務所に入っている同胞たちが脱獄に成功し、市民たちは、その勝利の沸いている。その中で、アッバス議長が、イスラエルとの融和政策は難しい。
アッバス議長も、イスラエルのパレスチナ人受刑者への監視強化などに反対を表明している。このまま6人の逮捕が遅れれば遅れるほど、過激派は勢いづくかもしれない。
ともかくも、脱獄6人の再逮捕が急がれるところだが、すでに西岸地区に入ってしまっていたら、これはもう、戦争という道しかなくなってしまう。難しい事態である。
www.jpost.com/israel-news/palestinians-decry-measures-against-inmates-assail-heroic-fugitives-678945