続報:シナゴーグ・テロ 2014.11.18

18日朝発生したテロの現場は、エルサレムの閑静な住宅街、ハル・ノフにあるイシバ(ユダヤ教神学校)を併設するシナゴグ、ケヒラット・ブネイ・ヤコブという英語主流のシナゴグだった。

敬虔なユダヤ教徒の男性たちは毎朝、早朝にシナゴグに来て、祈りを捧げてから出勤する。今日も、いつものように、朝7時ごろ、男性たちがタリート(祈りのショール)をかぶって祈っていたところ、パレスチナ人2人が入って来て、ピストルと大きな斧、肉切り大包丁などで、「アラー・アクバル!(アラーは偉大なり)」と叫びながら、4人を殺害。8人が負傷した。

これは教会でいうなら、早朝、礼拝堂で静かに個別に祈っている人々のところにテロリストが入り込み、礼拝堂で、残虐きわまりない犯行に及んだと想像してもらえばよい。

現場は、相当な出血で、壁も床も血まみれ、祈りのショールや聖書、祈禱書なども血まみれになっており、悲惨きわまりない犯行現場となっている。以下は現場の様子

www.mako.co.il/news-military/security-q4_2014/Article-5984eddf562c941004.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=2082585621

現場にいたヨシ・バルザニさんによると、テロリストが入って来るとシナゴグ内はパニックになった。テロリストが机一つはさんでバルザにさんにも向かって来たので背を向けて逃げた。祈りながら逃げたが、途中でタリートがひっかかった。それを後に残して外へ走り出たという。途中、悲惨な状態でころがっている遺体を見たという。

警察が到着したのは事件発生から約5分後。犯人と銃撃戦の末、テロリスト2人を射殺した。犯行から犯人殺害まですべては7分で終わったという。

犠牲者は、現場シナゴグ併設のトラット・モシェ・イシバ校長のラビ・モシェ・トウェルスキーさん(60)。TOMOと呼ばれ、皆に親しまれたラビだった。加えてラビ・カルマンレビンさん、アリエ・カピンスキーさん、アブラハム・シュムエル・ゴールドバーグさん。

3人はアメリカ、1人はイギリスとの二重国籍のイスラエル人だった。ラビ・トウェルスキーさんらの葬儀、埋葬は、本日午後、すでに行われた。会場はテロ現場のシナゴグ。イスラエルは行動が早い。

現在、負傷者8人のうち、3人が生死をさまよう重傷。3人が中等度。負傷者のうち2人(重傷と中等度)は警察官。

<テロリスト宅を破壊>

朝、上空でヘリコプターと爆音がアルモン・ハナツィブの記者自宅でも聞こえていたが、すぐ隣のアラブ人地区ジャベル・ムカバで暴動があり、警察が対処していた音であったことがわかった。

今回のテロの犯人2人はこのジャベル・ムカバ出身のイスラエル在住アラブ人で、治安部隊がさっそく、朝のうちに彼らの自宅を破壊しに来たのである。治安部隊は、同時にこの地域から複数の関係者を逮捕している。

今思えば、毎朝4時ごろから聞こえるアザーン(イスラム教の祈り)が、今朝はいつもより、大音響で、しかも、いつもよりきちんとした祈り声だったので、いったい何事かと思わされた。そこから犯人を送り出したのだろう。

<パレスチナ人の反応>

ハマスとイスラム聖戦は、このテロ行為を賛美した。ハマスは、「ハッサン・ラモニ(バス運転手で一昨日死体で発見)を殺した復讐だ。イスラエルが、アルアクサ(神殿の丘)で暴虐を働いているからだ。」とコメント。さらにユダヤ人を攻撃するよう呼びかけている。

Yネットによると、射殺されたテロリスト2人は従兄弟同士。家族は、2人はヒーローだと言っている。西岸地区とガザでは、通りでスイーツを配って祝いが行われた。ガザでは、少年たちが、斧を掲げて並ぶ姿が撮影されている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4593292,00.html (犯人の写真もあり)

ネタニヤフ首相は、テロを扇動しているアッバス議長の責任だと非難。「イスラエルは厳しくこれに対処する」と言っている。現在、緊急治安会議中。右派のベネット経済相は、「アッバス議長はイスラエルに戦争をしかけている。」とまで言った。

午後になり、アッバス議長がテロ行為を非難する声明を出した。しかし、「イスラエルは、アルアクサモスク(神殿の丘)への侵攻と、ユダヤ人入植者の挑発行為、政府閣僚の挑発発言をやめさせるべきだ。」とも言っている。

*神殿の丘と治安部隊の現状

アッバス議長は、”治安部隊が神殿の丘へ侵攻”と言っているが、イスラエルの治安部隊は、原則、アルアクサモスクの中には入らない。パレスチナ人たちがアルアクサモスクにこもって、石や火炎瓶を投げつけてくるので扉の外から、鎮圧をはかるのが治安部隊である。

治安部隊が神殿の丘に駐留する(いつもは少人数)理由は、神殿の丘から下に位置する嘆きの壁を守るためと、神殿の丘に来るユダヤ人と観光客を守るためである。

つまり、治安部隊が挑発するから問題になるのではなく、パレスチナ人が攻撃して来るから大勢の治安部隊が出動しなければならなくなるのである。それが証拠に、先の金曜日は、落ちついたと判断されたため、イスラエルは神殿の丘を年齢制限なしにイスラム教徒に開放している。

また、先週の衝突の時に、火炎瓶で治安部隊の隊員一人が指を2本失うという事態になった。これを受けて、イスラエルは、今後は治安部隊を攻撃してくる者には実弾を使ってもよいということになった。

ケリー国務長官は、ネタニヤフ首相と電話会談を行い、その後「祈っている人々を残虐に殺害する純粋なテロ行為。パレスチナの指導者は、これを非難し、すぐに対策をとるべきだ。」とのコメントを語った。

現在、午後3時半。ラビたちの葬儀中である。上空では、今もヘリコプターが監視を続けている。頭に血がのぼっている若者たちに恐れと疑いが与えられ、恐ろしい犯行に及ぶ事のないように。エルサレムの平和のためにお祈りください。

<北部の様子>

2日前、北部のアラブ人地域でのイスラエルとの衝突だが、イスラエルと対峙していたはずが、イスラム教徒とドルーズ(アラブ人だが、イスラムから分家した宗教で、イスラエルに忠実な少数民族。イスラエルに忠実で従軍もする)というアラブ人同士の争いに発展。互いに暴徒となり41人が負傷した。まるで聖書に出て来るような話である。

北部にいるドルーズ、アラブ人クリスチャン、特にイスラエル軍への兵役を推進するナダフ神父らも覚えてお祈りください。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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