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バーレーンとイスラエル国交樹立で合意
11日、トランプ大統領は、バーレーンとイスラエルが、全面的な国交を樹立することに合意したと発表した。UAEに続いて、湾岸諸国では2国目となる。
これにより、15日にイスラエルとUAEがワシントンで国交正常化の署名を行う際には、バーレーンのアブドラ・アル・ザヤニ外相がも合流して、「平和宣言」に署名することなった。
UAEの時と同様、9月11日、バーレーンのハマッド・ビン・アル・ハリーファ国王、ネタニヤフ首相が、トランプ大統領との電話会談を行い、国交樹立に合意したとのこと。
奇しくもこの日は、イスラム過激派が、アメリカで同時多発テロを敢行し、欧米社会とイスラム社会の間に大きな敵意が置かれた日であった。ネタニヤフ首相はこれを歓迎し、「新しい平和の時代」だとして、他の湾岸諸国もこれに続くことを期待すると述べた。
これまでのところ、中東諸国の中では、UAEと、エジプトがこの動きを歴史的として称賛する声明を出している。
背景にサウジアラビアのゴーサインか
湾岸諸国の小国は、最大の親分、サウジアラビアとの関係を良好に保つことが生き残りの条件である。バーレーンも、イスラエルとの国交樹立については、サウジアラビアの意向を見極めないといけないと言っていたのであった。
サウジアラビアは、UAEのときも、バーレーンの時も、沈黙を続けている。しかし、UAEとイスラエルが国交樹立を決めると、上空を使節団を乗せたイスラエル旅客機が飛ぶことを許可するなど、反対する姿勢も明らかには示していない。
さらに9日、サウジアラビアを含むアラブ21カ国からなるアラブ連盟は、UAEのイスラエルとの国交樹立を非難しないとの方針を決めた。
これに続いて、サウジアラビアとバーレーンは、9日、UAEに限らず、イスラエルから東に向かうすべてのイスラエル旅客機が、上空を飛ぶことを許可すると発表した。これにより、イスラエルからUAEまでは、わずか3時間半しかかからなくなる。
この発表の2日後、バーレーンがイスラエルとの国交樹立に合意したということである。
サウジアラビア自身は、今の所、パレスチナの国が実現するまでは、イスラエルとの国交はないと断言している。しかし、今中東で起こっている流れを見れば、サウジアラビアが、UAEに続く、バーレーンの動きに、ゴーサインを出していたと考える方が自然かもしれない。
サウジアラビアは、今ビジョン2030の元、石油に依存しない経済をめざして、民間産業、社会などの改革をすすめている。サウジアラビアにとって、中東で、イノベーション最先端に立つイスラエルとの協力は、未来への開発だけでなく、共通の敵イランとの戦いにおいても欠かせないはずである。
イスラエルとしても、サウジアラビアとの国交正常化は、最大の勝利となる。近い将来、最善の時に、両国が手を結ぶのではとの憶測が広がっている。
政治的に複雑な国バーレーン:王室はスンニ派で住民はシーア派
バーレーンは、ペルシャ湾、サウジアラビアとカタール沖の小さな島である。18世紀よりスンニ派のハリーファ族が今のバーレーンの地域を支配するようになり、UAEと同様、その後イギリスの支配下に入った。1932年から石油が出ている。
1968年にイギリスがスエズ運河より東から撤退すると、1971年に、バーレーンとして独立を宣言した。その後、2001年に、首長制度から立憲民主国家になった。
首都はマナマ。人口は150万3000人。このうちバーレーン国民は、約半数の52%。残りは、主に他の中東地域から移住したアラブ人や。フィリピン人、インド人などの出稼ぎの人々となっている。そういうわけで、バーレーン国民は98%がイスラム教徒だが、国全体で見ると、70.2%がイスラム教徒で、次に10.2%がキリスト教徒、ユダヤ人も0,21%いる。
www.mia.gov.bh/kingdom-of-bahrain/population-and-demographics/?lang=en
バーレーンの問題は、ハリーファ王室は、スンニ派イスラム教徒だが、国民の7割を占める他のイスラム教徒は、12イマーム派と呼ばれるシーア派である点である。2011年からのアラブの春では、反政府デモが勃発し犠牲者も多数出ている。
しかし、UAEと同様、産油国として、石油産業以外の産業、個人からの所得税なども徴収していないことから、少数スンニ派王室の支配でも、多数はシーア派の状態でもなんとか国が運営できているといえる。
しかし、2016年には、サウジアラビアがシーア派の司祭を処刑したことをきっかけに大きなデモも発生している。シーア派の背後には、イランがいることから、常に不安の種は伴う国である。
www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001808/bahrayn_tax_account_201403.pdf
www.bh.emb-japan.go.jp/japan/130403%20message%20from%20Ambassador_J.pdf
国内からの反発と実際
バーレーンの国民の7割はシーア派である。このため、バーレーンでは、8の政治団体が、先のUAEとイスラエルの国交正常化に反対を表明。バーレーンは政府としてこれに反対を表明すべきだと訴えていた。
トランプ大統領が、11日、バーレーンとイスラエルの国交樹立合意を発表すると、上記8団体の一つで、かつて最大野党であったアル・ウェフェクが、「シオニストの国は法的に認められていないのだから、バーレーン政府が、イスラエルとの国交を決めるのは違法だ。」と述べた。
一般市民が今回の合意をどうみているかだが、バーレーン市民の間には、UAE市民のような喜びはなく、これを支持する人は少ないとの調査結果もある。特にサウジアラビアがこの動きに賛同しているとなると、下手には反発しにくいだろう。
しかし、反発がないこともないので、バーレーン政府は、イスラエルとの国交樹立のニュースが流れる前に、議員たちに、公のスピーチを抑えるようにと支持するなどの対策がとられていたという。
これで、王室だけが贅沢な暮らしをしていたら、おそらく、大きな反乱になったと思われるが、国民全員が税金なしでそれなりの暮らしができているので、よほどのことがない限り、大きな反発はないと政府は踏んでいるのかもしれない。
www.timesofisrael.com/bahraini-opposition-blasts-normalization-deal-with-israel/
パレスチナ自治政府・イラン・トルコの反発
11日にバーレーンとイスラエルの国交樹立への合意が発表されると、パレスチナ自治政府とハマスは、どちらも、これを「背後からのナイフだ」であり、パレスチナ人に対する敵意の表れだと非難する声明を出し、バーレーンに派遣していた大使を召還した。
アッバス議長は、これを、「卑劣、裏切り」と述べ、ハマスは、これは、侵害であり、深刻な差別だと述べた。イランは、「パレスチナ問題への反逆であり、イスラムへの裏切りだ。」と表明した。また、トルコは、「これにより、イスラエルは、違法行為を続け、パレスチナの土地を永久に占領する努力を惜しまないだろう。」と非難した。
ヨルダンは、イスラエルとは和平を結んでいる立場だが、国民の7割がパレスチナ人であることから、イスラエルとUAE、バーレーンが国交を樹立することについては、慎重な態度を続けている。
しかし、バーレーンの前外相で、国王の顧問でもあるカリード・アルカリーファ氏は、「イスラエルとの関係改善は、地域の治安、安定、繁栄につながる。」と述べている。
石のひとりごと
イスラエルと国交を結ぶイスラム諸国が4つ目となった。4つ目は若干、きわどい感じもあるが、それでも歴史的な動きである。それにしても、まさか湾岸諸国がアメリカのお世話でイスラエルと国交を結ぶと言うなど、だれが予想しえただろうか。
今回は、特に9:11の日に、アメリカが、湾岸諸国とイスラエルの間を仲介したという点も注目される。トランプ大統領はまさに実質オンリーのビジネスマン。過去の恨みやこだわりなどにはいっさいとらわれないようである。
クシュナー大統領顧問もパレスチナ人に、新しい時代に向かって、過去のことにとらわれないで繁栄を得ることは可能だと訴えていた。
今は特に、新しい時代への過渡期には入っている。過去に学んだ常識、特に過去の成功の法則にもとらわれることなく、新たな可能性を見ていくことが可能な時代になっている。過去の法則などにとらわれないようにして、前のものに目を留めていきたい。(ピリピ書3:1−14)
それから、本題とはあまり関係ないのだが・・・最近の動きで、湾岸諸国について調べる中、UAEもバーレーンもイスラム一色かと思いきや、意外に他宗教の人も少なくないことに驚かされた。
特にバーレーンには、10%もクリスチャンがいるらしい。日本の1%(実際はそれ以下)がいかに異常に少ないかということを実感させられた