イスラエルが、イラク、シリア、レバノンとヒズボラ、イラン系軍事基地を攻撃。その後、ヒズボラとイスラエルが大規模な軍事衝突が危機一髪で食い止められてから1週間。
世界のニュースが大きく取り上げることもないまま、イスラエルとヒズボラ、その背後にいるイランの攻防は、徐々に深刻化している。
<イラン拠点攻撃(シリア)で死者少なくとも18人>
9月3日、アメリカのFOXニュースが、複数の欧米系メディアからの情報として、衛星写真とともに、イランが、イラクの国境に近いシリアのアル・ブカマルに、大規模な軍事拠点を設建設中と報じた。この基地は、イマム・アリ基地と呼ばれ、あと数ヶ月で完了するとみられる。
報道によると、建物は5つで、周囲は小高いもり土に囲まれている。武器庫とみられ、ここに誘導式ミサイルも保管可能と思われる。この他にも10以上の建築物があり、数千人の兵士を収容可能とみられる。
www.timesofisrael.com/iran-building-large-military-base-on-iraq-syria-border-report/
この報道から6日後の9日、アル・ブカマルのこの基地付近で、親イラン系組織拠点が、何者かの戦闘機による攻撃を受けたとサウジアラビア系のメディア、アル・アラビアが報じた。この攻撃で、イラン人やヒズボラ関係者を含む少なくとも18人が死亡した。
攻撃を受けたのが、上記アル・ブカマリの基地そのものであったかどうかはまだ未確認だが、近くであることは間違いない。この基地に関与する親イラン系組織は、攻撃はイスラエルとアメリカが関与していると非難した。
イスラエルからのコメントはないが、シリアやイラクのイラン拠点への攻撃は、今年の7月19日から8月25日までだけで、5回も発生しており、今回もイスラエルである可能性は高い。
www.timesofisrael.com/airstrikes-in-eastern-syria-said-to-kill-18-pro-iran-fighters/
*アル・ブカマル:ユーフラテス川通過時の戦略的に重要な拠点
今回、攻撃されたとされるアル:ブクマル(アブ・カマル)は、シリアとイラクの国境で、シリア側にあるユーフラテス川の通過地点。戦略的に非常にも重要な地点で、かつてIS(イスラム国)が支配していた。IS追放後、イランが入り込んで拠点にしようとしたととみられる。
近くには、米軍と米軍が指示する自由シリア軍が、駐屯している。
<イランがイスラエルへ向けてミサイル発射:失敗>
イスラエル軍は、アル・ブカマルが攻撃を受ける直前、ダマスカス郊外から、イスラエルに向けて、ミサイルが発射されたと発表。ミサイルはイスラエルに届かず失敗で、イスラエルに被害はなかった。これは、シリアのイラン拠点への攻撃で18人が死亡したことに対する、イランの報復を試みであったのではとの見方もある。
イスラエル軍によると、この攻撃は、イラン革命軍の指示で、シリアのシーア派組織が行ったものであった。この組織は、Yネットベテラン解説員によると、2週間前に、神風ドローンでイスラエル攻撃を計画していたところ、イスラエル軍が攻撃して未然に防いだ事件に関与していたグループと同じである。
イスラエルは、アラビア語にて、責任は、これを容認しているシリア政府にあると訴えた。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5585030,00.html
<ヒズボラがイスラエルのドローンを撃墜か>
9日、ヒズボラが、イスラエルの偵察ドローンを撃墜し、レバノン側へ墜落した。その残骸を押収したと発表した。イスラエル軍は、これを否定。重要な情報が漏洩する懸念はないと発表した。
www.timesofisrael.com/hezbollah-claims-to-shoot-down-israeli-drone-that-crossed-border/
エルサレムポストの分析によると、これらの一連の攻防からわかることは、イランがイスラエルへの直接の攻撃をもはや躊躇することがなくなっているということである。
www.jpost.com/Breaking-News/Hezbollah-shoots-down-Israeli-drone-Lebanese-reports-601070
<ネタニヤフ首相がイランの新しい核開発拠点を公表>
9日、ネタニヤフ首相は、外務省にて記者会見を行い、イランがあらたな極秘の核施設があると発表。そこで核兵器製造のための実験が行われたと発表した。
イスラエルは昨年、テヘランの極秘の核施設へ侵入し、資料を大量に押収。ネタニヤフ首相が、世界に向けてこれを公開し、イランが、明らかに核合意に違反していると訴えた。今回開示した情報も、この時の資料に基づいている。
ネタニヤフ首相によると、昨年、イスラエルが、イラン中部、イスファハン南アバダの核施設を摘発すると、イランはこれを破壊した上、隠蔽工作を行ったという。ネタニヤフ首相はその前後、今年の6月と7月の写真を公開した。しかし、IAEA(国際原子力機関)は、そこにウランの痕跡を把握していたという。
ネタニヤフ首相は、イランにむかって、「イスラエルはすべてお見通しだ。いつ、どこで、何をしようとしていることも知っている。イランの嘘はすべてあばいていく。」と語った。
また、国際社会に対しては、「イランが、計画的に核合意を無視してきたことに目をさましてほしい。イランに核兵器を保有させないためにできることはただ一つ。圧力をかけ続けることだ。」と訴えた。
記者会見は、まずヘブル語で、続いて英語で行われた。
www.timesofisrael.com/pm-reveals-secret-site-where-iran-experimented-on-nuclear-weapons-development/
<石のひとりごと>
イスラエルとイランの攻防が、これまでになく、現実性を増してきた。イランのシリアやイラクでの拠点作りが、活発化し、イスラエルへの直接の攻撃も躊躇しなくなっている。
一方で、イスラエルも、以前にもまして、生死をかけた休みない諜報活動を続け、迫り来るイランの軍事拠点をあらゆる手を使って、しかも大胆に、次々に叩いている。
不謹慎ながら、その様子に、コンピューターゲームを思いうかべてしまった。イスラエルは、アイアンドームによって本土の自衛をしつつも、休みなく、先手先手をうって敵をたたいていく。敵は増える一方である。1発でも落とすわけにはいかない。
しかし、こうした休みなしの影の防衛のおかげで、イスラエル市民は、恐れることなく、日々の平安なくらしを続けており、観光客も変わらず増え続けている。
また、こうした危機的状況とはほぼ無関係に、イスラエルは、世界一のイノベーション、企業の国として、世界の投資家たちが注目している。いまや、日本を含め大手のビジネスマンたちが、続々とイスラエルにやってくる。こんなユニークな国は、他にないだろう。