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最高裁の反撃:問題のシャス党デリ氏を解任へ
今回の混乱は、すべて、レビン法務相が、司法制度改革案という大きな爆弾を落としたところから始まっている。しかし、これを受けて、20日、今度は、最高裁が、大きな爆弾を落とし返した。
ネタニヤフ首相が、指名したユダヤ教政党シャスのアリエ・デリ氏は閣僚になるべきではないとして、解任をネタニヤフ首相に罷免を要求したのである。
その理由は、デリ氏の限りない違法歴である。1999年以来、贈収賄などの摘発を受け続けており、懲役刑も言い渡されて、2000年に、実際に服役もした。しかし、約2年後、予定より早く出所すると、すぐに政治に返り咲いき、閣僚の地位にもついていた。
しかし、2018年には、また背信、マネーロンダリングなどで摘発。これについては、司法長官の裁量で、摘発が却下されたが、2022年1月、今度は脱税で摘発された。これについては、以後7年間は、政治家として立候補しないということを条件に、罰金18万シェケルを支払うことで解決とされた。
しかし、これについては、「政治的不道徳」にあたるとまでは、指定されなかったので、国政への立候補を完全に妨げることができなかったと言われている。このため、デリ氏は、この昨年2月には、すでに議員として国会に復帰したということである。
最高裁はこうした経過をもつデリ氏が国の大臣、しかも内務省や保健省という国民の生活にかかわる大臣になることはありえないと判断したということである。いかにもごもっともというほかはないだろう。
今はまだ、レビン法務相が提案した司法制度改革はまだ実施されていないので、最高裁は、政府の考えを覆すことができる。爆弾を投げ返したということである。
テルアビブで11万人の市民による反政権デモは、この後に発生していたのであった。
デリ氏は2閣僚から解任:空いた閣僚ポジションはどうなる?
最高裁の爆弾と、テルアビブでの大規模デモの翌日、週明けの22日、ネタニヤフ首相は閣議にて、「断腸の思いだが、デリ氏を閣僚から罷免する。」と発表した。
これを受けて、シャス党は、デリ氏を閣僚に戻すあらゆる手段を探すよう、ネタニヤフ首相に要請。ネタニヤフ首相は、「合法的、また国益になるあらゆる法的な手段を模索する。と約束したとのこと。この国益になるようにというところが若干くせものだが。。
閣僚から解任されるデリ氏が今後どうなるのかだが、シャス党の党首は継続、議員として国会に残る方針である。また、内閣のオブザーバー(意見は出さないがそこにいるということ)になる可能性が高い。ネタニヤフ首相にもしものことがあった時に、ピンチヒッターを務める副首相に収まる可能性も見え隠れする。副首相は閣僚ではないということなのだろう。ただこれについては、まだ想像にすぎない点である。
デリ氏が罷免されたあとに、だれが内務相、保健相になるかはまだ不明である。いうまでもなく、国政に非常に重大な2つの閣僚のポジションに穴が開いたということである。ラピード前首相は、「今政府で起こっていることは、政治ではなくサーカスだ。ネタニヤフ首相は、2つの閣僚のポジションを早く穴埋めすべきだ。」と訴えた。
ひょっとして、ネタニヤフ首相が、この大事な2閣僚ポジションを兼任するなどといえば、まさに、独裁に近づく気配になってくるわけである。