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新政権の早期国会承認見通せず
イスラエルではラピード氏(中道左派・未来がある党)が、8政党からなる超雑居状態の組閣案(最初の首相はベネット氏(右派ヤミナ))をリブリン大統領に提出。あとは、国会での承認まちとなっている。
しかし、現時点においてこの組閣案が、国会で期待できる賛成票は、120議席中、61票。あと一人でも新政権に反対票を投じる者が出れば、この組閣案は実現しない。
ここまでのぎりぎりになったのは、右派ヤミナのチクリ議員が、左派との合弁政府に同意できないとして、離脱を決めたからである。ラピード氏は、右派政党から、さらなる離脱者が出る前に、できるだけ早く、国会での承認選挙にもちこみたいと考えている。
しかし、今の国会議長レビン氏は、ネタニヤフ首相と同じリクードなので、おそらくは、期限ぎりぎりの7日後、最大12日後まで組閣承認の選挙は行わないとみられる。
このため、ラピード氏は、昨日、組閣案を大統領に提出した直後に、新政権に賛同する61議員の名簿を添えて、国会議長(リクードのレビン氏)の交代を求め、議長選挙を週明けの月曜に行うよう、国会事務所に要請を提出したのであった。
ところが、その直後、右派ヤミナの議員ニール・オルバック氏が、議長交代に賛同しないとして自分の署名を削除すると表明。結果、国会議長を交代させることができず、リクードのレビン氏のままということになったのである。
オルバック氏は、先にヤミナから離脱したチクリ氏と同様、自分は右派なので、左派との合弁政権にはやはり同意できないとして、組閣承認において反対票を投じる可能性を示唆している人物である。
もしオルバック氏が反対票を投じれば、新政権は成り立たない。こうなると国会はまた解散し、5回目総選挙ということになる。
昨日、ヤミナ党首のベネット氏は、オルバック氏と会談に及び、とりあえず反対票は投じないという返答をとりつけたようだが、国会議長交代案については賛同しなかったということである。
こうなると、新政権承認選挙は、早くても6月14日まで引き延ばされる見通しになったと考えられる。
苦しいベネット氏の立場と右派からの圧力
右派政党は、イスラエルはユダヤ人の国ということを最大の目標にしている。特に、次期新政権で、最初に首相に名が上がっているヤミナのベネット氏は、極右にも近いとされる宗教シオニストである。イスラエルは神によってユダヤ人に与えられた土地であり、ユダヤ人が支配するべきと考えている。
パレスチナ人と土地をシェアしようとする左派や、まして、アラブ政党と共に政治をすすめるなど、文字通りありえないはずである。アラブ政党ラアムのアッバス氏については、「テロリスト」とまで言っていたのであった。
ネタニヤフ首相は、そこをついて、フェイスブックに「ベネット氏は、3月の選挙の時、左派とは絶対組まないと言っていた。それが今はまったく正反対だ。こんなペテンがあるだろうか。」と厳しく非難する投稿をアップした。
ネタニヤフ首相は今、ヤミナやニューホープなど右派政党とその議員たちに対し、熱心に100%右派の政権をたちあげようではないかと、新政権からの離脱を呼びかけている。
www.jpost.com/israel-news/hundreds-protest-unity-govt-near-ayelet-shakeds-home-670069
右派勢力の市民らも、ヤミナのベネット氏やシャキード氏の自宅前で数百人からなるデモを行なっている。以下はシャキード氏自宅前に集まった右派800人のデモ
右派でない一般の人々からも、ベネット氏のように意見をころころ変える政治家は信用できないと言う人、一方、いろいろな種類の政党がいる新政権を喜ぶ人もいる。
政府を倒すためだけの内閣など悲しすぎる、多くの政党がそれぞれ意見を言うような政府では、何も決められないと言う人など様々である。
こうした状況の中、ベネット氏は、チャンネル12のインタビューで、「自分が非難されることは、よくわかっていた。」と述べ、今の心境を語った。
ベネット氏は、「自分の主義主張に固執することは簡単だが、もしそれをし続けていたら、イスラエルが永遠に政治的な混乱から脱出できないと考えた。イスラエルの最善を考えてこの道を選んだ。」と述べた。
しかし、子供たちには、「父はイスラエルで一番嫌われる人物になる」とその覚悟を伝えたとのこと。
しかし、かっこうよく言っているようではあるが、結局のところ、自分が首相になるというところが、最大の決断のポイントであったのではないかと思えないこともない。。
www.timesofisrael.com/bennett-i-told-my-kids-their-father-will-be-the-most-hated-person-in-israel/
ネタニヤフ首相も苦しい立場
ネタニヤフ首相もかなり厳しいところに立っている。もし、今回、新政権が立ち上がった場合、ネタニヤフ首相は首相職を終われ、かつ、今後も首相に舞い戻る可能性はなくなる。新政権が、まっさきに首相の任期に制限をつける法律を成立させると言っているからである。
さらに今進行中の汚職裁判においては、首相という立場がなくなると、実刑判決もありえるとのこと。12年以上もイスラエルを導き、今も最大の支持率を持つ首相が、収監される可能性が出てくるということである。
www.ynetnews.com/magazine/article/SycCwFL5u
このリスクを逃れるために、ネタニヤフ首相が自ら首相を退いて、刑事訴訟が届かない大統領になると言う案もあった。しかし、大統領はすでにヘルツォグ氏に決まっているので、この選択肢はない。ネタニヤフ首相にとっても後へは引けない事態であるといえる。
だれがイスラエルの王になるのか?まさに神のみぞ知る、というところか。