新型コロナ死者1000人突破 :7日から赤地域で夜間ロックダウン開始 2020.9.7

亡くなった家族に悲しみの別れをする家族 テルアビブ・イチロフホスピタル (Photo: Ziv Koren) https://www.ynetnews.com/article/BJOMz4GNw

新型コロナによる死者1000人突破

イスラエルでは、新型コロナにより、安息日中に14人が死亡して、死者の総数が1007人と、ついに1000人を超えた。さらに月曜0時までに12人増えて、死者の総数は、最新で、1019人となった。

これまでの感染者の総合計からいうと、致死率は1%で、イスラエルは、かなり低く抑えられているといえる。しかし、問題は、3月21日にコロナによる最初の死者が出てから500人を超えるまでに4ヶ月以上かかっていたところ、次の500人はわずか1月ほどで達してしまったという点である。このままのペースが続けば、今年中に、次の2000人突破もありうると、重苦しい記事が出回っている。

新たな感染者数については、先週、3000人突破を記録して以来、3000人以上になる日はでていない。しかし、検査数に対する陽性率は約12%を記録した。感染は市中でかなり広がっているようである。

現時点で陽性とされる人は2万6695人。このうち2%にあたる453人が重症、119人が呼吸器依存である。

バル・シモン・トーブ前コロナ対策長官によると、イスラエルの医療機関が対処できる重症者の最大限は800人。来週からは秋の例祭があり、そのまま冬に突入していくので、現時点で、どこまで感染・重症者数を抑えられるかが、今後の鍵になると言われている。

30地域フル・ロックダウン回避:40地域で夜間のみ限定ロックダウン

コロナ担当ガムズ教授の案は、まず閣議、それから国会で議論されるので、時間がかかっている。先週、各地を感染率で赤、オレンジ、黄、グリーンに分ける案が承認され、週明けから赤と指定された30地域で、フル・ロックダウンと伝えられていた.

しかし、ユダヤ教政党からの圧力で、最終的に、10地域をあらたに赤地域と指定し、それらの地域で、夜間だけの限定したロックダウンを実施するということになった。

それによると、7日午後7時から朝5時までの夜間のみロックダウンする。この時間、住民の外出は、自宅から500メートルまでとし、集会は、屋内10人まで、屋外20人までとなる。赤地域では、エッセンシャルでないビジネスは休業。学校も休校とされる。

予定は2週間とされているが、18日から始まる秋の例祭中の制限をどうするかは決まっておらず、フルロックダウンになる可能性も残されている。その決定は9月10日に出される予定である。

www.timesofisrael.com/under-heavy-haredi-pressure-netanyahu-proposes-curfews-instead-of-lockdowns/

今回、限定ロックダウンされる40地域は、アラブ人居住区とユダヤ教超正統派地域。どちらも大人数での結婚式や宗教行事を行っており、感染拡大が著しい。

イスラエルのアラブ人人口は、全体の20%ぐらいだが、9月1日のデータで、全感染者の28.8%がアラブ人である。特に、北部アラブ人居住地ウムエル・ファハンでは、陽性者410人中、268人が先週1週間の間に陽性が判明している。この町の市長は、ロックダウンがフルではなく限定であったことを歓迎しているとのこと。

ユダヤ教超正統派地域では、最も感染が多いのはエルサレムで、先週だけで1738人が陽性と判明。エルサレム市内で、赤地域とされ、月曜夜からロックダウンされる地域は、旧市街4地区、シュアハット、アナトテ、イスフィア、オリーブ山のアトゥル、シャイカ・ジャラ、ワジ・ジョーなどとなっている。

エルサレムに続くのは、ブネイ・ブラックが875人。アシュドド679人。モデイン・イリット481人、ベイトシェメシュ474人などとなっている。アシュドド、ベイトシェメシュは、今回新たに赤地域に加えられた。

ユダヤ教超正統派たちは、こうした限定的な対応に反発しており、政府から離れる傾向にある。7日からのロックダウンが実際どのように適応されるのか。警察との衝突にならないようにと思う。

www.ynetnews.com/article/BkFufez4P

www.jpost.com/health-science/cabinet-to-set-covid-19-restrictions-on-red-zones-94-percent-test-positive-641218

エルサレム旧市街は赤地域:神殿の丘閉鎖なるか

神殿の丘は、第一波の3月中旬、ワクフの指令で閉鎖となり、感染が落ち着いた5月末に再開となった。以来、毎週金曜、1万8000人から2万2000人が祈りをさささげに入場している。マスクを着用している人は少なく、パーソナルディスタンスも守られていない。

現在、エルサレム旧市街でも感染拡大が著しくなってきていることから、ガムズ教授が、旧市街全体を赤地域に含めた。このため、神殿の丘の閉鎖を再度、検討されている。しかし、これについては、イスラエルからの指令であった場合、パレスチナ人の反発は避けられず、実現は容易ではない。

また、神殿の丘を閉鎖するなら、旧市街全体が赤地域であるので、嘆きの壁、聖墳墓教会も閉鎖する必要性が出てくる。

www.jpost.com/israel-news/national-security-council-discussed-closure-of-temple-mount-to-worshipers-641319

イスラエルの国家治安委員会は、エルサレムの聖地3箇所の感染予防対策をどうするかを検討する特別委員会を立ち上げた。委員会では、宗教活動の制限を最小限にしながらの感染予防対策を検討する。

www.timesofisrael.com/official-mull-temple-mount-closure-among-steps-to-stem-virus-spread/

コロナ疲れと政府への不信

政府は様々な対策を講じているが、世界諸国と同様、イスラエルでも、市民たちの新型コロナへの倦怠感、なかなか終息しないことへのいらつきは著しい。また、第一波で厳しいロックダウンをしたことで、感染からは守られたが、経済がとりかえしのつかないほどの打撃を受けたこと、また、5月末、ロックダウンからの解除を急ぎすぎたとの失敗は誰の目にも明らかで、政府への不審が高まっている。

意見の不一致は、政府内部からも出ている。ガムズ教授は、就任以来、国全体のロックダウンを避けるとして、軍を動員した大規模なクラスター対策を行っているが、著しい効果は出ていない。閣僚からは、やはり、フルのロックダウンしかないのではという声もある。

www.timesofisrael.com/interior-minister-says-only-nationwide-lockdown-can-stem-virus-spread/

また、ユダヤ教超正統派が、政権離脱をちらつかせて、政府の感染予防対策に反発しているため、政府はもはや、統一感のあるがっつりした対策、スピード感のある先取りの対策がとれなくなっている。人の命に関わる問題であるのに、まだ政治に影響されている様子にも市民の不信は高まっている。

今、アメリカでは、感染拡大とともに各地でBLMなどと様々なデモが発生している。「私たちは同じ嵐の中にいる。しかし、同じ船に乗っていない。」との言い回しが出回っているという。イスラエルもまさにその様相に近づいているといえる。

*反ネタニヤフ首相デモ相変わらず:12人逮捕

毎週土曜、安息日あけに行なわれているエルサレムでの反ネタニヤフ首相デモは、今週末にも行われ、11週連続となった。今週も警察と衝突し,12人が逮捕された。このうち、5人は、7日まで拘束されたが、残りは翌日釈放されている。このデモについては、結果がほとんど期待できないデモとも揶揄されている。

www.haaretz.com/israel-news/.premium-thousands-at-anti-netanyahu-protest-in-jerusalem-for-11th-week-in-a-row-1.9131405?lts=1599458944242

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。