新変異株デルタAY3登場:ベネット首相(49)から40歳以上に3回目ワクチン開始 2021.8.20

3回目ワクチン接種を受けるベネット首相(49) GPO

感染拡大続く:新たな変異株AY3保持者10人確認

世界でデルタ株の感染が拡大する中、イスラエルでも感染の拡大が続く。国民の60%が2回の接種を終えたイスラエルでも、感染拡大は歯止めがかからず、19日木曜、新規感染者は7856人(陽性率5.5%)。

入院患者は1000人を超え、このうち重症者は603人。人工呼吸器依存者も100人以上で、死者は29人。(累計6752人)

こうした中、新たな変異株デルタAY3が、イスラエルでも10人から検出された。この新たな変異株は、世界でも検出され始めているが、今のデルタ株よりなお感染力が強いとみれらている。

専門家からは、数日前にAY3が入ってきたら、すぐにもロックダウンした方がよいとの警告がだされたところであった。

AY3が検出された10人のうち、8人は海外からの帰国者だが、2人は国内にいた人である。保健省は、今後、入院患者が5000人で、その半数が重症者になる可能性があると警告している。

国民に説明するベネット首相 Koby Gideon (GPO)

しかし、ベネット首相は、今ロックダウンすれば、イスラエルの未来の経済が回復不能にまで破滅する、防衛費用を削ることになりイスラエルに新たな危機を招くとして、現時点でのロックダウン案を退け、それは本当に最悪で、最終的な手段であると述べた。

www.timesofisrael.com/bennett-pushes-vaccines-over-lockdown-as-serious-cases-hit-5-month-high/

国民に理解を得るため、ベネット首相は、厳しい状況説明とともに、なぜまだロックダウンをしないのかという、政府の方針と具体的な対策を国民に伝えている。

ベネット首相がタイベイ訪問:ワクチン接種遅れるアラブ人にアピール

タイベイのイスラム教イマムと Koby Gideon (GPO)

ベネット首相によると、現在重症に陥っている105人のうち、103人はワクチン接種をしていないか、その途上であったという。

ともかくもワクチン接種を勧めるよう、国民に呼びかけた。また、特にワクチン接種に消極的なアラブ系市民に呼びかけるため、タイベイ(アラブ人居住地)のワクチンセンターを訪問。

「フェイクニュースに惑わされないでほしい。ワクチン(副反応)ではなく、ウイルスで人が死んでいる。」とイマム(イスラム教リーダー)やマンソール市長たち指導者たちに訴え、市民たちにワクチンを受けるよう、導いてほしいと訴えた。

www.jpost.com/israel-news/bennett-people-dying-from-covid-not-covid-vaccines-677145

ベネット首相から:40歳以上に3回目ワクチン開始

3回目ワクチン接種が、先週金曜から50歳以上にまで拡大され、安息日中も徹夜の接種が実施され、これまでに124万人以上が3回目の接種を終えている。

イスラエルのワクチン接種状況は、2回終えた人は543万人(60%)、3回目を終えた人は90歳以上が62%で、接種を開始した50歳以上でも55%である。

こうした中、先に3回目接種を受けた60歳以上の人々の間で、感染予防の効果が見え始めた(防御率86%)として、政府は、本日より40歳以上にまで拡大して3回目接種を開始した。

その一番バッターとして、49歳のベネット首相が接種を受けた。

www.timesofisrael.com/panel-backs-boosters-for-over-40s-as-evidence-of-strong-protection-mounts/

www.timesofisrael.com/not-waiting-for-final-okay-clinics-rush-to-offer-covid-boosters-to-anyone-40/

様変わりするイスラエルの経済事情

1)航空関係労働者が補償を求めるデモ

ベネット首相が言うように、4回目のロックダウンがもたらす経済的な打撃は相当大きいものになりそうである。

19日、ベングリオン空港では、航空関係労働者たちが、滑走路に出て、「私たちはパラシュートなしに飛行機から放り出された。」とのプラカードを掲げて、飛行機の発着を妨害するというデモ活動を行なった。これにより、航空機の発着が大きく乱れた。

労働者たちは、今も数千人が補償なしで解雇や無給休暇に置かれているが、今後またロックダウンになる可能性が出ていることから、「ロックダウンそのものに反対しているのではない。生きていけるだけの補償を要求しているのだ。」と訴えていた。

www.timesofisrael.com/aviation-workers-shut-down-flights-at-ben-gurion-protesting-virus-restrictions/

イスラエルの空港は、前のように閉鎖しているわけではないので、今も海外からの出入りは不可能ではない。しかし、感染拡大に応じて、徐々に海外への渡航や受け入れを制限したり、隔離を義務付けている。このため、キャンセルが相次いでおり、海外便の乗り入れは以前より減っているという。

2)秋の例祭観光は国内向けのみ:ホテル一泊772ドル

旧市街城壁が見える絶景の仮庵下のダイニング
デービッド・シタデル・ホテル

イスラエルでは、9月、新年や仮庵の祭りなどの秋の例祭となる。通常であれば、ユダヤ人だけでなく、クリスチャンもイスラエルに来るので、1年で最も観光業が華やぐ時期である。しかし、昨年に続き、今年も海外からの訪問客がないため、国内需要にかけることになる。

幸い、海外にいけないイスラエル人たちが、国内のバケーションを利用するため、特に一流ホテルはこの8月も満室だという。9月の例祭シーズンもほぼすべて埋まっている。

しかし、海外からの旅行者は、例祭を含めて2-3週間宿泊するところ、国内の客はそこまでの客はそう多くはない。2泊ぐらいでのぜいたくをしようとする人はいるとのことで、ウォルドフ・アストリアホテルでは、最低2泊で1泊2500シェケル(約9万円)という特別料金を設置した。相当高価だが、これでもかなりお手頃に勉強しているとのこと。

しかし、普段からイスラエル人の予約が多いキング・デービッド・ホテルや、エイラットのダン・ホテルはディスカウントなしと強気である。ホテルは、大きく様変わりした社会情勢に柔軟に対応を迫られている。

www.timesofisrael.com/jerusalem-hotels-bet-on-local-guests-this-sukkot-but-dont-expect-a-bargain/

このように、航空観光業をとりまく職種が大打撃を受ける一方、ITハイテク業など、収入が激増した職種もある。政府の収入にどんな変化があったかは、メディアには現れてこないのでよくはわからない。

しかし、ベネット首相は、政府にはさらなるロックダウンで、影響を受ける人々に十分な補償を出す余裕はないとして、なんとしても、ウイズコロナで勝利を得なければならないと、国民に理解を訴えている。

石のひとりごと

ベネット首相は、極右と言われ、国会にたった6議席で首相となったのだが、それこそ、自分のイデオロギーそこのけの、必死の様相で、イスラエルを守ろうとしているのを感じる。

ワクチンというものが、今後、人体にどんな影響をもたらすのかはまだわからない。成功か失敗か。しかし、そこは全能の主にあわれみをこいたい。

若い首相、その足りなさを主が補い、すべての決断をよきに、最善に導いてくださるように。

イスラエルだけでなく、日本にも世界にも感染が急拡大するデルタ株。またあらたな株もとの声も聞く。

イスラエルも世界もこの嵐で大きく揺さぶられている。どうか、主のひとこえで、この嵐を沈めてくださるように。

イエスは起き上がって、風をしかりつけ、湖に、「黙れ、静まれ」と言われた。すると、風はやみ、おおなぎになった。(マルコ福音書4:39)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。