嘆きの壁は人で埋まる仮庵の祭り:貧困層は増大 2021.9.24

ロックダウンなしの仮庵の祭り

イスラエルでは、20日日没から、仮庵の祭りが始まった。6日、らっぱの響きで、神の裁きが近づいた宣言にはじまった新年、続く悔い改め期間のスリホット、15日のヨム・キプール(大贖罪日:罪の贖いの日)が終わり、20日日没からは、仮庵の祭りに入った。

罪を贖われ、赦された者が、人々は、神の臨在の中で過ごすことを象徴する仮庵の中で7日間を過ごす。なぜ仮庵かというと、まだ本当に神がおられる天に入っていないからである。それを意味するのが、8日目のホサナ・ラバ(主よ来てください)である。

まだ不完全で仮庵に住み、まだ苦しみの中にいる主の民を完全な救いに導くメシア(救い主)が来ることを覚えるシムハット・トーラー(聖書が与えられた日)が28日に来て、秋の例祭がすべて終了する。この日から、ユダヤ人は聖書朗読を創世記1章から1年かけて読み始める、文字通りの新年が始まるということになる。

今年は、ベネット首相が、ロックダウンをしないと決めたため、感染予防対策をしながらではあるが、嘆きの壁でも大勢が集まって対面式の祭典が行われたのであった。以下は、嘆きの壁に設置された仮庵。

以下は、嘆きの壁で、仮庵の祭りの中日に行われる祭司の祈りの様子。ユダヤ教で祭司と呼ばれる人は、「コーヘン」という苗字を代々引き継いでいる人で、ユダヤ教律法を厳格に守っている人を指す。コーヘン氏に生まれたものは、異邦人との結婚をしておらず、代々祭司の家計を維持していると考えられている。

障害者教育施設・孤独兵士などを慰問するベネット首相

Haim Zach (GPO)

ベネット首相は、22日、クレンボ・ウイングと呼ばれる障害のある若者を社会に送り出すため支援機関で、今年、テルアビブに開設されたばかりの代84番目職業訓練学校を訪問した。

続いて23日には、海外からたった一人で移住し、今はイスラエル軍に従軍している兵士たちを訪問した。家族がともにいる例祭中に、一人で従軍している兵士に感謝と激励をするためである。

チャリティの季節:日々の食事にも困るイスラエル人家族は63万3000家族

MDAのフードバンク
MDA

仮庵の祭りの期間中は、貧しい人々へのチャリティがさかんに行われる。NGO団体が、22日に発表したとこおrによると、63万3000家族が、日々の食事にも困っているという。

人数で言うと、200万人にあたる。このうち77万4000人は子供で、実に子供3人に1人は、日々の食料にも不足していることになる。

Yネットによると、コロナで経済が大きな打撃を受けたこ1年半の間、政府が暫定政権であったため、状況に応じた予算改正が行われなかったという。現状に即した社会保障からもれている人が出ているとのこと。

なお、新政府が貧困者支援にあてた予算は、1億シェケル(30億円)で、コロナ対策に追われているMDA(マーゲン・ダビッド・アドン)は、貧困者家庭への食料配布も行なっている。

MDAのフードバンクの事務局長エラン・ウエイントロブ氏は、政府は1億シェケルではなく、その10倍を計上するべきというのが現状だと語っている。

www.ynetnews.com/article/h1wawu00xk

こうした現状から、ベネット首相は、イスラエルの経済が限界に来ているとして、ロックダウンしない方針を決めたということである。表面的にみれば、町は、市場も買い物に来る人で、賑わっているし、以前の様子に近づいているようにみえる。失業率、一時30%以上にまで上がっていたが、今は、5%前後である。海外からの観光業が停止したままで、失業保険も原則6月で切れているわりに、よくやっているほうかもしれない。

しかし、観光局からは、高い教育をうけているガイドを別分野で働いてもらえるようにと、オンラインでの職業訓練の案内がまだ継続して届いているし、特に経済が苦しいアラブ系住民、ベドウインたちを対象とした職業訓練や職場斡旋も続けられている。

日本と同様、コロナの影響で職を失った人は、表には見えてこないが、実際にはかなりいるということだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。