今週火曜、沿岸部から始まった大規模な山火事以降、ハイファや、エルサレム周辺の山々から、南はラキシュ付近などの各地で、次々に山火事が発生。
イスラエルでは、ここ数日、空気が非常に乾燥している上、強風が続いているため、鎮火が困難となっており、3日目の今日も、まだ延焼が続いている。
一部の地域では、住民が避難を余儀なくされている他、イスラエル軍基地も避難したところがある。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4883045,00.html
<被害状況>
山火事が始まったのは、今週火曜。ハイファとカイザリヤの間の沿岸に近いジカロン・ヤアコブで出火。ジカロン・ヤアコブでは、30軒が被害を受け、うち20軒は、焼け残ったものの、居住不能と査定された。
さらにナザレやガリラヤ地方、ヨルダン渓谷など、複数の地点でも出火。(これらの地域では2日後にはだいたい鎮火し、被害のなかった住民は、帰宅している。)
続いて、水曜には、エルサレムの山々から低地にかけた地域ラトルンで出火し、ラトルン周辺では、一部の住民が避難を余儀なくされた。ここでは家屋2軒が焼失した。テルアビブに向かう国道443号線は木曜朝は、閉鎖された。
その後、木曜午後から、ハイファの複数の地点で山火事が発生。強風を受けて火事は大規模に延焼し、木曜夜中に約75000人が、何も持ち出せない状態で緊急避難を余儀なくされた。現在、市内のホテルなどで待機している。
ハイファ市内での火災の様子:http://www.bbc.com/news/world-middle-east-38088651
負傷者は出ていないが、150人が煙を吸い込むなどして手当てを受けている。
ハイファでの大規模な火事を受けて、テルアビブ方面からハイファに続く列車が運休。国道6号線他、周辺道路も複数の地点で閉鎖された。
その後、深夜以降、水曜の出火からいったん鎮火に向かっていたエルサレムの山中では、ベイトシェメシュ、シャアル・ハガイ周辺(エルサレム市内から23キロ)で出火し、モシャブ・ベイト・メイールの住民は全員、夜中に避難した。
地元紙によると、ベイト・メイールには、ゲストハウスがあり、宿泊していた400人も避難したが、その中には、日中、ハイファの山火事から避難してきていた人もいたという。
*ベイト・メイールの内部の火災の様子 http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/220829
現在金曜朝、ベイト・メイールが面するエルサレムとテルアビブを結ぶ国道1号線にあるガソリンスタンドへ、火が燃え移らないよう、消火作業が続けられている。
さらに木曜夜には、再び北部カルミエル近郊ガリラヤ地方でも出火。ハルーツ山のユダヤ人地区に到達し、6件の家屋の庭が焼失した。
イスラエルでは、金曜朝もまだかなりの強風が続いており、現在も燃えているところでの鎮火は、まだまだ困難な様子である。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4884201,00.html
<諸外国へ応援要請>
全国広範囲にわたる山火事で、イスラエルの消防隊は、最南端エイラットからもかけつけて40チーム以上に及び、可能なチームは全部出払っている。このため、水曜、ネタニヤフ首相は、周辺諸国に応援を呼びかけた。
現在、イタリア、イギリス、ギリシャ、キプロス、クロアチア、ロシアが応援の消防専用機を派遣。アメリカからはスーパータンカーとよばれる鎮火剤を撒くジャンボジェット級の消防機もまもなく到着し、全国で鎮火にあたる予定。
パレスチナ自治政府も、消防車8台を派遣し、ハイファでの消火に協力している。なお、パレスチナ自治政府は、カルメル山の山火事でも支援隊を派遣した。
*スーパータンカーは、74トンの水や消火剤をまくことができ、2010年のカルメル山での大規模山火事のときにも活躍した。また、ロシアの消防機も5万リットルの消火剤をまくことが可能。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4884096,00.htm
*注 全国がパニックになっているわけではなく、エルサレム市内を含め、火事の影響を受けていないところは、まったく通常通りの安息日入りの金曜を迎えていることに留意されたし。
<連続山火事:一部はテロとネタニヤフ首相>
昨夜発生したベイトシェメシュ周辺の山火事では、出火直後に周辺から逃亡しようとしていたパレスチナ人が目撃され、一人が逮捕された。この他、これまでに各地で計12人が放火と扇動の容疑で逮捕されている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/220832
現在、取り調べが行われているが、ネタニヤフ首相は、記者会見において、一部はテロとみられ、今後火事現場すべてを調査し、放火犯には厳しい処罰を行うとの意向を発表している。警察によると、すでに特別捜査チームが活動を開始しているもよう。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4883972,00.html
国内治安省のギラッド・エルダン相によると、この3日での火災は、約200箇所に及び、このうち、半数は、放火によるものとみられている。
<”イスラエルが燃えている”歓喜するアラブ系ソーシャルメディア>
イスラエル全国で発生している火災で、多数のイスラエル人が避難しているのを受けて、アラブ系ソーシャルメディアは、”イスラエルが燃えている”と題して大ブレークしている。
クウェートでは、ツイッターで1160万人のフォロワーをもつ説教師が、火事の”成功”を願う書き込みを行っている。
エジプトでは、イスラエルがムアジーンを禁止する法案を審議していることに対する「神罰」だと言っている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/220824
*ムアジーンとその禁止法案
ムアジーンとは、イスラムの祈りへの呼びかけのことで、朝4時ごろから1日に5回、地域へ大音量で一斉放送される。地域によっては、普通の会話も聞こえないほどの大音量で流れてくるとこころもある。
ムアジーン法案とは、こうした大音量に苦しむ周辺ユダヤ人たちが政府に苦情を申し立てて、法案化したもので、屋外での大音量での一斉放送を禁止する法案である。イスラエルでは法律になるまで3回の国会審議を通過することが必要だが、すでに1回目を通過している。
以来、国際的にもイスラエルが、イスラムの祈りを禁止しているとして物議になっている。実際には、祈りへの大音量による地域一斉放送を禁止しているだけであり、代わりに、携帯への一斉配信など、周辺住民に苦痛を与えない形での放送に切り替えるよう要請するものである。
エルサレムポストは、モハンマドの時代に、地域一斉放送のテクノロジーはなかったとして、反論している。
しかし、ムアジーンはイスラムのシンボル的な要素もあり、これを禁止するとなると、反感が出るのは避けられないことである。
また、これと並行して、イスラエルではもう一つの法案が論議を呼んでいる。前回お伝えした西岸地区のユダヤ人入植地で、まだ合法化されていない地域を合法化する法案で、こちらもすでに1回目国会審議を通過している。(法律になるまでには3回の通過が必要)これもイスラエルが、西岸地区をとりこもうとしているとして、反感を呼んでいるところである。
こうした背景の中での全国的な山火事であったため、アラブ系社会が歓喜しているのである。
興味ふかいこどだが、こうしたイスラエルを憎む者たちが、イスラエルをあざわらう様子は聖書にも数多く出てくる。
確かに、神は、イスラエルの高ぶりや不信仰の軌道修正をする時に、敵対者たちを用いて、イスラエルに大きな痛みを与えられている。しかし、イスラエルをあなどるのは危険である。最後にはイスラエルを侮る国々が歴史的にも逆に滅びる結果になっているからである。(エゼキエル25など)
いずれにしても、あらゆる機会において、イスラエルとアラブ社会の憎しみあいは、悪化の一途であるということである。