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司法制度改革賛成派のデモ:エルサレム最高裁前
イスラエルでは来週12日(火)、最高裁裁判官、15人全員が招集されて、合理性法案(最高裁が政府が決定したことが、国の合理性に合致しないとして却下する権利を実質的に無くす法律)に関する公聴会が行われる。この結果、これを却下するかどうかを決定するとみられる。
もし、最高裁がこれを却下した場合、すでに基本法となっている法律を最高裁が覆すという、歴史的なこととなる。この後、19日、28日にも、司法制度改革に関する公聴会が予定されている。12日の公聴会は、その皮切りとなる。
これを前に、7日夜、政権を支持する右派たちが、エルサレムの最高裁前で、最高裁はこれを却下するべきではないと主張するデモを行った。参加者は、スモトリッチ経済相はじめ、約1万人であった。
この人々が主張しているのは、国民が選んだ政府が決めた法律を、国民が選んでいない裁判所が覆すことこそが、民主主義に反するということである。掲げているプラカードは、最高裁主任判事のハユート氏や、政府を弁護しないとの意思表示をした司法長官のミアラ氏などを非難するものであった。
中には、極右で知られ、パレスチナ人を虐殺したユダヤ人銃撃犯を出したカハネ派の旗が、デモ隊の中に翻っていたことも報じられている。
この日、アミール・オハナ国会議長は、最高裁が、合理性法を却下しても、政府はそれを受け入れないと述べた。ネタニヤフ首相はのちに、オハナ議長と同感であると発表している。言い換えれば無視するということである。
これからどうなる?憲法がない国の大きな壁
今日12日は、金曜日なので、明日土曜安息日明けには、大規模な、司法制度改革に反対する人々のデモが行われ、最高裁には、上記デモとは反対の、合理性法を却下するよう、要求するだろう。こちらも必死なので、暴力的な衝突にならないようにと思う。
それで12日、もし、最高裁が、政府が基本法にすることで合意、制定した合理性法を却下すると発表した場合、どうなるのか。今のままでいくと、政府はこれを無視するということになるだろう。
「そうなると、どうなるのかは、だれにもわからない。民主主義どころか、無法の国になる形である。イスラエル史上初めてのことなので、どうなるかはわからない。」これは、ヘブライ大学の政治科学の専門家、ルーベン・ハザン教授の言葉である。
イスラエルには「憲法」という国民全員が守る義務を持ち、簡単には変更できない国の軸がないということの問題が、今、改めて、実際的に証明されたということである。
ハザン教授は、今の政府は、政府内部でも、それぞれのアジェンダ(入植地問題、ユダヤ教正統派の徴兵制度など)に関心があるだけで、国全体にとっての最善を最善とみなさない事態になっていると批判した。