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ジェニンでの戦闘や、さまざまな問題が噴出する中ではあるが、現政権が進めようとする司法制度改革(行政が司法を上回る“オーバーオール”法案)への反発が、収まるどころか、再び拡大する様相にある。反対するイスラエル人たちは、「政府の独裁には従わない」という強い思いである。
テルアビブ警察長官辞任で火がついた“反司法制度改革デモ
今週初頭、テルアビブ警察のアミハイ・エシェッド長官が、デモ隊への過剰な暴力を拒否したことは政治的な配慮であり、警察長官として相応しくないとされ、政府から降格を通達された。これを受け、エシェッド長官は、降格を受け入れないとして辞任を表明した。
これを受けて、5日夜、テルアビブ市内では、大規模な反司法制度改革、もっといえば、反政府デモが発生した。数千人が、市内の主要道路、アヤロン・ハイウエイを封鎖し、路上で焚き火をするなどして、反抗を表明。
デモの間に、群衆に車が突っ込み、写真を撮っていたサルールさんが撥ねられた。サルールさんは、負傷していなかったが、運転手は逮捕された。この日、逮捕されたのは15人。
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また元イスラエル空軍兵士のウディ・オリさんは、警察の放水銃の直撃を右目に受け、視力を失うかもしれない重度な負傷を負った。ウディさんは、優秀なヘリコプターの操縦士で、今も空軍予備役として登録している。しかし、「独裁政府には従わない」と言っている。
イスラエルで今進められている司法改革によれば、司法が政府の暴走を静止しにくくなるとの見方から、「独裁」への入口だと懸念する人が多い。特に現政権が、強硬右派であり、西岸地区や東エルサレムを含む全イスラエルをユダヤ人の国にしようとする動きが、見え始めていることから、市民の間では、危機感が広がっている。
実際、この政府が立ち上がってから、西岸地区の入植者たちのパレスチナ人への暴力が増え、ユダヤ人以外のキリスト教徒やLGBTの人々への暴力も始まっている。ユダヤ人以外は出て行ってほしいということなのである。こうした事態に特に危機感を感じているのが、テルアビブに住む世俗派で、左派のイスラエル人たちである。
エシェッド長官の降格命令は、今問題となっている過激右派であるにもかかわらず警察庁を管轄する特権を与えられているベン・グビル氏によるもので、特にテルアビブの人々の心に火をつけたもようである。
その後、政府関係者の前でもデモが行われた。
ベン・グリオン空港でのデモ
上記デモの1日前になるが、4日、ベン・グリオン空港第3ターミナルで大規模なデモが行われた。夏休みが始まり、多くのイスラエル人たちが海外へ出るのを妨害することで政府に、反発を表明するというものである。
参加者は5000人以上になると予想され、フライトにも影響が出るといった懸念を警察が誇張していたが、空港側にもデモ賛同者がいるとみえ、「そんなことにはならない。空港設備は大丈夫だ。」と言った声もあった。
実際のところ、4人ほど逮捕者がでたそうだが、大きな混乱はないまま終わった感じである。筆者のガイドの知人は、この日空港へ観光グループを送り届けたあと、デモに参加したと言っていた。翌日の空港は、何事もなかったかのように、まったく通常の様相であった。
デモは深刻だが、こうした場所でのデモは、数時間の一時的であり、だれもが観光客の流入を防ぎたくないということは本音であろう。
なお、大きなデモはまた来週にも計画されている。