今回、中東最強、特に防衛では世界最強を誇ってきたイスラエル軍とは思えない、戦い方になっている。
特に、イスラエル南部で奇襲攻撃を受けた住民たちは、イスラエル軍が、なかなか助けに来ず、国に見捨てられたと感じたと語っている。犠牲者の遺族の中には、政府への怒りをぶつける人もいる。
元イスラエル軍総司令官で国家治安顧問のヤコブ・アミドロール氏は、まず、イスラエルがこれまでハマスに対してとってきた方針が大間違いであったことと、諜報機関に重大なミスがあったと認めた。
1)ハマスという組織の認識の誤り
これまでハマスは、何度となく、イスラエル南部に向けてロケット弾を発射し、市民たちは、毎晩のようにサイレンに悩まされる日々を送ったのだった。
最近では、南部住民たちは、もうガザに攻め込んで、ハマスを撃滅するべきだと国に訴えてきたのであった。
しかし、ネタニヤフ首相(アミドロール氏はその顧問の一人)はこれまで、最後までハマス攻撃を完了させることなく、脅す程度の反撃だけで、攻撃を停止してきたのであった。
逆にハマスが、ガザを静かに支配することが平穏につながると考えていた。ハマス以外にガザを治められそうな組織がないので、未知のもっと悪い者が出てくることの方を恐れたのである。
テロ組織だが、ガザの経済が良くなれば、ハマスでも戦うことをやめ、徐々にガザの政治的支配者になっていくととの期待もあった。
このため、イスラエルは、水道、電力供給に協力し、2万人のガザ市民をイスラエル領内に受け入れて働き、収入を得ることができるようにした。さらには、カタールが提供する現金支援がガザ市民の手に届くようにも手配した。
その結果が、今回の奇襲であったということである。アミドロール氏は、ハマスは所詮、テロ組織であり、そのDNAは変わらないと言うことだったと語った。
2)重大な諜報機関の読みの誤りとイスラエル軍の配置ミス
今回、イスラエル南部でこれほどに犠牲者が出た背景には、イスラエル軍諜報機関の読み違いが指摘されている。ハマスがまさかこれほどの数のロケット弾を発射できる力を持っていたということが意外だったと言っているとのこと。
また、西岸地区でのテロ組織摘発に部隊を咲きすぎていたため、ハマスが南部地域へ侵入した時に、すぐに部隊を派遣することができなかったのである。それで、長時間、市民たちは無防備な状態に置かれることとなった。生き残った被災者たちからは、「だれも助けに来なかった」という証言と批判が出ている。
今後、ネタニヤフ政権の信頼に大きな影響が出る可能性があるとの分析もある。