イスラエルでは今日22日、全国的に市長並びに市議会議員選挙が行われる。最も注目されるのはエルサレム市。
エルサレム市長候補は、現職ニール・バルカット市長、リクード・ベイテイヌ党のモシェ・レオン氏、ユダヤ教系(正統派ではない)のハイム・エプスタイン氏の3人。
現在、エルサレム市の人口は88万4723人、うち有権者は57万6406人。東エルサレムのアラブ人にも投票権がある。エルサレムでは、市内181個所、東エルサレムには121個所に投票所が設けられ、朝7時から夜10時までの投票を受け付けて、即日開票となる。
選挙運動は、日本のような街頭演説はなく、ポスター(写真)が貼られたり、ちらしが郵便受けに入っていたり、記者の住む地域では、シナゴグにバルカット氏が来て、公聴説明会が行われたりした(写真)。その他、ボランティアの若者たちが、町中でバナーを掲げてチラシを配ったりしていた。
<エルサレム市・見通し>
エルサレムでは、現職バルカット氏が優勢である。バルカット氏は、エルサレム生まれのエルサレム育ち。スタートアップ(企業)で成功し、すでにミリオネア。現在、給料なしでエルサレム市長を務める。
敏腕ビジネスマンとして、エルサレム市の国際的な特徴を生かした町おこしを次々に行い、以前より町は活気づいている・・とはだれもが認めるところだ。しかし、住民からは、交通渋滞の解消や、町の清掃に課題があるとの要求も出ている。
エルサレムでは、ユダヤ教正統派の票がどこへ流れるかが今後の市政に大きく影響する。人数が多いからである。ユダヤ教正統派の中には、世俗派ビジネスマンのバルカット氏を快く思っていない者が多い。そのため、バルカット氏が圧勝できず、自由に市政を導けなくなる可能性も残る。
ところで、バルカット氏の対抗馬の1人、ハイム・エプスタイン氏は、ユダヤ教徒で、ユダヤ教系の政党の所属だが、正統派ユダヤ教徒ではない。そのため、同じユダヤ教でも正統派たちは、エプスタイン氏を支持していない。
エプスタイン氏は、なんとか東エルサレムのアラブ人の票を獲得しようと、「今後も神殿の丘でユダヤ人が祈らないようにする。」と公約し、問題となっている。
<ナザレ市長選挙>
ナザレの市長選挙も注目されている。ナザレでは、キリスト教徒のラミズ・ジャライシ氏が過去4回当選し、20年以上にわたって市長の座を独占している。
ナザレは、イスラエル国内のアラブ人都市としては最大。イエス・キリストの受胎告知や、少年イエスが育った町として観光資源にも恵まれている。にもかかわらず、町はいっこうに発展せず、治安も悪く、交通網は乱雑で危なく、市民が楽しむような娯楽施設もない。
観光客は大勢やってくるが、受胎告知教会などを見て数時間すごしただけで、ナザレに宿泊する観光客はほとんどいない。結果、ナザレの町は貧しいままである。
そういうわけで、経済的に裕福なキリスト教徒たちは、町を離れるようになった。かつてキリスト教徒の町だったナザレが、今ではキリスト教徒は全体の30%にまで減ってしまった。キリストの故郷、ナザレは現代においては、貧しいイスラムの町である。
ナザレの場合、イスラムの迫害でキリスト教徒が町を出たのではなく、経済的政治的理由でクリスチャン人口が減ったということである。
こうした状況に、ナザレ市民は新しい変化を求めるようになっている。今回の選挙で、今のジャライシ市長が続投するのか?
もしくは、反イスラエル活動で常にひんしゅくをかっている現職女性アラブ人国会議員ゾアビ氏(イスラム教徒)など3人の対抗馬のうちのだれかが選出されるのか、注目されるところである。