目次
ネタニヤフ首相がガラント防衛相解任を発表
イランがイスラエルを攻撃してくる可能性が迫っているこの最中の5日(火)、ネタニヤフ首相が突然、ガラント防衛相(65)の解任を決定したと発表した。
理由は、意見の不一致と信頼関係の欠如だと述べた。
ネタニヤフ首相は、昨年3月にもガラント防衛相を解任していたので、今回2回目の解任宣言である。前回解任の原因は、政府が司法の上に立つ、いわゆるオーバーホール司法改革問題で、ガラント氏が、ネタニヤフ首相を非難する側に立ったことであった。
しかし、国民からは大反発が出たことから、ガラント防衛相はまもなく復職。その後、防衛相として、ハレヴィ参謀総長とともに、これまでのハマス、ヒズボラ、イランとの戦闘を指揮してきたのであった。
しかし、その後も両者の関係には無理があったのだろう。ネタニヤフ首相は、今、実施している戦闘、作戦において、初めの数ヶ月は信頼関係を維持できたが、ここ数カ月の間、ガラント防衛相が、閣議で決まったこととは違う発言を出すこともあったとして、信頼関係が崩れたと語っている。
また、結果的に、それが敵を支援する形になったと述べた。以下はその声明の全文
ネタニヤフ首相は、他の閣議のメンバーもこのことを共有していると述べた。
後任は、現在外相のイスラエル・カッツ氏(69)、外相公認は、最近、リクードと和解して連立入りしたギドン・サル氏になる予定となっている。
アメリカのホワイトハウスは、このタイミングでの突然の動きにショックを受けたとし、不可解だと表明したが、次の防衛相であるカッツ氏との協力を約束すると表明した。
www.ynetnews.com/article/r1aa77u111g#autoplay
ガラント防衛相声明:不一致の3項目
解任の通達を受けた、ガラント防衛相は声明を発表。ネタニヤフ首相と一致できなかった理由を3つあげた。
①今問題になっている、ユダヤ教超正統派の徴兵義務に関する不一致
戦争は1年を超えて長引く中、世俗派の若者たちは、その人生を中断して従軍し、多くがその命を失っている。ガラント防衛相は、今は国の兵力を強化するためにも、超正統派にも兵役義務を課すべきであると主張している。
ネタニヤフ首相はその政権の中に、超正統派の徴兵義務に断固反対するユダヤ教政党を抱えているので、ガンツ防衛相の意見とは一致できないということである。
②人質解放を最優先するべきという方針上の不一致
ガラント防衛相は、ガザ地区に多少、ハマスが残留していたとしても、まずは101人の人質を取り戻すことを最優先すべきだと主張している。ネタニヤフ首相は、人質解放をあげてはいるが、ハマス殲滅の方を優先する様相にある。
ガラント防衛相は、「人質を見捨てたことは決して許されない。それは、イスラエル社会に“カインの印”となって残り続けるだとう」と語った。カインとは、聖書の中で、弟アベルを殺して、知らぬふりをした兄、カインのことである(創世記4章)。今のイスラエルの方針は、同胞の命がなくなったにもかかわらず、知らぬふりをしているようなものだと指摘しているということである。
③10月7日のハマスの奇襲に政府の責任を追求する姿勢で不一致
なぜあのようなことになったのかを、軍事的、政治的にも検証する。イスラエル軍が将来の防衛において絶対に必要なことだと主張した。ガラント防衛相は、私たちを取り囲む闇があると指摘した。
この件については、ネタニヤフ首相も責任は免れないと思われるので、どこまでその検証を進めるかは現時点では不明である。ネタニヤフ首相は、戦争で勝利を得ることで責任を免れようとする可能性も指摘されている。
ガラント防衛相は、中東に展開するテロ組織のリーダーたちを排斥し、イランへの的確な攻撃を初めて実施できた。この声明を締めくくるにあたり、「国家の安全は、常に私の人生の使命である」と述べ、治安部隊に対する敬礼で締めくくった。
石のひとりごと
この時期に防衛相交代とは、随分思い切った判断である。何か大きな作戦か方針があって、ガラント防衛相がじゃまになったか。今後の軍事方針がどうなっていくのだろうか。
これは石のひとりごとだが、この直前、首相府がからむ重要極秘情報が、海外に漏洩していた問題が発覚し、首相府を危機に追い込んでいた。この漏洩問題に、軍や国防関係の人々が絡んでいたので、それも関係しているのではないかと推測するところである。
またアメリカで大統領選挙が行われるその当日のことでもあった。何か関係があるのかとも思われるが、それ以上にやはり、イランがいつ攻撃してきてもおかしくない、今!?という感じである。
ガラント防衛相は、同じ元IDF参謀総長として、ベニー・ガンツ氏とともに中道左派政治家グループの一員であった。戦争が始まると、ネタニヤフ首相は、野党のガンツ氏も臨時戦時内閣の一員として迎えていた。
しかし、その後、人質に関する方針で、強硬右派与党と同意できず、ガンツ氏は内閣を離脱した。その直後からである。ネタニヤフ首相は、強硬にガザとヒズボラとの戦闘を開始したのであった。いわば、人質に気を使わなくなったという感じである。
この時、ガラント防衛相は、中道左派でありながら、防衛相として戦時内閣に止まったのだが、右派政権と微妙な感じ、浮いている感があったことは否めない。石のひとりごととしては、ガラントさんどっち!?という場面も時々あった。
今ガラント防衛相を解任するネタニヤフ首相がいったい何を考えているのか、その深い闇の部分は、だれにもわかってないかもしれない。
これからは、イスラエル・カッツ氏が防衛相になる。ネタニヤフ首相に忠実な、右派政治家である。経済相、外相などを歴任しているが、軍事にどのぐらい経験があるのか、ちょっと不安な感じもある。しかし、非常に頭のいい、現実的な人物ではないかと思う。
ネタニヤフ首相としては、じゃまものがいなくなった状態で、政権がかたまってきた。国民はどう反応するのだろうか。今後、イスラエルの動きがどんな動きになっていくのか、注目される。