統一50周年を迎え、華やかなイベントが行われたエルサレムだが、その実情は、課題満載である。
エルサレムでは、人口流出が止まらなくなっている。中央統計局によると、毎年、8000人あまり(流入者と流出者の差)が流出しているという。問題は流出しているのが、世俗派で、若く教育も行き届いた、つまりは税金を払うユダヤ人であるということである。
エルサレムでは、ユダヤ教超正統派の人口が増えて、居住地が世俗派エリアにも入り込んできている。IT産業など大手の会社はほとんどテルアビブやベエルシェバにある。世俗派にとっては、エルサレムにとどまる利点はあまりないのである。
そういうわけで、エルサレムの人口は、現在約90万人だが、その45%は貧困線以下である。全国平均は20%であることから、エルサレムは、突出して貧困者が多いということになる。
原因は、まず、エルサレムの総人口の30%以上が、パレスチナ人であるということ。この人々は、エルサレム統一により、イスラエル主権下のエルサレム住民に加えられた人々である。
この人々は、イスラエルの国籍がなく、エルサレム住民というステータスなので、働き場がどうしても少ない。パレスチナ人を雇うイスラエル人雇用主も、どうしても少ない。
そういうわけで、エルサレムのパレスチナ人で就労している人は40%に過ぎず、エルサレム在住のパレスチナ人の80%は貧困線以下とされる。この人々は、海外に出ている子供が家族に仕送りするなどして、なんとか生き延びている場合が多い。
一方、エルサレムのユダヤ人で、就労している人口も、全国平均が64%のところ、58%にとどまっている。これは、基本的に働かず、国などの社会的支援で生活するユダヤ教超正統派の人口が、年々増えているからである。
これに対し、エルサレム市は、バルカット市長が、東エルサレムへの投資開発を進めているのに加え、昨年からは国も、予算を投じて、エルサレムにIT産業を誘致したり、観光業の開発に力を入れ始めた。しかし、まだ明確な結果はでていない。