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有症者1万2300人・重症者88人・人工呼吸器依存者35人
イスラエルでは、先週後半から連日新たな感染者が1000人を超え、政府が人の集まりに関する規制を強化したためか、週末は新たな感染者が若干減って、900人台を推移した。しかし、6日深夜で、有症者は1万2300人以上に増え、349人が入院。
このうち重症者が86人(前回のピークは103人)、36人が人工呼吸器依存である。重症者は、7月に入ってからの6日間だけで、64人増えたという。死者も毎日2−4人増えて7日朝の時点で338人となった。
今、新たな感染者の数だけでなく、実質的に病気になる人が増えてきていると懸念が広がっている。なお、保健省によると、5日に陽性と診断された人の94%は65歳以下だが、重症者の65%は65歳以上で、日本でも言われている通り、若者が高齢者にウイルスを運んで、高齢者が重症化して死亡するというケースが多くなっている。
www.ynetnews.com/article/Hy7xLCeyP
www.timesofisrael.com/health-ministry-ranks-virus-risk-for-activities-as-daily-cases-hold-below-800/
混み合うER(救急室)
感染者が急増しているのに伴い、ER(救急室:イスラエルでは、最初に行く外来のようなもの)に人々が殺到。重症者を看るICUはまだ余裕があるが、ERの負担が大きくなってきている。
ERに来ている人々は、検査で、陽性が確認された人や、陽性となって自宅で自主隔離していた人が、入院が必要かどうかを確認するために来ている人たちで、その大半は、検査後、帰宅している。しかし、その数の多さに医療従事者が追いつかないのである。
前回、コロナ対策の先鋒に立ったシェバ医療センターでは、現在、30人がコロナで入院している。そこへ、救急車が頻回に到着しているため、入院手続きで順番待ちとなり、患者が救急車内で待つという事態にもなっているという。
www.ynetnews.com/article/SyYEmhxkD
政府の対応に不満も
前回と対照的に、今回、政府は、経済活動の維持を優先している。先週、政府は、感染者が1000人を超えているにもかかわらず、集会人数を結婚式などで250人までなどの人数制限を強化するにとどめた。
同時に。人権侵害の疑いで論議になっていたシンベトの対テロ捜索システム(携帯利用)を使うことに踏み切った。これにより、感染者との濃厚接触者が洗い出され、一気に3万人が自宅隔離となっている。
しかし、1日の感染者が1000人規模担っている今、もはやクラスター対策では追いつかず、イスラエルは、コロナ封じ込めのコントロールを失ったとの見方も出始めている。
*ブネイ・ブラックのイシバ(ユダヤ教神学校)で感染140人
前回の波で、感染拡大が大きかったブネイ・ブラックだが、先週、イシバ(ユダヤ教神学校)で開かれた結婚式を介して、140人が感染したことがわかった。感染した学生たちは、複数の軽傷者用ホテルに分かれて隔離され、経過観察下に置かれている。
先週、政府は、あらたな感染予防対策として、当初、人が集まる集会は、20人までと発表したが、その後、宗教関係の礼拝については、50人に戻されたという経過があった。これにより、結婚式が、可能になったと思われる。
感染した一人の学生の父親、ヤアロン・コダシムさんは、息子は、政府の対応が遅すぎたために感染したと不満を訴えている。
www.ynetnews.com/article/SJBFjTg1P
規制強化:ロックダウン寸前
6日、政府は、さらに集会など制限を強化した。内容は以下の通り。
①閉鎖:イベントホール、クラブ、バー、ジム、プール、②レストランは、室内は20人まで。屋外でテーブルを離したレストランでも30人まで。③ホテルのダイニングホールは、屋内で20人まで。ホテルのクラブやバーは閉鎖。④スポーツイベントは、無観客で。
⑤子供達のサマースクールは、4年までとする。5年生以上は高等教育相からの指示を仰ぐ。⑥礼拝は、19人まで。その他の集会も、ソーシャルディスタンス2mと、マスクの着用を条件として20人まで。
⑥バスは、乗客20人まで。⑦職場は、少なくとも30%は自宅からのテレワークにすること。
www.timesofisrael.com/government-okays-closure-of-event-halls-culture-venues-gyms-and-nightclubs/
ネタニヤフ首相は、もはやロックダウン寸前だとのコメントを出している。
国会”あとまわし”案可決
政府は、コロナとの戦いにおいて、時を逃さず、社会活動制限対策を効果的に施行できるよう、政府の判断で施行し、国会の承認はその後になってもよいとする法案を提出した。
現行によると、政府がなんらかの対策を計画した場合、まずは、国会委員会で承認されなければならならず、もしそれができない場合は、次に国会で決議を必要とするなど、実施に時間がかかり、時を逃してしまう可能性があるという。
今回政府が提出した案によると、政府が、コロナ対策案として、制限強化を発布してから、国会は7日以内にこれを拒否することができるが、もしそれができなかった場合、その制限は、政府が撤回するまで継続されないことになる。この法案の期限は2021年3月となっている。
これについては、民主主義を監視するイスラエル民主主義研究所のアミール・フッチ氏は、「コロナとの戦いは、確かに大きなチャレンジで、政府にもある程度の自由が必要かもしれない。しかし、民主的に、国会で論議することは、政府の重荷ではないはずだ。」と国会の監視が軽視されることに懸念を表明している。
野党からは、「北朝鮮と同じだ」との声も出ていたが、5,6日と国会で3回、可決され、法律となった。政府は今後、迅速な方策を実施し、後で国会審議にかけることになる。