ロシア軍ウクライナ進軍がイスラエルに及ぼす影響 2022.2.22

In this photo taken from video provided by the Russian Defense Ministry Press Service on Tuesday, Feb. 15, 2022, Russian army tanks move back to their permanent base after drills in Russia. In what could be another sign that the Kremlin would like to lower the temperature, Russia's Defense Ministry announced Tuesday that some units participating in military exercises would begin returning to their bases. (Russian Defense Ministry Press Service via AP)

ニュースでも刻々と封じられているように、ウクライナ東部のルガンスク州と、ドネスク州では、親ロシア勢力とウクライナ軍の間で戦闘が始まっている。

プーチン大統領動く

こうした中、21日、プーチン大統領が、国内の安全保障条約を経て、ウクライナ東部の親ロシア勢力が支配する2州の独立を認めると、一方的に宣言。その地域にロシア軍を派遣するよう、正式に大統領令を発した。

この2州は、ウクライナからすれば領内である。その地域の一部において、独立をロシアが勝手に独立を認め、さらには、その地域にロシア軍を送り込み、駐留させるという。

これらの地域に住む人は、ロシア語を話す約360万人で、日経新聞がタス通信の情報として伝えるところによると、これまでにすでに77万人がロシアのパスポートを受給しているという。ロシアからすれば、もうすでに、自国の一部との認識なのだろう。

しかし、この地域は、一応はまだウクライナなので、完全な停戦合意違反であり、実質的にはウクライナへの侵略ということになる。しかし、ロシアの視点では、独立した国へ、その国の要望でロシア軍が入るのであり、これは侵略ではないということになる。

欧米側としても、“侵略”をどう定義づけるのか、まだはっきりしていないという。G7をリードするアメリカも頭を抱えているようである。

www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21CMO0R20C22A2000000/

www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223SR0S2A220C2000000/

しかし、何もしないわけにはいかない。バイデン大統領は、アメリカの会社が、ロシアが独立を承認した2地域への新規投資をすることを禁じる制裁を開始した。今後、ロシアの動きを見据えながら、G7は一致して、段階的にロシアへの経済制裁を発動していくとみられる。

ところで、ウクライナは、よく肥えた土地を有していることから、多くの小麦を生産、輸出しており、“ヨーロッパのパンのかご”と呼ばれている。このまま戦争が拡大した場合、小麦の生産が滞り、ヨーロッパだけでなく、イスラエルにも深刻な小麦不足に見舞われると懸念されている。

イスラエルへの影響は?:G7とロシアとのはざまで

1)ロシアとの関係悪化でイラン防衛政策に影響?

イスラエルはアメリカ始め、G7とは友好的な立場である。このため、G7からの厳しい経済制裁が始まった場合、ロシアが、イスラエルの要望に応じて、シリアでのイラン勢力攻撃を黙認するという約束に影響が出てくるのではないかとの懸念が上がっている。

イスラエルが欧米の一員であるとすれば、ロシアがこの特別な恩赦をイスラエルに与える理由がないからである。実際、ロシアは最近、イスラエルがシリア領内で頻繁に、親イラン武装勢力が駐留するシリア軍拠点を空爆していることについて、苦情を言い始めているという。

イスラエルとしては、ロシアの機嫌はとっておきたいのではあるが、G7との足並みを揃えなければならないのも事実。ラピード外相は、イスラエルは、今後G7と共に、ロシアへの経済制裁に加わるのかと聞かれると、検討するとだけ答えたという。

www.timesofisrael.com/israel-said-worried-us-sanctions-on-russia-could-affect-syria-operations/

2)小麦不足・金属不足の懸念

イスラエルも、ヨーロッパと同様、ウクライナから大量の小麦を輸入している。さらに、金属もウクライナから輸入しており、今後、建設業にも影響がでる可能性が指摘されている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。