ロシアからもイスラエルへ移住1400人:ウクライナからは7000人(移住はこの半分)2022.3.17

3月6日、ウクライナからの移住者を迎えるタマノ・シャタ移住相 移住省

ウクライナから退避した難民は、300万人を超えた。報道によると、最近になって出てきた人は、いよいよ攻撃が近づいてからの退避なので、心身への影響が大きいだけでなく、持ち物も少なく、行き先もないと言った人々が増えているという。

イスラエルへの移住希望者も増えている。ウクライナだけでなく、ロシア、またエチオピアからも要請が殺到している。

ロシアから移住1400人

イスラエルは、ウクライナのユダヤ人の移住者受け入れへ対応を急いでいるが、厳しすぎる経済制裁を受けているロシアからも移住を希望するユダヤ人が急増している。ロシアのウクライナへの侵攻開始から、イスラエルへ移住したロシア系ユダヤ人は1400人だった。

しかし、モスクワやセントペテルブルグの領事館では、希望者が殺到して手続きが難航している。「メシアが来るまでには順番が来る」といった皮肉が、フェイスブックに上がっているほどである。実際の順番待ちは8ヶ月ほどとのこと。

しかし、ロシアでは、ユダヤ人であることを隠して生きてきた人も多く、両親のどちらかがユダヤ人でない場合がかなり多く、移住資格があるかどうかの判定も難しい。ロシアの銀行カードもクレジットカードも、もはやイスラエルでは使えなくなっている。

また、ロシア通貨ルーブルの価値が紙屑のようになっているので、仮にイスラエルへ移住できたとしても、かなりの物価高のイスラエルで、生活を続けていくことは実際には難しいのである。課題は気が遠くなるほど山積みである。

www.timesofisrael.com/their-country-suddenly-a-pariah-jews-look-for-ways-to-leave-russia/

ウクライナから7000人受け入れ:ユダヤ人はこの半分程度

侵攻がはじまってから、これまでにイスラエルが受け入れたウクライナ人は、約7000人。移住の可能性がある人はこの半分とのこと。リビウに特設領事館をおいていたイスラエル領事館は、今はポーランドの国境、ポーランド側で業務を行っている。

移住を希望する人々の手続を24時間体制で行っている。しかし、間に合わないため、とりあえず旅行者ビザで、イスラエルに入国してもらい、その後、手続をするという手順がとられている。この人々は、マットレスを並べたような特設会場で、数日間滞在することになっている。

移住が認めれれた場合は、1ヶ月のホテル滞在と、個人の場合は、当座の生活費3000シェケル(約10万円)が支給される。しかし、移住が認められない人々にこれらの支給はない。

www.timesofisrael.com/would-be-immigrants-from-ukraine-brought-in-on-tourist-visas-denying-them-services/

エチオピアからの移住も受け入れへ:タマノ・シャタ移住相要請

さまざまな課題が噴出してくる中、今後、ウクライナとロシアから、イスラエルへ移住を希望する人は、加速して増えてくる可能性があるとして、イスラエルは、10万人をみこんでの準備を行っている。

ところがこの“白人”ユダヤ人への対策を見て、不服を訴えたのが、エチオピア出身のタマノ・シャタ移住相である。

昨年11月、イスラエル政府は、イスラエル国内に親族がいるエチオピア人9000人に移住を許可しようとしたが、右派勢力によって実施されなかった。エチオピアからの移住希望者の中にはファラシャ・ムーシャが多く、右派たちは、この人々はユダヤ人ではないと言っているのである。

ファラシャ・ムーシャとよばれる人々は、ユダヤ人だが、歴史の中で、キリスト教に改宗し、以後その生活を続けてきた人々で、帰還法に基づいてユダヤ人だと証明できない人も多いのである。

タマノ移住相の不服を受け、最高裁は、右派組織から出されていた、エチオピア移住希望者9000人の受け入れ拒否の要請を撤回すると発表した。言い換えれば、エチオピア難民の移民も許可するということである。とはいえ、即移住ではなく、これから調査と手続がすすめることになると思われる。エチオピアからイスラエルへの移住希望者は、9000人から1万2000人いるとのこと。

ウクライナやロシアからの白人難民たちとならんで、アフリカのエチオピア黒人難民たちが、大挙してイスラエルに移住してきそうである。文字通り北から南からである。(イザヤ書43)

www.timesofisrael.com/high-court-rejects-petition-allowing-thousands-of-ethiopians-to-immigrate-to-israel/

石のひとりごと

この移住者の問題については、欧米諸国のシリア難民に対する態度と、極端に違っていることが、指摘されている。シリア難民の場合は、テロリストが混入する危険性があったことは確かなので、しかたがないといえばそうかもしれないが、あまりの格差にシリア人たちはどう見ているだろうか。

特に、日本はシリア難民については、一桁2桁人数しか受け入れないような態度であったにもかかわらず、ウクライナ難民は大きく受け入れを公言している。特に極端といえるだろう。

いずれにしても、ウクライナ問題によって、また、イスラエルに今ユダヤ人たちが集められる結果をもたらしている。

見た目も文化も考え方もかなりちがっているが、トーラー(聖書)を大事にするという唯一の共通点によって、同じユダヤ人なのである。こういう民族というか国は、他に類を見ない。

イスラエルという国は、一つの民族というよりは、天地創造の神の前に、人類全体の代表として置かれている存在ではないかと、かねがね思わされるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。