イスラエルでは、6日からイスラム教のラマダンに入ったが、この日曜は、ユダヤ教のシャブオット(五旬節)の祭日だった。そのため、イスラエルでは、安息日も含めて、金曜から日曜までが連休となっている。
その直前の水曜に、テルアビブでのテロ事件が発生したことを受けて、イスラエル軍は基本的にこの3日間、西岸地区との間を閉鎖して、警備にあたっている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4814455,00.html
しかし、金曜は、イスラム教のラマダン最初の金曜日で、イスラム教徒にとっては、特別にエルサレムの神殿の丘に来る日となっている。この日は、巡礼者を完全に閉め出すことはできず、エルサレムの神殿の丘では、厳しい警備の中、イスラムの集団礼拝が行われた。幸い大きな衝突はなかった。
*ラマダン
ムハンマドに最初にコーランが啓示されたことを記念し、約1ヶ月、日の出から日没までは、水も飲まない断食をして、霊的に神に近づこうとする行事。イスラムの5つの義務の一つである。日没後には家族とともに食事をとる。
*シャブオット
5旬節ともいわれ、過ぎ越し(安息)の翌日から7週間後の日をさし、エジプトから解放されたイスラエル人が、シナイ山にたどり着き、モーセを通じて律法(十戒)を受け取ったことを記念する。
またシャブオットは、収穫を祝う収穫祭でもある。聖書によると、過ぎ越し、仮庵の祭り、シャブオットが、イスラエル人がエルサレムに来る事になっている3大例祭である。
この日、シナゴーグでは、一晩中徹夜でトーラーの学びをし、朝には十戒を読み上げる。日中は、キブツなどで、収穫の祭りが行われる。
<悲しみのシャブオット:テルアビブのテロ犠牲者埋葬>
楽しいはずのシャブオットだが、テルアビブのサロナ・マーケットでの銃乱射テロが発生したのはそのわずか3日前だった。犠牲者4人の葬儀は、木曜に行われた。遺族にとっては、まったく思いもよらなかったシャブオットになってしまった。犠牲者とその家族は以下の通り。
イド・ベン・アリさん(43)。ティーンエイジャー2人の父親だった。イドさんは、元エリート兵士で現在は、コカコーラ社の重役。妻のタルさん、子供たち2人とともに、マックスブレナーの隣のレストラン・ベネディクトで食事をしていて被害にあった。
妻のタルさんは重傷で病院に搬送されたが、容態はおちつき、現在は、中等度の負傷と伝えられている。子供たちは無事だった。
イラナ・ナベさん(40)は4人の子供たちの母親で、40才の誕生日を祝っていたところ、犠牲となった。
ミラ・ミシャヤビさん(30)は、3週間後に結婚することになっていた。Yネットによると、ミシャヤビさんは、死の直前に婚約者に電話をかけていたという。
ミハエル・フェイギさん(58)は、ベングリオン大学の教授で、イスラエルに関する社会学、人類学のエキスパートだった。3人の子供の父親だった。
www.timesofisrael.com/victims-in-tel-aviv-terror-attack-named-as-father-of-two-professor/
負傷者は最終的に16人とのこと。このうち1人は、頭部に銃撃を受けたが、生き延びた。家族は「彼が生きているのは奇跡。神様の贈り物。」と語っている。
ニュースはもうほとんどこの事件を取り扱っていないが、犠牲者家族の苦しみは、実に今、始まったばかりである。
<国連安保理がはじめてイスラエル人に対するテロを非難する決議>
今回、イスラエル市民の犠牲者を4人も出したテロについて、早期の段階で、国連安保理がはじめて、犯行を非難する決議を行った。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4814492,00.html
しかし、この翌日にはフランス代表が、テロ後、イスラエルがラマダン期間中にあるにも関わらず、8万3000人もの入国許可を反故にするなどの処置をとったことについて、「テロを増幅する」としてイスラエルを非難する発言をしている。
<終わらない憎しみの連鎖>
ラマダン中ではあるが、イスラエル軍は、土曜、この1月に、西岸地区オテニエルで、メイール・ダフナさん(38才の母親)を殺害したテロリスとの自宅を破壊した。家は、ヘブロンのヤタという村で、今回のテルアビブでのテロ事件の犯人の出身地でもある。
テルアビブでのテロ事件の後、この村をはじめ、西岸地区全域では、菓子を配り回っての祝いがなされていた。イスラエルを憎む町である。
これまでの事例でいえば、息子や娘がテロ事件をおこして、イスラエル軍に家を破壊されたパレスチナ人一家は、ヒーローを生み出した家族という扱いになっている。
おそらく、地域住民か、パレスチナ自治政府から、次の家が支給されているはずである。その場合、たいがいは、破壊された家よりは上の新居のようである。(注:今回の場合は未確認)
*パレスチナ人の子供たち:”アラーはイスラエルが嫌い”
例祭中の土曜、パレスチナ人地域に囲まれているユダヤ人地区のアルモン・ハナチーブで、友人と散歩をしていたら、3才から15才までぐらいのかわいいパレスチナ人少女たち5-6人が話しかけて来た。
くったくがなく、きゃぴきゃぴと本当に明るく元気で、かわいい少女たちである。2人はヒジャブをかぶっていた。近くのパレスチナ人の村、ジャベル・ムカバに住んでいるという。大きい少女2人はラマダンで断食しており、お腹がすいたと笑っている。
驚いたことに、話はすぐに、「イスラエル人は、嫌い。」という。なぜかと聞くと、手で首を切る様子をしながら、「パレスチナ人を殺し、土地をとっていくから。アラーはイスラエル人が嫌いなの。」という。
ヘブライ語を話すのかと聞かれ、うっかりちょっと、と言うと、ふんという感じで、「ああ、この人、イスラエル側よ。」と言われてしまった。
話していると、ベビーカーを押して散歩するキッパをつけた正統派ユダヤ教ととみられる若い夫婦が近づいて来た。少女たちは「ユダヤ人よ。」といいながら声をひそめた。
これほど近くに住み、同じ公園をシェアしているにもかかわらず、両者は避け合っいる。少女たちによると、パレスチナ人の学校では、ヘブライ語を学ばない。ユダヤ人の方でもアラビア語を学ぶ子供たちはほとんどない。
パレスチナの親たちは、テロが”成功”し、ユダヤ人が死ぬとそれを祝って、チョコレートを子供たちにも配る。子供のうちから、イスラエル人を憎むことが身につくのもまったく無理はないのである。
16才の少女がナイフでイスラエル人を殺しに来る事件があったが、その背景にはこうした日常があるということである。
*犯行後震えていたテロリスト
メディアによると、犯行直後、犯人の1人が、人々が現場から逃走するのにまぎれて一緒に走って逃げ、途中から現場すぐ近くに住んでいて、事件に巻き込まれた家族について走ったまま、その家に入って、水を要求していたことがわかった。
家族は、この人物が一見、弁護士風で、震えていたため、被害者の一人だと思い、家に入れて水を与えたという。この家族の父親は、警察官だった。事件発生直後、家族を家に送り届けてから、現場にかけつけたところ、撃たれて倒れていた犯人の一人の服装が、今自宅に家族とともに残して来た男と同じであることに気がついた。この警察官は、あわてて家に帰って犯人を逮捕したという。
犯人もまだ若い21才である。水を飲みながら震えていたというから、そのまま悔い改めに導かれればと願う。