ラファからの攻撃と反撃:イスラエル兵4人死亡・ラファで16人死亡か 2024.5.6

(Photo: REUTERS/ Bassam Masoud ,AP, Marc Israel Sellem)

ハマスの最後の拠点と目されるラファから5日、ガザ国境ケレン・ショムロンのIDF駐屯地付近へ、10発以上の短距離ロケット弾が集中的に発射された。これにより、イスラエル兵3人が死亡。11人が負傷(3人が重篤)した。

これに対し、イスラエル軍が、ラファの攻撃元への空爆を行い、パレスチナ人16人?が死亡した。カイロでの交渉が破綻に近づきつつあることも加え、いよいよイスラエルのラファ攻撃が濃厚になり始めている。

*6日日本時間午後6時:イスラエル軍がラファ東部から民間人を避難させているとの情報が入っている。

ラファからの攻撃と反撃の経過

1) ラファからの攻撃:迎撃ミサイル稼働せずイスラエル兵4人死亡

イスラエル軍によると、5日夜、ラファ検問所から350メートルという人道支援関連地点から、別の支援物資搬入口、ケレン・ショムロン検問所近くのイスラエル側IDF駐留地に向けて、短距離集中型ロケット弾が10発発射された。

IDF

攻撃されたのは、ラファへの攻撃に備え、戦車隊などが軍備を整えつつあった駐屯地である。この攻撃で、イド・テスタ軍曹(19)、ベン・マーク・モルデカイ・アソーリン軍曹(19)、タル・シャビット軍曹(21)の3人が死亡(写真左から)。

11人が負傷し、このうち2人が重篤と報じられていたが、その後も一人、ミハエル・ルーザル軍曹(18)の死亡が公表された。軍戦死者(ガザ戦闘以来)267人となった。

またこの時、周辺の民間人家屋に1発、開拓地スーファにもロケット弾が着弾していた。幸い、地域住民たちは避難しており、負傷者はなかった。その後、ハマスが攻撃を認める声明を出した。

この攻撃では迎撃ミサイルが稼働していなかった。イスラエル軍は、軍の駐留地であり、アラームや防衛の準備があったはずなのに、なぜこれだけの被害になったのか、イスラエル軍は検証をすすめている。

www.ynetnews.com/article/skhjbwsmc#autoplay

2) イスラエル軍がラファへ反撃:16人死亡か

ラファからの攻撃を受け、イスラエル軍は、ただちにラファのロケット弾発射地や周辺の建物への空爆を行なった。ハマス側情報によると、これらの攻撃で、“民間人”7人と9人、計16人が死亡したと発表した。

イスラエルは、ケレン・ショムロンからの支援物資搬入を停止した。

www.timesofisrael.com/at-least-10-israelis-hurt-in-hamas-rocket-attack-from-south-gazas-rafah/

ヒズボラからロケット弾60発以上:イスラエル人2人負傷

上記と同じ5日、イスラエル北部では、レバノンからヒズボラによるロケット攻撃が60発以上発射され、これまでで最大の攻撃となった。

迎撃ミサイルが稼働したが、キリアット・シモナでは、集中的に20発が撃ち込まれて、家屋に被害が出て、65歳男性が負傷した。救急車にも被害が出て、一部は停電になった。

www.timesofisrael.com/man-slightly-hurt-damage-caused-in-barrage-of-over-60-hezbollah-rockets-at-north/

10月7日被災者の遺体判明:ヘブロンで大規模葬儀

また5日、西岸地区ヘブロン(ユダヤ地域)では、10月7日にハマスに殺害された後、遺体として収容されていたが、名前が間違って葬られていた男性の本当の身元が判明した男性の葬儀が行われていた。

男性は、ハマス2襲撃された音楽祭で、警備員をしていたエレヤキム・リブマンさん(23)で、これまで、人質になっていると考えられていた。

ところが、その遺体が、レイプ被害者らの遺体と間違って埋葬されていたことが判明したという。それぐらい、遺体の損傷が激しかったということである。

リブマンさん家族と友人は、ヘブロンに住む、宗教的な人であったとみられ、エレヤキムさんは、5日、極右政治家のベン・グヴィル氏含め、数千人ともみられる群衆に見送られて、ヘブロンのユダヤ人墓地に埋葬された。

エルヤキムさんは、警備員として最後まで人々を守ろうとして殺されたとみられている。母親や家族、友人たちは、まだ生きていると思っていただけに、その落胆と悲しみは想像を絶する。

www.timesofisrael.com/sweet-smiling-smart-elyakim-libman-oct-7-victim-found-last-week-laid-to-rest/

ハマスとイスラエルの交渉はほぼ挫折か:イスラエルのラファ攻撃はもはや避けらない?

カイロで行われている人質交換と停戦に関する交渉が、正念場を迎える中、ハマスからは、イスラエルが戦闘を完全に停止することが条件に含まれていないとして、まだ合意の意向表明になっていないという。

この点については、イスラエルも譲れないことから、ほぼ頓挫した状態にあった。アメリカからは、バーンズCIA長官が、急ぎカタールに飛んで、仲介を試みていたところであった。バーンズ長官は、その後エジプトを訪問。本日、イスラエルに到着の予定である。

www.haaretz.com/israel-news/2024-05-05/ty-article/.premium/gaza-cease-fire-talks-reportedly-in-tough-spot-cia-chief-heads-to-israel-to-rescue-deal/0000018f-4a4b-d17f-adcf-fbebfac90000

しかし、ラファからの攻撃でイスラエル兵が4人も死亡したことから、イスラエルがラファへの侵攻を中止するするという選択肢は、もはやなくなったとの見方が広がっている。

ネタニヤフ首相は、ベングヴィル氏ら極右政治家に、ラファ攻撃を要求された際、「だれに言われなくてもわかっている」と返答したという。

シンワルの目的は何か:イスラエルに敗北させること?

Palestinians in Rafah in the southern Gaza Strip (AFP)

イスラエルがラファへ攻撃しようとする中、あえてラファから先に攻撃したハマス。戦争を止めようとする気はなく、ガザの民間人への配慮も微塵もないことが改めて証明された形である。

世界が反イスラエルに動く中で、あえてイスラエルにラファを攻撃させ、多数の死者を出し、世界の非難をさらにイスラエルへ向けようとしているのか、逆に、シンワルの目的は、ただ一つ、イスラエルに敗北を認めさせることだとの分析も出ていた。

いったいどう解決になるのか。まさに先が見えないとはこのことで、今はただ主に、イスラエルを忘れないでください、人がたくさん死なないようにと祈るしかない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。