12日夜、テルアビブでは、ユーロビジョン(国際歌謡コンテスト)が、オープニングセレモニーとビーチパーティで始まった。14,16日に準決勝、18日に決勝が行われる。
www.israel21c.org/eurovision-2019-kicks-off-in-plenty-of-style-in-israel/
今年、ユーロビジョンが、テルアビブで行われるのは、2018年の大会で、イスラエル人アーティスト、ネタ・バルジライさんが優勝したからである。それから1年、今日に至るまで、ユーロビジョンが、”紛争国”イスラエルで行われることが論議され、アーティストの中には、参加ボイコットを呼びかける者もいた。
しかし、最終的に不参加となったのは、ウクライナ(ボイコットが原因ではない)とブルガリアだけで、ヨーロッパからロシア方面の41カ国41国のアーティストがコンテストのためにイスラエル入りを果たしている。今回は、特別にアメリカからマドンナも参加している。
メイン会場は、テルアビブ中心のハビマ・スクエア。加えてビーチにはユーロビジョン・ビレッジが設けられ、食べ物に重点を置いたイベントなど、様々なイベントが行われる。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5507866,00.html
日本ではあまりなじみがないが、ユーロビジョンは、かなり大きな国際歌謡コンテストである。観光省は、4月に案内クリップをネットで流したが、再生は2億回。観光省は、この間、40万人がイスラエルに来ると予想している。
ちなみに、決勝戦の入場料は、1350~1700シェケル(約4-5万円)1000席。リハーサルもチケット制で、アーティストたちを見ることができる。
eurovisionworld.com/eurovision/tickets
また、コンテストは、テレビやネットで配信され1億人以上が見ることになる。このため、海外から取材に来たジャーナリストたちには、死海へのツアーが提供されるなど、プレスオフィスと観光省がコラボして、最大限に、イスラエルの良さをPRする作戦が展開されている。
しかし、イスラエルを憎む者たちがテロを決行するとしたら、これほど華やかな舞台はないだろう。アメリカ政府はアメリカ市民に対し、特に警戒するようよびかけている。
イスラエルは、テルアビブには警察官2万人を配置。ハビマスクエア周辺に加え、必要に応じてテルアビブ市内の道路が閉鎖されるため、今週1週間は、かなりの渋滞が予想されている。ガザ国境では、治安部隊を増強、迎撃ミサイルを追加するなど、治安強化を図っている。
特にこのユーロビジョンが危険視される状況は以下の通りである。
<厳しい治安情勢>
1)ガザ紛争停戦からわずか7日目
しかし、イスラエルでは、先週、ガザからの700発以上ものロケット攻撃を受け、市民4人が死亡したばかり。テルアビブは、そのガザから20キロしか離れれいない。
ガザでは、200万人のパレスチナ人のうち半数が貧困で生活できない事態となり、イスラエルへのロケット攻撃後の停戦で、なんとか必要物資を受け取るといった悪循環が続いている。今回は、停戦後6日目にあたる12日に、カタールの担当者がガザ入りし、13日、貧しいガザの109000家族が、それぞれ100ドルづつ受け取った。
カタールは、先週4億8000万ドルをパレスチナ人支援に出資すると発表。このうち3億ドルはパレスチナ自治政府に、1億8000万ドルは、ガザのハマスを経由せず、「貧しい市民」に直接手渡されるもようである。
200万人の崩壊寸前のガザ地区と、世界トップクラスのアーティストが、豪華な衣装でコンテストを行い、数十人が地中海ビーチで夜を楽しんでいるテルアビブ。わずか20キロで、この格差を思うとめまいがしそうなぐらいである。
www.timesofisrael.com/banks-in-gaza-start-handing-out-qatari-grants-to-impoverished-palestinains/
かろうじてカタールの現金がガザへ搬入されたが、ガザにいるイラン配下のイスラム聖戦が、テルアビブへロケット弾を撃ち込んでくる可能性は否定できない。
別の記事で述べるが、イランは今、アメリカの激しい経済制裁の下で苦しんでいる。このため、”中東のアメリカ”であるイスラエルを攻撃して、問題をそらす可能性もあり、その際は、ガザのイスラム聖戦や、南レバノンのヒズボラを使うこともありうる。
2)米大使館エルサレム移動からちょうど1年
14日は、アメリカ大使館がエルサレムへ移動してからちょうど1年になる。エルサレムでは、ネタニヤフ首相も出席しての記念式典が行われた。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/263142
2018年のこの日、ガザでは、パレスチナ人が「帰還への更新」を行い、イスラエル軍がこれに実弾で対応したため、14,15日で62人が死亡した。ハマスによると、このうち50人はハマス戦闘員で、3人はイスラム聖戦だったという。
この1年、アメリカに続いて大使館をエルサレムへ移動させると表明した国々はいくつかあったが、結局グアテマラ一国にとどまっている。そのグアテマラも、来月行われる選挙で、大統領が交代すれば、テルアビブへ大使館を戻す可能性が高い。
パラグアイも、アメリカに続いて大使館をエルサレムへ移動させたが、まもなく大統領が交代すると、パラグアイ大使館は、すぐにテルアビブへ戻された。
ホンデュラスも大使館をエルサレムへと言っていたが、最終的には、外交施設をエルサレムに開設し、大使館移動は次のステップというこおtになった。
ブラジルは、福音派クリスチャンで、大使館をエルサレムに移動させることを公約していたボルソナロ大統領が誕生し、期待が高まったが、結局、大使館ではなく、貿易事務所をエルサレムに設立するにとどまった。
このほか、ルーマニア、ハンガリー、チェコなども可能性を匂わせてはいるが、大使館移動にまでは至らないとみられている。
www.timesofisrael.com/year-after-us-embassy-move-jerusalem-diplomatic-influx-fails-to-materialize/
3)ラマダン中のナクバの日
14日は、パレスチナ人の「ナクバの日」である。 この日、パレスチナ人たちは、イスラエルが建国し、”災難”(ナクバ)が降りかかったことを覚え、各地で、パレスチナ人によるデモ活動が行われる。
16日深夜すぎ、ガザでは1万人がデモを開始して、イスラエル軍と衝突しているとのニュースが入り始めた。
パレスチナ人たちは、まもなく公表される予定の、トランプ大統領の和平案にも反発している。13日、ガザでは、国連事務所前でも、デモが行われた。
www.jpost.com/Israel-News/Palestinians-to-mark-Nakba-Day-with-protests-strikes-589685
なお、イスラム教徒は、5月6日からラマダン月に入っている。イスラム過激思想に火がつく可能性もあるが、逆に断食で、抑止される可能性もあり、予想は難しい・・・
*5月9日:ラマダン最初の金曜:神殿の丘に18万人
イスラム教のラマダンは5月6日に始まり、6月4日までとなっている。この間、イスラム教徒は、日中断食してアラーの前に出る。特に金曜の礼拝日には、多くのイスラム教徒がエルサレムの神殿の丘(ハラム・アッシャリフ)のアル・アクサモスクで祈りを捧げることになっている。
イスラエルは、治安維持を強化しながらも、ラマダンに敬意を表し、西岸地区などからパレスチナ人がエルサレムに入る制限を緩めている。このため、今年は、昨年より50%増えて、18万人とみられる。(Times of Israelによる:数字はメディアによって格差あり)
幸い、なんの衝突もなくこの日を終えることができた。
エルサレムの治安維持様子、神殿の丘の礼拝の様子のクリップ含むサイト
:https://www.timesofisrael.com/180000-muslims-pray-peacefully-at-al-aqsa-mosque-on-first-friday-of-ramadan/
<石のひとりごと>
超華やかなユーロビジョン、アメリカ大使館移動1周年、一方で、貧困と暴力にあえぐガザ、ロケット弾、ラマダンで神殿の丘に集結するイスラム教徒・・・これらすべてが一斉に同時進行している。
イスラエルは、ユダヤ人という単一民族の国と一言で言える国ではなく、非常に多様なものを含む国である。にもかかわらず、民主国家として繁栄しているという点は、まさに世界に類をみない超ユニークな国であるということをわかっていただければと思う。
聖書は、そのイスラエルを中心に描かれているわけで、結局聖書は、神と人類の壮絶なやりとりが描かれている書物であり、それは過去にとどまらず、今に続き、かつ将来にも続いていくものであるということである。
まさに、イスラエルという国の存在そのものが、聖書の神が実在することを証している。