目次
3月17日:ウクライナ情勢まとめ
1)ロシア軍が南部地域支配下に
ロシア軍によるウクライナへの侵攻は、予想以上の反発を受けているせいか、3週間目に入ってもまだ終わることなく続けられている。首都キエフへの攻撃は、長距離ミサイルなどが使われて、民間施設への攻撃も激化しているが、まだ制圧までには至っていない。
この戦闘で死亡するロシア兵がおおいせいか、ロシアは、外国人傭兵を募っているのだが、よりによってシリア人がすでに4万人が応募したとのことである。ウクライナの泥沼戦争が、シリア内戦のようになってしまう可能性が見え隠れしている。
クリミア半島を拠点に南部地域では、ロシアに制圧された地域が拡大している。ロシア軍に長く包囲されているマリウポリでは、病院が占拠され、400人が人質になった他、市民らが避難場所として使っていた劇場はミサイル攻撃を受け、数百人が死亡した可能性が懸念されている。ロシアはこれをウクライナ人によるものと言っている。
www.nikkei.com/article/DGXZQOGR170700X10C22A3000000/
そのマリウポリ(40万人)では、これまでに、少なくとも市民2300人が死亡。兵糧攻めで、食糧、水、電力もない。おそらく最も悲惨な状況に置かれていると思われるが、昨日、ようやく2万人が、人道回廊を通じて町から脱出できたとゼレンスキー大統領が報告している。
16日、ゼレンスキー大統領は、イギリス、カナダに続いて、アメリカの議会にむけた演オンラインでの演説を行った。ゼレンスキー大統領は、ここでも飛行禁止区域の要請を繰り返し、それができないなら、対空能力を強化する武器を供給してほしいと訴えた。
同じ日、ポーランド、スロバニア、チェコの首相が、キエフでゼレンスキー大統領を訪問。ウクライナはEUに入るべきだとか、NATOも関係しての平和維持軍を駐留させるべきといった過激ともとれる発言をした。
またこの日、バイデン大統領が、プーチン大統領を初めて、「戦争犯罪者」と呼ぶ声明を出した。バイデン大統領は、24日にブリュッセルで行われる、NATO首脳会議に出席する予定で、大きな構図としては、いよいよ、専制主義ロシアと、民主主義世界との対立という様相になりつつあるようである。
2)ウクライナとロシアが歩み寄りも?:ベネット首相の仲介か
こうした中、ウクライナ、ロシアの代表団による交渉が再開され、今も続けられている。その背景には、どうもベネット首相の水面下での電話交渉が関係しているもようである。イスラエルは交渉のプロである。まったく折り合わない相手でもあっても、どこか一点でも、合意できる点を探して、まずはそこから始めていく。相手のウインを提示しながら、こちらもウインを得ていくという形である。
今のところ、ロシアは、まだウクライナがNATOに加わらないことへの法的保証とともに、完全非武装を求めるという、ウクライナが受け入れ不可能な要求から引く様子はない。一方、ウクライナも、ロシアに対し、ウクライナからの即時撤退を求めるなど、両者の溝はかなり低い。
しかし、報道によると、ゼレンスキー大統領は、これまでからもNATOへの加盟が現実的ではないことを悟ったと言ってように、今は、戦力を維持したままで、NATOに加盟しない中立国という形で、ロシアが受け入れることができるかどうかを模索しているとのこと。今交渉可能として浮上しているのが、この一点ということである。
イスラエルのメディアは、今後、ゼレンスキー大統領と、プーチン大統領の直接会談がエルサレムで開催されるということも、まんざらあり得ないことでもなくなってきたとも伝えている。しかし、バイデン大統領が、「戦犯」と呼んだということは、もはや、首脳会談というレベルではないといういうことではないだろうか。
www.jpost.com/breaking-news/article-701527
エルサレムポストは、これほどまでに、手に血をつけてしまい、世界中から犯罪者のように言われているプーチン大統領と親しく電話での話を続けることに、懸念を表明している。
経済制裁を法的に発動できないイスラエルの方針
西側諸国がいっせいにロシアへの経済制裁を行う中、イスラエルは、法的に、ロシアへの経済制裁を発動することができないという。ユダヤ人ビジネスは、ウクライナだけでなく、ロシアでも展開しているし、文字通り世界的に存在しているからであろう。
しかし、ロシアとの関係を維持し続けていることは、ロシアが今、一般庶民をも殺戮している以上、イスラエルが西側と足並みを揃えないことは、イスラエルの立場をも危うくする。イスラエルの方針は以下の通りである。
1)経済制裁はないが抜け道にならないようにする:ラピード外相
ラピード外相は、先にルーマニアの国境を視察した後、14日、スロバキアを訪問。コルコック外相を会談し、「イスラエルが、ロシアが経済制裁の抜け道になることはない。」と宣言。外務省が、イスラエル銀行、経済省、空港やエネルギー関連とも協力していると伝え、イスラエルは、ロシアのウクライナへの侵攻を非難すると明言した。
www.timesofisrael.com/lapid-vows-israel-wont-be-a-route-to-bypass-sanctions-on-russia/
この背景には、ロシアへの厳しい経済制裁発動中、ロシアの財閥オリガルヒの一人でイスラエル国籍でもある、ローマン・アブラモービッツ氏が、13日、イスラエルに到着していたことや、これに先立つ10日ほどの間に、その他のオリガルヒたちが乗っていたとみられるプライベートの飛行機14機が、イスラエルに到着していたことが考えられる。メディアでは、イスラエルが制裁の抜け道になっているのではないかとの疑惑を指摘するものもあった。
www.businessinsider.com/russia-private-jets-oligarchs-sanctions-israel-2022-3
アブラモービッツ氏は、イスラエルに24時間滞在しただけで、すぐにモスクワに戻ったことが確認されている。ラピード外相のすばやい外交対策であった。
2)ウクライナ国内の野戦病院に2100万シェける(約764億円)承認
イスラエルは、すでにウクライナ西部(おそらくリビウ?)に高度な野戦病院の建設をはじめていたが、14日、ベネット政権が、これを正式に承認。2100万シェける(約764億円)を計上することで承認を出した。
活動はイスラエル軍ではなく、あくまでも民間によるものとし、活動期間は1ヶ月とされている。このプロジェクトは、イスラエル初の女性首相で、ウクライナ出身だったゴルダ・メイヤー氏にちなんで、「コハブ・メイヤー(メイヤーの星)」と名付けられた。
チームは、医療機器だけでなく、水の浄水装置なども持参する。しかし、ウクライナ政府は、イスラエルには、もっと防衛に役立つ軍事的支援を期待していたので、ありがたい中にも、不満も残るようである。ゼレンスキー大統領は、20日(日)、イスラエルの国会に向けて、アピールする予定になっている。
www.timesofisrael.com/plan-to-establish-field-hospital-in-western-ukraine-approved-by-cabinet/