クリミア半島ロシア空軍基地で爆発:ウクライナ南部で戦火拡大懸念? 2022.8.11

クリミア半島で攻撃を受けたロシア軍の空軍施設 BBC https://www.bbc.com/news/world-europe-62500560

2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻を開始してから、もう半年になろうとしているが、解決への糸口は見えず、むしろ悪化にむかっているようにもみえる。現状をまとめる。

ロシア侵攻半年近く:ウクライナ情勢まとめ

1)東南部で進むロシア支配

ウクライナ軍は、西側の支援を受けつつ、首都キーウ周辺と西部の支配は継続できているが、東部はルハンスク州、ドネツク州、南部ではザポリージャ州、ヘリソン州が広範囲にロシア軍の支配下に入り、多くのウクライナ人がロシアへ移送され、残った人々の間では、住民投票を通して、ロシア化が進んでいる。

ウクライナ軍は、ハリコフ州や、ヘリソン州では、ドニエプル川で橋を破壊して、ロシア軍の輸送路を断つなど奮闘を続けているが、全体的に見ると、ロシア軍がやはり優勢だ。

2)欧州最大ザポリージャ原発が危ない!?

こうした中、5―7日にかけて、ロシア軍が占領している南部、ザポリージャ原発周辺への攻撃が続き、ロシア軍は、ロシアは、ウクライナが攻撃していると主張。ウクライナはその逆を訴えている。付近のウクライナの町では、ロシア軍の砲撃を受けて市民13人が犠牲になっており、ロシアが、原発を盾にしているとの分析もある。(ドネツク州でも市民6人が死亡)

www3.nhk.or.jp/news/html/20220811/k10013765131000.html

欧州最大の原発周辺での戦闘は非常に危険である。ロシアは、緊急に安保理を開催するよう要請を出した。これに対し、G’(主要7カ国)は、ザポリージャ原発をウクライナに変換するよう、ロシアに求めたとのこと。

3)クリミア半島で爆発・ロシアの反撃懸念

また、最新の情報では、9日、ロシアが、2014年から占領するクリミア半島のロシア軍基地でで爆発が複数発起こり、BBCによると、1人死亡している。

以下は爆発があった際、近くのビーチにいた人々の反応

ロシアはクリミア半島への攻撃は、いわゆるレッドライン(許容限界ライン)としており、今回の爆発については、今の所、火薬庫の爆発だなどと言い、ウクライナを非難はしていない。ウクライナもまた、攻撃したとは言っていない。

しかし、衛生写真からすると、少なくとも航空機8機が破壊され、大きなクレーターができるなどの被害が出ており、単なる火薬庫の爆発ではないことは明らかである。

ゼレンスキー大統領は、ロシアはクリミア半島をウクライナに返還すべきだと訴えている。今後、ロシアが、オデーサなど付近への攻撃を開始するのではないかとの懸念が広がっている。

www.bbc.com/japanese/62501080

4)ウクライナから穀物搬送始まる

こうした中ではあるが、オデーサなどウクライナ南部からの穀物の海路搬送が始まっている。

ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから、黒海を通じて世界に搬出されていた小麦などの食料の運搬が途絶え、アフリカなどでは、食糧危機に陥る国(数百万人)が出はじめている。これを受けて、国連とトルコが仲介し、7月末、ウクライナとロシア、国連とトルコの間で、食料の輸送船を攻撃しないなどの合意に調印(120日間有効)。

8月1日、ウクライナのオデーサ港からとうもろこし2万6000トンを乗せた輸送船が、開戦後はじめて、レバノンの向けて出発した。これについては、受け入れ側にキャンセルが出るなど混乱もあったが、9日にはその一部とみられる1万2000トンが、イスタンブールに到着。

9日には、さらにウクライナから、トウモロコシ6万4720トンを乗せた輸送船が韓国へ、ひまわりかす5300トンがイスタンブールに向けて出発したとのこと。

jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-grain-ships-idJPKBN2PF0H6

また、ヨーロッパへのエネルギー供給も再開の見通しとなり、ロシアが世界への締め付けを弱めることで、徹底抗戦を続けるゼレンスキー政権への非難に、世界の目を与えようとするかのような動きにもみえる。

ウクライナとロシアからのユダヤ人移住数値:イスラエル中央統計局

7月6日ベングリオン空港でウクライナからの移民を迎えるタマノ・シャタ移住省 Times of Israel記事より

Times of Israelが、イスラエルの中央統計局からのデータから、正確なユダヤ人移住に関する数値を報じていた。

それによると、侵攻が始まった2月24日から、7月31日までの5ヶ月の間に、到着した新移民(以前から移民手続きを終えていてこの時期に到着した人は含まず)は、ウクライナからが1万2175人。ロシアからは、1万8891人と、ロシアからの移民が上回っていた。

ウクライナからの移住は、兵役義務がある男性が出国できなかったこと受けて、18-60歳では、73.9%が女性であった。なお、これらの数字には、ユダヤ人ではなく、イスラエルへの移住の権利がないとされたウクライナ難民は含まれていない。

移住者であれば、到着時に個人には6000シェケル、夫婦は1万1000シェケル、家族には1万5000シェケルが支給される。このほか、移住省からは、すべての移住者に補償されている支援金として、到着後半年の間に、個人には1万9000シェケル(約80万円)、家族には、3万6000シェケルが支給されることになる。

さらには、ロシア、ウクライナ、ベラルーシからの移住者には、家賃補助も出る。4月時点で、新移住者が最も多く済んでいるのは、ネタニヤ。続いてエルサレム、テルアビブ、ハイファとなっている。

www.timesofisrael.com/amid-war-israel-sees-threefold-increase-in-immigration-from-russia-and-ukraine/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。