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ベネット首相の娘がコロナ陽性
26日、ベネット首相の娘が、コロナ陽性と判明。オミクロン株かどうかの検査が行われている。ベネット首相自身は、この時の検査で陰性であった。今後、もし娘がオミクロン株であった場合、ベネット首相は、少なくとも7日間は、自宅で隔離しなければならない。
しかし、野党、特にリクードが、感染しても国会に出席するシステムがあるのに来ないのはおかしいと強く主張したため、28日、ベネット首相は、国会に来て、2階の隔離セクションから答弁を行なっている。
イスラエルの感染状況:すでに60%はオミクロン株
イスラエルでも感染者数は急激に増え、ここ1週間の1日の感染者は平均1600人。このうち、約半数の850人はオミクロン株であることから、すでに感染の60%は、オミクロン株に置き換わっていることになる。
オミクロン株は、感染拡大のスピードが顕著で、27日は、1日で、それまでの1000人代から急に3000人以上と劇的に増加していた。ワイツマン研究所のIT生物学のエラン・シーガル博士は、まもなく、実効再生産率(R値)は、2.6にまで上がると予測する。(R=1以下で減少に転じる)
しかし、これまでの流れから、オミクロン株から重症化したり、死亡する人の率はかなり低いということが明らかになってきている。イスラエルの重症者数は、すっと85人前後で変わっていないのである。
とはいえ、感染者が激増すると、重症化率が低くても、分母が大きくなるので、結果的には病院を圧迫するような患者数になるとの懸念もある。
一方で、濃厚接触者を7日間隔離のシステムでは、急速に感染が拡大する中、すでに全国民の1%近く(9万人以上)が、隔離に入っている。このままであれば、隔離する人が増えすぎて、実質的にが、国内がロックダウン状態になるとの懸念が出されている。アメリカのCDCは、すでに隔離期間を7日から5日に切り替えたところである。(感染が発生するのは症状が出る2日前と3日後までであることがわかったから)
ベネット首相も今、隔離日数を減らすか何かの対策を迫られているのだが、しかし、今回は、オミクロン株の本質がまだ見えにくいため、決断がしにくいと語っている。
記憶に新しいところだが、ベネット首相は前の波の際、ロックダウンをしないことを英断した首相なので、規制緩和を恐れているわけではないとは本人も言っているところである。おそらくは、“どうも平安がない”ということなのだろう。
結果的に、どうするかだが、やはり鍵はワクチンだとベネット首相は国民に懇願する。イスラエルでの感染、重症化している人の87%は、ワクチンをしていない人である。アメリカやイギリスのデータでは、重症化しているオミクロン患者の4%は、ワクチンをしていない子供というデータも出ている。
イスラエルでは現時点で、子供も含め、人口の31%(大人のワクチン拒否は70万人)が、ワクチン接種を受けていない。ベネット首相は、今すすめている5-11歳の子供へのワクチンは、親の決断に任せるとして、義務付けはしていないが、ぜひ接種を検討してほしいと訴えた。(現時点では、5歳児の10%、6-11歳の17%が接種済み)
ただ、この時点では、まだ義務付けや罰金の話までにはなっていない。
www.jpost.com/health-and-wellness/coronavirus/article-689941
www.timesofisrael.com/not-ruling-out-lockdown-pm-warns-storm-of-contagion-moments-away/
空の便は大混乱:入国規制緩和予定
空の玄関の閉鎖については、イスラエル経済にとっては、相当に大きいダメージになる。このクリスマス(24日と25日)、全世界でキャンセルになった便が、4700便にのぼっていたことがわかった。また、乗客や乗組員の検査での混乱で、遅れが生じた便は、1万3000便以上と、かなりの混乱であったようである。
www.timesofisrael.com/over-3500-christmastime-flights-canceled-worldwide-as-omicron-hinders-travel/
イスラエルでも入国を禁止する国を、アメリカなどさらに増やした。ところが、緊急特別許可の申請は一気に2万4000件にのぼったとのことであった。それに対応したスタッフはわずか20人で、様々な手違いや、間違い、技術的な問題など、かなりの混乱が発生していたようである。
こうした中、イスラエル保健省は、赤信号の渡航禁止国を現在の69カ国から15カ国にまで減らすことを推奨し、30日から適応されるみこみとなっている。理由は、オミクロン株はすでに市中感染になっており、感染拡大のスピードはいずれにしてももはや止められなくなっている。ならば、空の便を閉鎖することの意味がないということである。
しかし、感染拡大があまりにもひどい国、アメリカ、イギリス、カナダ。フランス、UAE、ナイジェリア、ハンガリー、スペイン、ポルトガル、トルコと、あらたにメキシコが加わって、渡航禁止の方針は続行される。
石のひとりごと
コロナ問題。時間を追うごとに混乱が増している。これまで混乱なく回っていたことが、すべてバランスを崩していくような感じである。
記事を追いかけていると、楽観的な記事、悲観的な記事、それぞれが混在しており、いったいどう判断したらいいのかわからなくなってくる。確かにオミクロン株は、重症化率が低いので、もしかしたら、本当に改善にむかっていくかもしれない。しかし、そうとも言えない可能性もまだ残されている。
また、もはや、他国の情勢が参考にならないほどに、国別の状況や条件が変わっているということも、覚えなければならないだろう。
そうした中、ベネット首相は、無論、データは重要視しながらも、いわゆる勘なのか、イスラエルにはこれから大嵐が来ると国民に警告している。これが間違いであってほしいものだが、どうだろうか。
筆者の個人的な感じであるが、ベネット首相は、自分がポジションにとどまるということを最優先していないので、主が、不思議に用いているような気もする。ということは、彼の勘は、あなどれないのかもしれない。とはいえ、それが、日本にも関係するかといえば、そうとも言えないだろう。
まさに、明日のことは神のみが知る、を地でいくような時代に入ったようである。