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ベネット政権発閣議
20日、ベネット新政権が、初の閣議を行った。これまでの動きを見ていると、首相はベネット氏ではあるが、そのすぐ右側にはラピード氏、また、ガンツ国防相がバランスよく動いているところが、ワンマンに近かった前のネタニヤフ首相時代とは違っているところである。
1)36の国と組織の大使を正式承認
まずは、この半年以上、正式な形ではないままであった36の国、組織に派遣されている大使たちを正式に承認するところから始めた。
2)メロン山大惨事の調査委員会設立
また、今年4月に発生したメロン山での将棋倒し(45人死亡)に関する調査を、委員会を立ち上げて、本格的に開始すると発表した。予算も600万シェケル(約2億円)を計上する。
この問題については、人災であることは明らかであるが、ネタニヤフ前首相は、超正統派政党に連立を支えられていたためか、詳しい調査や責任の追求がほとんどなされないままに置かれていた。
調査の対象になる人の中には、イベントを承認した、オハナ国内前治安相、アリエ・デリ前国務相と、施設管理が不十分として、リッツマン住宅相が含まれている。後者2人は、超正統派政党の政治家である。
www.timesofisrael.com/meron-probe-to-target-politicians-police-officials-religious-figures-report/
3)イラン問題での論議・発言
これまで蓋をしていたとみられる項目に動きがみられている。一つは、イラン問題について、ネタニヤフ前首相時代は、イスラエルは、この問題には関与しないとの立場を強調するため、この問題に関する表立った協議を規制していたのだが、ベネット首相はこれを撤廃したとのこと。
ネタニヤフ前首相への取り扱い
イスラエルでは、引き継ぎ期間というものが、まったくないとみえ、6月13日にベネット新政権が就任すると、ただちに、ベネット氏が首相府の執務室に入り、翌週の日曜には、閣議の首相席にベネット氏が座る形になっている。12年以上も、首相であったネタニヤフ首相は今、どうなっているのか。
1)首相官邸をめぐる問題
首相は、エルサレムにある首相官邸で生活することになっているが、さすがに12年も住んでいたネタニヤフ氏家族が、そんなにすぐに出ていけるものではないだろう。
ベネット首相になってもなかなかこの官邸から出る様子がなく、ベネット新首相は、今もまだヘルツェリアにある自宅からエルサレムに通っている状態である。
首相を交代した後、首相官邸に飲み物6000シェケル(約20万円)分が搬入されたが、その支払いが官邸付け(つまりは税金)になるのはおかしいなどと、シビアな意見も出たりした。
最終的に、ネタニヤフ氏側は、7月10日までに官邸を出ることで合意したとのこと。
ネタニヤフ氏は、カイザリアに豪邸の自宅を持っているが、エルサレム市内に別のアパートがあるという。今後、数ヶ月はカイザリアに退き、その後はエルサレムのアパートに移って、筆頭野党としての働きを継続するとのことである。
2)首相府離脱前に違法に書類処分か? :ガンツ国防相が潜水艦関連汚職問題追及を指示
ネタニヤフ首相は、首相執務室から退去するにあたり、スタッフに書類をシュレッダーで処分するように指示していたと報じられた。どの書類がどの程度、処分されたのかは不明。リクードはこれを否定している。
新政府で国会の法律関係委員会のカリブ担当(労働党)は、もしこれが真実であれば、違法であるだけでなく、通常の移行手続きを逸脱する行為にあたるとの考えを表明した。
また、処分された書類が、現在審議中のネタニヤフ氏の汚職・背信問題、特にC3000(潜水艦購入に関する問題)に関連する可能性があると指摘されたことから、ガンツ国防相は、あらたにこの問題を調査するよう指示した。C3000は、今のところ、ネタニヤフ氏は直接関与していないとされていた問題である。
石のひとりごと
イスラエルは変化が非常に早い。昨日までネタニヤフ首相が、メディアのほとんどに現れていたのに、今日は、その姿も、その声もほとんど聞こえないという感じである。
12年も首相として、ほぼワンマンに国を動かし、非難はあったが、王として持ち上げられ続けてきたネタニヤフ氏(氏と書くのもなにやら妙な感じ)は、これをどう受け入れていくのだろうかか。実に妙な感じだろう。
家族も同様である。もう首相の家族という立場ではなくなったのである。新政府が落ち着けば、ネタニヤフ前首相の功績の数々も思い出されてくるだろうか。
まあそんなことで、つぶれてしまうようなネタニヤフ氏ではないので、これまでの功績の経緯を表しつつ、これからの出方に注目したい。