プリムを祝う南部の子どもたち 2014.3.14

緊迫しているガザ情勢。昨日イスラム聖戦が、エジプトの仲介で”停戦”に応じたとのニュースが入ったのが昨日午後2時。その後も17発のロケット弾が南部都市に向かって発射された。

うち7発はイスラエル領内に着弾。迎撃ミサイルが2発撃墜。8発はガザ地区内部のパレスチナ人居住区に着弾している。

イスラエル側の被害はなかったが、ガザ地区のパレスチナ人の家が被害を受けたとガザからの報告がある。(以上、イスラエル軍からのレポート)

イスラエル空軍は、昨夜もガザ地区内7個所への空爆を行った。ガザ地区からも負傷者や物的被害の報告は、今のところない。

攻撃2夜目が明けた14日朝、イスラエルのテレビのニュースは、”静かな朝”と伝え、スデロットの小学校で予定通り行われているプリムの様子を報じた。

「ロケット弾には負けない。」とスデロットの人々。いろいろなコスチュームを身につけて楽しそうに登校する子どもたち、教師たち。リポーターの顔にも笑顔があった。

<今回の紛争の背景にあるもの:イラン?>

今回、双方共に物的被害があまりない。双方とも空き地などを狙って攻撃していたのではないかとも考えられるほどである。ではそもそもなぜイスラム聖戦は今、イスラエルを攻撃してきたのか。

様々な分析があるが、イスラエルが先週、イランの武器密輸船を拿捕したことと関係があるという見方がある。

これらの武器の届け先はハマスではなく、イスラム聖戦だったとみられる。(ガザの支配者は一応ハマスだが、最近は求心力を失っており、イスラム聖戦など他の過激派グループを押さえられなくなっている。)

ハマスは、母体がエジプト発祥のムスリム同胞団であることから、これまでエジプトに頼って、イランには従わないスタンスをとってきた。そのため、イランはハマスではなく、イランに忠実なイスラム聖戦を支援するようになっていた。

したがって、今回のイスラエルへの攻撃に背景には、イラン船拿捕に関連して、①イランとイスラム聖戦のイスラエルへの報復、もしくは②イスラエルの報復をあてこんだハマスへの処罰、などが考えられている。

しかし、背景はどうあれ、ガザもイスラエルもこれ以上のエスカレートは好ましくない。今回もちょっとはでにやってまた停戦。またエスカレートして、また停戦。こうしたいたちごっこの一つに終わる可能性が高い。

<エジプトに見捨てられたハマス>

ところで、ハマスはこれまでエジプトに頼ってきたのだが、ムルシ前大統領が失脚し、軍が中心の暫定政権になってからは、エジプトからも完全に見捨てられた状態になっている。

今回の停戦交渉も、エジプトはガザの支配者であるハマスを通り越して、イスラム聖戦に直接交渉を行っていたという。

またエジプトは先週にもガザの補給路であった地下トンネル1370本を破壊。ラファのエジプトとガザの国境も閉鎖しているため、エジプトからの補給はほとんどなくなっている。海外からの支援金も滞り、ハマスはメンバーに給料を払えなくなっている。

ガザに出入りする記者によると、ガザの人々の向きの様子に大きな変わりはないが、車を売ったという人が増えているという。生活が徐々に悪化していることは確かだろうとのことだった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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