ファイザーからの追加納入決定で残存ワクチンも利用再開:コロナ対策その後 2021.7.14

Army Spc. Angel Laureano holds a vial of the COVID-19 vaccine, Walter Reed National Military Medical Center, Bethesda, Md., Dec. 14, 2020. (DoD photo by Lisa Ferdinando)

イスラエルでは、月曜、1日のコロナ感染者数が700人を超えた。有症者は4873人 しかし、重症者は今も、45人と、さほど増えていないことから、コロナ閣議は、①子供達などへのワクチン接種を急ぎ、②国内感染対策の一部強化を行いながら、③帰国者など感染疑いのある人の隔離期間を、現在の10-14日から、7日間に削減することで合意した。

ワクチン関連

1)ファイザーワクチン8月1日に追加搬入で接種続行

イスラエルでは、7月末で期限切れとなるワクチンが140万回分あった。このうち70万回分は韓国に使ってもらったが、まだ70万回分残っていた。しかし7月末が期限切れであったため、7月10日以降、接種ができなくなっていた。

しかしベネット首相がファイザーCEOと交渉。8月1日に追加ワクチンの納入に合意を得ることができた。このため、12日から、ワクチンの接種を再開している。

www.timesofisrael.com/with-new-pfizer-deal-israel-to-restart-vaccinations-after-24-hour-break/

イスラエルでは、ワクチン接種を終えた人は一回目が573万人。二回目が520万人。現地メディアによると、12-15歳で、ワクチンの接種を受けた人は、29%で、コロナに感染経験がある人が11%いるので、この世代でコロナの抗体を持つ人は40%である。

www.timesofisrael.com/saturday-is-last-day-for-teens-to-get-first-dose-of-current-batch-of-vaccines/

2)ワクチン3回目開始開始:免疫不全患者対象

ファイザーは、イスラエルからのデータなどから、ワクチン2回目接種以降6-12ヶ月ぐらいで、免疫力が低下するとして、3回目の接種の承認をFDA(アメリカ食品医薬品局)に打診している。一方、イスラエルは、世界で最初として、12日、3回目の接種に踏み切った。

対象者は、なんらかの疾病やその治療から免疫不全と見られる人である。保健省は、全国の医療機関に対し、必要と思われる患者に3回目のワクチン接種ウィ行っても良いとの通達を行なった。

これを受けて、シェバ医療センターは、心臓移植手術を受けた患者10人ほどに、その通達を行なった。(接種はあくまでも本人の希望)テルアビブ大学のワクチン専門家、ゲルショニ教授は、この動きを歓迎するとともに、だからといって、2回では不足と考える必要はないと語っている。

www.timesofisrael.com/in-world-first-covid-boosters-rolled-out-for-some-at-risk-israelis/

3回目については、WHOが、まだ1回もワクチンをできないでいる貧困国があるのだから、3回目までしないで、先にそういう国にまわしてほしいと言っている。イスラエルは、ともかくも自国民の命が最優先なので、だれにどう非難されよううが、そういう外部の声に影響されることはないだろう。

空港水際対策

2)空港での水際対策:隔離は7日へ削減

これからは、イスラエルへの海外からの帰国者で、ワクチンを受けていない人、コロナ感染の経験がない人、また国内で濃厚接触者とされた人は、7日間隔離し、最終日にPCR検査を受けて陰性であれば、外へ出ることができる。違反した場合の罰金は5000シェケル(約15万円)

なお、ワクチンを受けている人の場合の帰国時の隔離は、空港で受けたPCRの結果が出るまでの24時間は隔離とされている。

また、イスラエルが感染拡大中の赤信号と定めた国へ行って帰国した人には、罰金として5000シェケル(約15万円)を課すことが国会で承認された。それらの国は、ウズベキスタン、アルゼンチン、ベラルーシ、ブラジル、南アフリカ、インド、メキシコ、ロシア

この規定は、7月25日までで、随時検討の対象となる。

www.timesofisrael.com/knesset-panel-approves-fines-for-israelis-trying-to-visit-banned-covid-hotspots/

*ラピード外相が隔離へ

今週、ブリュッセルでのEU外相会議に出席していたラピード外相の側近の一人がコロナ陽性と判明。ラピード外相とその他のチームは皆陰性であったが、ラピード外相は、帰国後、隔離に入っている。

3)外国人個人ツアー客の入国は9月へ延期予定

外国人の個人の入国は、最初5月であったところ、どんどん延期され、今はおそらく9月1日まで延期されるとの見通しである。その際は、ワクチン接種を終えている人はPCR検査だけであるが、“イスラエルが認識する”ワクチン以外、中国製やロシア製などの場合は、血液検査で抗体の検査を行う見込みである。空港では、そのための施設を建設中とのこと。

www.timesofisrael.com/tourism-minister-wants-visitors-to-be-treated-differently-by-their-vaccine-type/

国内感染予防対策

4)国内感染対策一部強化

しかし、国内での感染予防対策は、若干強化される。たとえば100人を超えるイベントへの入場の際には、ワクチン接種証明のグリーンパスか、PCR陰性証明(48時間以内)を提示してから入場する。まだワクチンを受けていない人や、感染経験のない人の場合は、外で簡易感染検査を受けて陰性であれば入場できる。

ただし、100人以上が予想されても、公共交通機関や、デパートなどへの入場には、こうした規制は課さないとのこと。

www.timesofisrael.com/cabinet-okays-cutting-virus-quarantine-to-seven-days/

石のひとりごと:科学的・実質的に先を見るイスラエルの判断力

東京大学先端科学技術研究センターの池内恵教授は、中東情勢にも詳しい学者である。池内教授は、日経新聞で以下のようにコメントしている。

コロナ対策で常に一歩先を行っているイスラエルの動きは参考になる。判断が早い、実際にやってみるのが早いだけでなく、重要なのは、何が目的か、そのための手段は何か、を局面局面で専門家が判断して、状況認識を更新し、対策を切り替えていく、その際に社会として意思決定をしていく。

この記事ではまだ触れられていないが、イスラエルでは感染の再拡大に対し、ワクチン接種者が重症化しない傾向が強いとして、通常のウイルスと同様に扱って社会経済を正常化するかどうか、専門家の議論が公的に行われている。後追いではなく自分の頭で考えて決めて国際社会で主導権を握っていくには何が必要か、イスラエルの事例は参考になる。

www.nikkei.com/article/DGXZQOGR12CX90S1A710C2000000/

そうなのだ。イスラエルの判断は、これに限らず参考になる。イスラエルは危機には敏感なので、本物の危機かそうでないかは、かなり着実に読み取っている。もし本物であるなら大胆に動くし、そうでないなら、さっさと手を引いている。

新型コロナパンデミックの時、イスラエルは、かなり早くから対処に着手した。だからこれはやばいだろうと思った。その通りになった。無論、100%正解ではないので、時に失敗もする。しかし、それが、跡を追う世界の反面教師にもなるのだ。

池内教授も見ているように、イスラエルの動きは、先を読むのにかなり参考になると思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。