バイデン大統領がイスラエルの防衛協力表明 :ペルシャ湾と地中海東部に米空母など12隻以上配備 2024.8.2

Amos Ben-Gershom (GPO)

アメリカはイスラエルの防衛に立つ:空母などペルシャ湾と地中海東部へ派遣

レバノンとイランでの暗殺事件から急速に緊張が高まっている中東情勢。アメリカも、少し前から、イギリス軍が協力する形で、紅海で国際船舶への攻撃を行っているイエメンのフーシ派を(イラン傀儡)攻撃しており、他人事ではない。

ネタニヤフ首相は、1日、電話でバイデン大統領と会談。昨日、オースティン米国防相が、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると明言したのに続いて、バイデン大統領も同じ方針であることを確認した。

この電話会談には、次期民主党大統領候補のカマラ・ハリス氏も参加していた。

会談後、ペンタゴンが、具体的な内容は明らかにしなかったが、アメリカは地域の米軍を増強していると発表した。

www.timesofisrael.com/liveblog-august-02-2024/

(Photo: SONG Kyung-Seok / POOL / AFP)

また、これに先立ち、ペンタゴン(アメリカ国防省)が、ワシントンポストに語ったところによると、中東での2件の暗殺事件の後、ペルシャ湾と地中海東部に、空母セオドール・ルーズベルトと戦艦12隻以上を派遣。

その中には水陸両用戦闘部隊と海兵隊、水兵4000人規模の部隊が乗艦しているとのこと。

www.ynetnews.com/article/hjys11a00t0

7月のネタニヤフ首相初訪米・上下院議会で演説

Amos Ben-Gershom (GPO)

今の大きな動きの約1週間前の23日から28日、ネタニヤフ首相は、今期就任後初めて、ワシントンを訪問。

バイデン大統領と会談したほか、アメリカ上下院議会で演説を行った。

ちょうどバイデン大統領が、コロナ感染の最中で、次期選挙出馬を辞退することを決めた直後である。

バイデン大統領は、ガザでの戦闘で、多くのガザ市民が死亡していることに懸念を表明し、イスラエルへの武器支援を遅らせたこともあり、ネタニヤフ首相が公にこれに抗議する場面もあった。このため、ネタニヤフ首相の訪米がなかなか実現しなかったのであった。

ネタニヤフ首相は、24日上院下院合同議会で演説。25日にバイデン大統領と会談した。また、カマラ・ハリス副大統領、トランプ前大統領とも会談した。

www.timesofisrael.com/netanyahu-departs-for-washington-amid-anger-at-home-and-turmoil-in-the-us/

ネタニヤフ首相は、27日、マジダル・シャムスへのヒズビラの攻撃を受けて、数時間早くにアメリカを離れた。

*アメリカ議会での演説(7月25日):イランはイスラエルとアメリカに共通する敵である

議会での演説の際、ネタニヤフ首相は、人質だったノア・アルガマニさんや、人質家族、戦争開始当初に戦った兵士などを同伴し、10月7日の壮絶さを訴えた。そのハマスやヒズボラ、フーシ派の背後にいるイランが根源にあると強調した。

これに伴い、アメリカの有名大学では、反イスラエル運動が発生したが、その運動を資金支援しているのがイランだったと述べた。

国内でスカーフを巻かない女性を処刑するイランが、アメリカでは、ゲイの人々を奨励してイスラエルを非難させていると嫌味も言っていた。

また国際司法裁判所がイスラエルがジェノサイドを行っているとか、ガザに飢餓をもたらしていると訴えていることについて、これが全く事実ではないと述べた。

食料を乗せたトラックはこれまでに4万台入っており。ガザ人口で割ると一人あたり、1日3000カロリーになるとのこと。

またバイデン大統領は、イスラエルが、混雑するガザのラファへ侵攻することを非常に懸念したが、蓋を開けてみると、ハマス戦闘員が1203人死亡する中、ガザ一般市民は、事故で死亡した24人以外、ゼロだった。これはイスラエル軍が市民を巻き添えにしないよう、最善を尽くしたからだと訴えた。

なので、イスラエルのジェノサイドや、飢餓をもたらしているというのは、イランからのプロパガンダでであると述べた。

ネタニヤフ首相は、ハマスが人質を直ちに全員返還すれば、戦争はすぐにも終わる。しかし、そうはなっていない。

今も戦闘を続けるイスラエルの目標は、ガザとイスラエルが共存するために、非武装化、非過激化である。それを1日でも早く終わらせて戦火を拡大させないためにも、アメリカはイスラエルへの軍事支援を継続してもらいたい。

最終的に、今のイラン政権は、イラン革命以来の政権であり、その指導者ホメイニ師は、全世界をイスラムの世界にすると言っていた。

その目標にむけて、まず中東を支配するにあたり、最も邪魔になるのがイスラエルである。しかし、イスラエルを抹殺したあと、イランは、必ずアメリカにその牙を向けることになる。だからイランの群衆は、「イスラエルは死を」と叫び、続いて「アメリカに死を」と叫ぶと警告を発した。

このように述べて、アメリカとイスラエルは、同じ敵を持つ友として、協力しなければならないとまとめた。

これまで、友として協力してくれたバイデン大統領に感謝を述べ、またトランプ大統領については、首都をエルサレムだとして米大使館をエルサレムに移動したり、ゴラン高原のイスラエルの主権を認めたことなどにも言及し、感謝を述べた。

www.timesofisrael.com/were-protecting-you-full-text-of-netanyahus-address-to-congress/

時期的に意味ある?:8月1日にアメリカがロシアと人質交換

なぜ今というか、関係ないだろうとは思いつつ・・・アメリカは、1日、ロシアと受刑者交換を実施した。ロシアがアメリカに帰したのは、アメリカ人汽車や、元海兵隊などアメリカ人3人。ドイツ人5人、ロシア人7人の計16人。引き換えに、ロシア情報機関関係者など8人であった。

交換はトルコで行われた。この交換に至るまでには、何ヶ月もかかっていたとのこと。中東での戦闘が世界にまで拡大する前にアメリカとロシアが、対話していたことも記憶してもいいだろう。

石のひとりごと

アメリカ軍が、大規模な海軍をペルシャ湾に向かわせているという。昨日の記事にあるように、イランは、まだ核兵器を使うところまでは至っていないので、アメリカも今なら、気兼ねなくイランを攻撃することは可能だとみられている。(無論間違いはありうる)

総じて、イランとヒズボラ、ハマス、フーシ派にとって、今はまだイスラエル、アメリカと対立するのは得策ではないというのが現状だとみられている。(無論間違いはありうる)

この理解の中で、こうしたアメリカの大胆な動きが、アメリカが本気で戦闘に参加する可能性があるとのメッセージとなり、イランのブレーキになればよいがと思う。

先週のアメリカ議会でのネタニヤフ首相の演説では、人質解放のことがほとんど述べられていなかったことから、人質家族はじめ、イスラエル国内からは、かなり論議、批判となっていた。

しかし、この数日後に、ベイルートと、テヘランでの暗殺が発生し、イランとの対立が実際に、アメリカにまで影響し、両国が協力せざるを得ない状況になっている。アメリカ議会での演説で、ネタニヤフ首相が、イランに重点を置いて、協力を訴えておいたのは、計算の上だったのかもしれない。

ネタニヤフ首相は、今国内から退陣を求められるほどに、支持率が下がっているのではあるが、政治家としての闇と策略はかなり深いので、油断ならない人だと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。