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ハマスNo2がヒズボラ拠点のレバノンで暗殺
2日夜、ハマスの海外在住指導者の一人で、ハマスの副長官と目されるサレハ・アル・アロウリ(57)が、レバノンの首都ベイルートで、イスラエルのドローンによる攻撃で死亡したと、レバノン国営メディアが伝えた。イスラエルは、攻撃についてはノーコメント。
現場は、ベイルート南部の通り、3階建てのアパートにあるハマスの事務所で、アロウリと共にいた6人のハマス高官も共に死亡していた。
その中には、ハマス幹部で、イスラエルへのロケット弾発射の責任者のサミール・フェンディ、西岸地区でのテロ活動を国外から指導していたアル・アクラが含まれていた。6人はアロウリの部下のようなものである。
ハマス幹部の多くはガザではなく、海外に住んでいる。ネタニヤフ首相は、ガザでハマスの殲滅の戦闘が始まった後、昨年11月22日、海外にいるハマス幹部たちについても、どこにいようが標的にせよと諜報機関モサドに指示したと公に宣言していた。
これに対し、カタールのドーハに在住するハマストップのイシュマエル・ハニエは、「それは殉教者になることを意味する。我々は必ず勝つことになる。」と言っていた。ヒズボラのナスララ党首も必ず報復すると言っていた。
こうした中、レバノンにいたアロウリが暗殺されたということである。ハマス、ヒズボラ、イランも必ず報復すると言っている。
イスラエル政府のレゲブ報道官は、イスラエルの責任には言及せず、「この攻撃は、レバノンに対してではなく、ヒズボラに対する攻撃でもない。ハマスへの攻撃だ。」と強調。イスラエル軍のハガリ報道官は、イスラエルは、ハマスとの戦いに集中していると述べた。
アロウリが死亡した後、レバノンからの攻撃が4回発生。イスラエル兵2人が負傷したが、その後、北部国境において、大きな動きは出ていない。
イスラエルは、レバノンからの長距離ロケット弾のよる攻撃も予想して準備するなど、最大規模の防衛体制に入っている。
*サレハ・アル・アロウリ:シャリートさんとの交換で釈放されてハマス副長官に
アロウリは、ハマスの外交官のような動きをしていたことから、これまでからもメディアに時々取り上げられており、世界にもよく知られた人物である。
アロウリは、1966年、西岸地区で生まれ、1987年に第一次インティファーダが発生した時に設立されたハマスに加わった。
その後、アラファト議長率いるファタハがイスラエルと結んだオスロ合意(イスラエルの存在を認める代わりにパレスチナ国家を立ち上げる合意)に、ハマスは反対する立場を貫いて、テロ活動を継続。アロウリは、1992年にイスラエルの刑務所に投獄された。
シンワルと同様、それから18年間、イスラエルの刑務所で過ごし、2010年に、ハマスに人質とされたイスラエル兵シャリートさんとの引き換えとなったパレスチナ人テロリスト1000人以上の中の1人として釈放された。
その後、シリア、トルコを経て2015年からトルコに在住。
その後、カタールとレバノンに在住し、イランを含むさまざまな国の指導者に会うなど軍事だけでなく政治部門も担うようになった。
最後は、ベイルートのハマス事務所で西岸地区やガザからのテロを指揮していた。アメリカは、アロウリをテロリストとして指名手配し、情報提供者には500万ドルを提供するとしていた。
こうした背景を持ちながらも、今回のハマスとイスラエルの戦争においては、カタール、アメリカ、エジプト、イスラエルが進める人質交渉において、ハマス代表を務めていた。
最後は、イスラエル人人質40人とパレスチナ人120人の交換で交渉すすめていたが、アロウリが暗殺されたことを受けて、ハマスは、この交渉を全面的に保留にすると発表した。
ハマスとは比較にならないヒズボラの脅威
ハマスNo2が、ヒズボラの拠点であるレバノンの首都、ベイルートで殺害されたのだが、これにヒズボラがどのぐらい介入してくるかが注目される。
ヒズボラは、イスラエル全土を標的にする長距離ミサイルなど15万発をすでに準備済みである。
さらに、ヒズボラはレバノン南部に、ハマスより前から地下トンネル網を建設していることは、イスラエル軍の諜報部が提示している。ということは、その施設インフラは、ハマスより優れていることを意味する。
以下のサイトには、IDF諜報部に数十年勤務していたアルマ(情報リサーチ)研究所のタル・べエリ氏が、公に発表した地下トンネルシステムの詳細が暴露されている。
トンネルは、ベイルートを含むレバノン全土に位置するヒズボラの3拠点を結んでおり、その長さは、数百キロに及ぶとのこと。人だけでなく、武器などを移送する車両に移動も可能である。
また、レバノン南部、イスラエル国境周辺には、45キロに及ぶ攻撃用トンネル・ルートも存在している。べエリ氏は、これを「トンネルの国」と呼んでいる。
確かに、ヒズボラのナスララ党首は、延々とこの地下のどこかに潜んでいるのか、ほとんどその姿を表していない。べエリ氏によると、このトンネルのネットワークは、2006年以降、北朝鮮とイランの支援で設立されたとのこと。
またヒズボラは、地下にあるミサイル発射地も設営しているという。地下から発射されるので、発射地点を発見するのは難しいと思われる。
石のひとりごと
ヒズボラのトンネルの情報をみながらぞっとする思いがした。
ヒズボラは、先のシリア内戦で、相当な軍事訓練、武器の開発も通り抜けている。さらには、レバノンがイスラエル北部よりも土地が高いこともあり、もし侵入されたたら、ガザ周辺よりも危険なことになると言われている。
こうした状況にあるので、イスラエル軍は、ヒズボラについては、ガザのように民間人を考慮して地上軍を派遣するのではなく、空軍で一気にヒズボラを一掃する。もしそうなれば、レバノンという国がなくなるだろうとまで警告し続けている。
その状況はヒズボラもよく理解しているはずなので、実際イスラエルに手を出すのは、本当にその時になってからであろうと思われる。
しかし、これほとに準備は整っているので、その日はいつかは来るということである。その時、イランや北朝鮮がどう出てくるのか。
イスラエルをとりまく状況は、まさにインポッシブルのオンパレードである。