ノーベル賞受賞者含む経済学者たちがガザ人道危機のイスラエルへのリスクを警告 2025.8.16

Displaced Palestinians carry bags of humanitarian aid they received at a distribution center run by the US and Israeli-backed Gaza Humanitarian Foundation (GHF) in the central Gaza Strip on August 4, 2025. (AFP)

ガザ人道状況:5月から少なくとも1760人がイスラエルに射殺されたと国連

ガザでの戦争が始まってから、2年近くになる。支援物資配布のトラブルから、ガザ市民多数が死亡し、ガザ市民が飢餓状態に陥っているというイスラエル非難は、収まる気配がない。

ハマス関連によると、8月15日(金)、少なくとも23人がイスラエル軍の銃撃で死亡したが、このうち12人は、GHF食糧配布センター付近での死亡だったと主張している。

国連は、8月15日(金)、5月27日にGHFでの配布が始まってから8月13日までの間に、物資関連の死者数は、少なくとも1760人と発表した。このうち、994人はGHF配布センター関連だと言っている。

8月1日の時点で国連は、物資関連の死者数は1373人と報告していたので、その後わずか2週間の間に、387人が死亡したと主張したことになる。

イスラエル軍は、せまりくる群衆に向かって威嚇射撃をすることがあると反論しているが、ガザ内部に国際メディアはまったく入っていないので、それを証明することはできない。正確な死者数も反論できないのである。

また、国連は、ガザにいる市民に十分な食糧を届けるには、毎日トラック600台がガザに入る必要があるという。しかし、国境でイスラエルが課している手続に時間がかかり過ぎており、中に入れないと言っている。

www.timesofisrael.com/in-fresh-offensive-on-gaza-city-outskirts-idf-says-dozens-of-terror-targets-destroyed/

ガザを出た医療ニーズのあるガザ市民について

イスラエルは、2023年10月7日以来、外国人、または外国籍を持つガザ市民が出て以降、ガザ国境を、基本全て閉鎖した。しかし、2024年6月から、ケレン・ショムロン検問所を通じて、医療的ケアが逼迫している人が、治療のためにガザから出ることを許可している。

COGATによると、それから2025年2月までに出た人は、約1500人。3月から7月には、月に500-600人が出て2500人がガザを出たとのこと。医療的ケアに逼迫している患者とその家族や、ケアする人々である。

Palestinian children and their families evacuated from Gaza for medical care arrive at Rome’s Ciampino military airport, Aug. 14, 2025. (AP/Gregorio Borgia)

出国先はエジプト、UAE、カタール、トルコの他、ヨルダン、アメリカ、フランスやヨーロッパ各国もガザから医療ケアが必要な人を受け入れている。

戦争前、ガザの患者の多くは、東エルサレムのパレスチナ人の病院、オーガスタ・ビクトリア病院に行っていた。治療が終わればガザに帰ることになる。

この病院は、ガザの患者のために病室の30%を準備したと言っている。

また西岸地区のナブルスとジェニンの病院も準備が整っていると言っているが、イスラエルはまだこの経路は許可していない。

WHOによると、2023年10月から2025年2月の間に、WHOに対し、1万5600件の医療避難の申し込みがあったという。そのうち、イスラエルが認めて、実際に移送が実現できたのは、5325人(34%)だったとのこと。微々たる数だとイスラエルを非難している。

しかし、いったんガザから出た人は、すべてを受け入れ国に依存することになり、ガザへは帰れなくなっている。いわば帰る国がない、ホームレス状態になっており、この点も問題になっている。

www.timesofisrael.com/hundreds-now-leave-gaza-for-medical-care-each-month-thousands-more-are-still-waiting/

欧米ノーベル経済学者たちがイスラエルに警告

Displaced Palestinians attempt to fill water tanks in the Mawasi area of Gaza on August 14, 2025. (AFP)

こうした状況が続く中、ノーベル賞受賞者10人含む、欧米の経済学者数十人(多くはユダヤ人)が、ネタニヤフ首相にガザに広範囲な飢餓を悪化させる政策を直ちに停止しなければ、イスラエルへの制裁、国としての信用格下げ、著名な科学者や技術者の漏出というリスクを呼び込むと警告する公開書簡をネタニヤフ首相に提出した。

Ynetによると、経済学者たちの書簡には、イスラエルが意図的にガザ市民を飢餓に陥れているとか、ジェノサイドを働いているといった非難は全く含まれていない。

むしろ、人道状況の悪化は、ハマスに責任があると表明しているという。しかし、それでも、イスラエルのガザへの食糧不足の責任がなくなるわけではないと指摘し、真摯に警告するという姿勢である。

書簡には、具体的な対策として次の4点を挙げている。①ガザへの食糧と医薬品の搬入を完全に回復させること、②ガザ市民のための人道都市計画を公に否定すること、③人権と国際法に対するイスラエルのコミットを表明すること、④停戦達成、ガザ人道状況改善と人質の解放、敵意の終了。

これに署名した学者たちは、MIT、コロンビア大学、ハーバード大学所属の学者たちである。

www.ynetnews.com/business/article/hyt1sftolx

石のひとりごと

ガザの人々が直面している問題は、これまでに世界が直面したことがないようなもので、問題の複雑さを思わされる。

こうした中、ユダヤ人を含む経済学者たちが対策案を出しているのだが、その対案を読むと、この人たちは、イスラエルを理解しているように言ってはいるが、本当はわかってないのではないかと思わされた。サタンの狡猾な誘い込みの感じもする。

署名した学者たちは、反ユダヤ主義で問題となった有名大学所属でもある。

世界の中で、イスラエルの孤立が深まっていることは間違いないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。