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まったく協力しない野党
ベネット・ラピード政権が就任してから、約1ヶ月となった。すぐに崩壊するとも思われたが、意外にも持ち堪えているという表現で報じられている。しかし、国内での行政は、なかなかの難しさである。
国会120議席のうち、59議席は野党であり、その筆頭であるリクード(ネタニヤフ前首相)は、国会で最大30議席で、ユダヤ教超正統派はじめ、多くの右派政党などのベテランが壁となって立ちはだかる。
特に大きな問題は、様々なことを決めるための経済、保険、社会保障など、様々な分野別の国会委員会を立ち上げることである。特に、予算を決める委員会を早急にたちあげなければならない。
これらの委員会は、国会の議席数に応じて委員の配分を決めなければならないのだが、その交渉を野党が拒否していたのであった。
国会委員会とは、政府が出す法案をそれぞれの分野で検討し、必要な修正案を政府に提示する委員会である。
国会委員会を通過したものが、法案として国会で議論されることになるので、委員会での議決が、その後の国会での決議に大きく影響することになるという重要なものである。
言い換えれば、この委員会が立ち上がらないかぎり、予算を含め、正式な法整備や法改正はできないということである。新政権の新しい動きが始められないということである。
このように与野党間の交渉が行われないまま、国会では、12日、臨時調整委員会を開いて国会委員会に関する決議が行われた。野党60人は全員が欠席した。
結局は、与党だけで賛成17、反対13で可決。11の国会委員会を発足させることとなった。このため、野党が代表を務めるのは3委員会のみというアンバランスな形である。
野党は、党員をそれらの委員会に出席させないといっているとのこと。
www.timesofisrael.com/securing-some-stability-knesset-okays-11-permanent-committees/
ベネット首相は、野党に対し、「あなたがたは単なる意地悪ではない。連立政権を潰すために国全部を崩壊させるアナーキスト(無政府主義者)だ。」と非難した。
左派メレツ党のホロビッツ保健相は、「我々は長年野党だった。しかし、政権を不法扱いしたり、委員会の形成を妨害したこともない。今は、政府を仕事に着手させるべきだ。」と語った。
*与党内からの問題も:あやうく回避
今週、野党からだけでなく、与党内からも爆弾が落とされていた。この委員会設立に関する国会を前にした11日、与党に合意するはずのラアム党が、政府がアラブ系住民に対して約束したことをなかなか実行しないとして、国会で政府に合意するという約束を保留にすると発表したのである。
これではまったく過半数にならない。ベネット政権は、この直後に、南部ベトウィン地域に関する措置を開始。ラアム党は、とりあえずは納得したといった経過もあった。
予算通過が鍵:期限は11月4日と時間がない
国会委員会がとりあえず形成されたことを受けて、新政権は、2018年以来、保留となっている予算案を叩き出さなければならない。しかし、国会は、8月6日に夏季休暇に入り、次期国会開催は10月初頭となっている。
国会議長は、委員会が、夏季休暇中に会議を行うことを認めているが、9月は、ユダヤ教の例祭が目白押しなので、現実的には、9月はほとんど委員会を招集することはできない。
このため、新しい予算案は8月初頭に内閣の提出され、可決された場合、国会での初回の決議に出される。可決された場合、その後各委員会で、その予算案が協議される。
その後、国会は夏季休暇に入ってしまうので、2回目と3回目の決議は、次期国会が再開されてからになる。最終的に可決となるためには国会で3回可決されなければならない。その期限は11月4日である。
もしこの期限までに、予算案が通過しなかった場合は、この政府はまた解散、総選挙ということになる。
www.timesofisrael.com/in-bid-to-topple-government-netanyahu-seeks-a-dysfunctional-knesset/
ベネット首相とネタニヤフ前首相が国会で炸裂
12日、国会での討論が行われると、ベネット首相とネタニヤフ前首相も登壇したが、それぞれが、はげしい非難のやりとりとなった。ベネット首相は、ネタニヤフ前首相を、「ネタニヤフ議員」と繰り返して述べ、特に、イラン問題について、言うばかりでほとんど何もしなかったと非難した。
一方、ネタニヤフ前首相は、ベネット首相の名前に首相をつけることなく、「今の政権は、コロナ感染増加を無視しており、前政権が無くした検査場や、グリーンパスを復活させ、後退させている。」などと非難した。
www.timesofisrael.com/in-bid-to-topple-government-netanyahu-seeks-a-dysfunctional-knesset/
石のひとりごと
ベネット政権。今まで継続しただけでも奇跡と言えるだろう。しかし、これまでの動きを見ていると、やばいところで、すりぬけているので、主がなんとかささえてくださるのではないかとも感じる。それこそ、直感にしかすぎないが。。
ともかくも何がイスラエルにとってよいことなのかという焦点から、ベネット首相とラピード外相が、ずれていかないようにと祈る。