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エルドアン大統領・プーチン大統領会談
シリア内戦の最後の砦イドリブ地方。トルコが支援する反政府勢力と、ロシアとイランが支援するシリア軍の激しい戦いが続いていた。ここ数週間、特に戦いは激化し、シリア軍兵士がトルコのドローンで19人が死亡した他、戦闘機も数機撃墜された。一方で、トルコ軍も兵士も60人失った。
5日、トルコのエルドアン大統領は、モスクワでプーチン大統領と会談。両国は一応の停戦合意に至った。現地では一応の平穏が戻っているが、シリアのアサド大統領は、イドリブ地方を含め、シリア全土を支配下に置くまで諦めることはない。トルコとロシアの停戦も今に始まったことではなく、いつまでもつか、というところである。
www.bbc.com/news/world-middle-east-51763926
悲惨なのは、戦火の下で行き場をなくし、トルコとの国境で立ち往生している難民たちである。一時、難民たちがギリシャへ向かったちか、EUとの国境へ向かったなどと伝えられたが、その後、難民に関する報道はない。
最近のイドリブ地方での動きは、シリア内戦そのものが、大国の衝突の場に移行し始めているしるしだとの捉え方も出始めている。
恐怖を乗り切るための笑い;イドリブのシリア難民の父娘>
イドリブ在住のシリア難民の父親が、続く爆撃の中で、3歳の娘が怖がることがないよう、「爆撃音が聞こえたら思いっきり笑え」と教え、その子が、本物の爆撃音とともに大笑いしている様子がSNSで話題になった。
イドリブ地方の戦闘が激しくなったため、この家族のことが懸念されてたが、家族はトルコ軍によって保護され、無事、国境を越えて、トルコへ入ったとのことであった。
www.youtube.com/watch?v=rhJ25INUQYE
www.bbc.com/news/world-middle-east-51729305
世界は今、新型コロナで振り回されている。今、このウイルスが、医療施設がまったくないシリア難民の間に広がっていくことが懸念されている。しかし、実際のところ、シリア難民にとっては、検査しなければわからないようなウイルス感染などかまっている暇はないかもしれない。
彼らはそれ以上のはるかに恐ろしい経験を今も通っているからである。
石のひとりごと:紛争の下にいる普通の人々〜”ママと一緒にくらしたい”NHK放送より”
www.nhk.or.jp/docudocu/program/4471/1418069/index.html
今日、最初少し見落としたが、NHKのドキュメンタリー”ママと一緒にくらしたい”を見た。ずっと涙が止まらなかった。
ドキュメンタリーは、ガザで生まれた少年モハンマド(ムヒ)君が難病のため、イスラエルのテル・ハショメールの病院に来て、治療を受けながら、病院で成長していく(5−7歳)記録である。ムヒ君は、手足を切断し、両手両足ともに義足をつけていた。
ガザからこの病院までは、おそらく車で1時間と、かからないだろう。しかし、紛争が続いているので、まだ若い父親はイスラエルに入ることはできないし、母親にもまれにしか入国許可が出ない。年老いた祖父だけが、ムヒ君とともにいることを許されていた。
長いイスラエルでの生活で、ムヒ君はヘブル語で、「バルー・ハター・アドナイ・・・」とユダヤの祈りが言えるほどに流暢なヘブル語を使っていた。病院のユダヤ人の主治医や、友達ともすっかり馴染んでいる。
母親は、ムヒ君はもはやイスラエルに入る方がいいと考えている。しかし、そうなると、ムヒ君の祖父(自分の父)がいつまで元気で、ムヒ君とともいられるのかを心配していた。祖父なしにムヒ君は、一人では生きていけないからである。いくらイスラエルに馴染んでも、ガザのパレスチナ人だからである。
母親がガザへ戻ってしまうと、また長い間、母に会えないことを知っているムヒ君は、祖父に抱きついて、ただただ泣いていた。
パレスチナ社会の家族たちは、息子たちが、イスラエルと戦って死ぬことを誇りにすると言われている。しかし、このガザにいる母親がムヒ君を思う様子や、イスラエルという全く違う文化、価値観の中で、祖父だけがそばにいて、なんとか孫を守り、育てている様子は、世界のどこにでもいるごく普通の家族であった。
ドキュメンタリーは、ムヒ君が、イスラエルの小学校へ入学するところで終わっていた。イスラエルでの生活が長すぎるので、ムヒ君はガザへは戻れないだろう。彼の想像を超える内面の戦いはこれから始まっていくことになる・・・。ドキュメンタリーはそれを思わせる形で終わっていた。
どうにも変えられない紛争という、不条理きわまりない状況の下にも普通の家族たちがいる。上記のシリアの父娘からも、このガザの家族からも伝わってくることは、同じだった。
彼らのために、なにもできないのではあるが、そういう人たちがこの地球上にはいるということを知っておくことも、また私たちの生き抜くための助けになるのではないだろうか。日本という社会しか知らない子供達に、知ってほしいと思った。